小説『大長編ドラえもん のび太の宇宙大決戦!!【R-15】【完結】』
作者:はならむ()

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ラクリーマはオペレーションセンターに到着し、すぐに状況を確認する。

「どうした!?」

「敵です。ワープホールから抜け出した瞬間、攻撃されました。
……どうやら、ワープを感知して待ち伏せしていたようです!」


モニターには、エクセレクターの前方軌道上から右舷方向にかけて、数千キロ……いや、数万キロ以上ある宙域に、まるでアリの大行列のように、おびただしいほどの赤く蠢く物体が配置されているのが確認できた。


「敵はエクセレクター直線上から右舷方向かけて距離80000!!

データにないアンノウン。
……どうやら巨大なバクテリア生命体群のようです。
中央に存在する本体と思われるポイントから多大なエネルギー反応確認。
質量は……ランクA以上!?」

「……敵さんもなかなかのモンを持ってんな。被害状況は?」

「艦首及び、前右舷部、底に奴らが数千匹へばりついています!!」

「……さっきの衝撃もこいつらがぶつかってきたせいか……。てことは、奴らはエクセレクターの装甲を喰い破る気だな」

ラクリーマはモニターを見ると、全長20〜50メートルはある、蛭とは似て非なる異形な姿をした赤く身が軟体そうな生物どもがその場所にざわざわ蠢いている。

どうやら持ち前の牙、体内で形成される強力な溶解液を駆使して、艦の頑丈な装甲を破壊しているようだ。

「アンノウン、徐々に艦の甲板を破壊しつつあります!!」

「光子ミサイル、全砲門発射用意」


エクセレクターの両舷、下方に搭載されている砲門を一気に展開。


(カ ッ ッ ッ ! !)

計60発の青白く眩い光を放つ、直径1km以上あろう巨大なミサイル…いや、光弾が一斉に発射され、へばりついていた生物体も巻き添えを食らい消滅。

光弾は遥か先にいるアンノウンの大群へ伸びるように行き、

(ボボボ………っ!)

着弾。光弾はまるで球体のように膨張し、それが広範囲を包むように広がった。その生物達と共に。
「……一気に反応が消滅しましたが、数が多すぎてあまり効果がありません!
しかもまだ装甲にへばりついている反応も多数……ああっ!」

「どうした!?」

オペレーター達はモニターとセンサーの反応に驚きふためいている。

「消えたはずの反応がさらに、本体を中心に数万単位で増加しました!」

「なんだと?じゃああの本体が……産み出しているということか!?」

「間違いありません」

「やっぱ光子ミサイルだけじゃ無理か。対艦レーザーは……前方しか狙えねえし範囲も小さい。
こうなったら、リバエス砲発射用意!!直接本体に撃ち込んでやる!」

「了解、NPエネルギーを第一反応炉から主砲内増幅炉に送入。収束開始します!!」

エクセレクターの特徴的である前部の女性の顔が一気に真っ二つに割れて開門。
その中から一体口径何十Kmあるのかと思うほどの、長方形状の超巨大な砲身がゆっくりと姿を現した。

「セーフティ解除。出力は……」

「最大出力だ。奴らに目にものを見せてやる!」


ラクリーマはとっさに司令塔に移動し、中央部に行くと、淡い青色の光を放つレンズが垂直に出現していた。

そのレンズに手をおいて、巨大な3Dモニターを確認する。

「ターゲットロック。目標、アンノウンの本体及び、リバエス砲射線上の大群!」

モニターには、正面から行列のようにこちらに向かってきている。
あと20キロほどでエクセレクターに到着しそうだ。

「リーダー、アンノウンの大群がこちらに向かってきています!!」

「まかせろ、本体ごと消し飛ばしてやる!」


砲門内にはまるで虹色のような鮮やかな光が収束し、いまにも暴発しそうだ。



「出力、70、80、90、100%」
ラクリーマは全力でレンズを垂直に下へ押した。

「リバエス砲、行くぜ!!」









“リバエス砲、発射中止します”

(だああああああ――――っ!!)


全員がその場でずっこける……。
シリアスな雰囲気が一気に崩壊してしまった。

「誰だぁ、ミスった奴はぁ!?」

「へへっ、すんません。手を滑らせて中止ボタン押しちゃいました……。」


「バカヤロー、こんな時にボケかましてんじゃねえ!!
お前、あとで俺と組手な!」


「ええっ!?」


「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう!!」







気を取り直して。

「出力、100%」

「リバエス砲、発射ぁ!!」


そして、


(ド ギ ャ ア ア ァ ッ ッ オ オ ッ ! !)


砲門から一直線状の微粒子の嵐が、拡散するかの如く広範囲の宙域を包み、襲う。

それは数光年先からでも肉眼でも捉えられるほど。例えるなら地球から見る流星のよう――。

「目標到達まで、あと数十秒――」


射線上のアンノウンもその粒子の前には跡形もなく消滅、このままいけば、敵の本体に直撃だ。






しかし、





「リーダー、本体の前方にまた破格の数の反応が出現。
十万はゆうに越えます!!」

「なにぃ!?」



モニターには、まるでサザエのような巻き貝で全長、数百Kmを誇る本体から、一秒間に何千、何万という数の『子』が吐き出され、周辺に集まっていく。
まるで城を防護する砦壁のように。


(………………)



直撃した。
確かに一瞬で多大の反応は消滅したが、壁の厚さの方が勝ち、本体の直撃にはならなかった。


「主砲、残念ながら本体には届きませんでした」

「あいつら……とんだ食わせモノだ。惑星の半分以上を持っていっちまうリバエス砲が効かねえなんて。

おもしれぇ……っ」


「リーダー、何笑ってるんスか!」


レクシーの恋人ジュネが、通信を通して彼にこう伝えた。


「あと数分後に、へばりついている大量のアンノウンが艦内へ侵入します。

どうします?
戦闘員達は『スレイヴ』、『ツェディック』に搭乗、待機させていますが、出撃させて駆逐させますニャ?」


「……無理だな。あいつらは最低20m以上はある。約半分程度しかない大きさの二機では間違いなく捕食されてしまう。
といっても、このままでは――」



「――副司令官?」

そんな中、ユノンも先ほど到着し、司令塔へ向かう。

こんな危機的状況にも関わらず、全くと平然な態度をしている。


「よう。お前、来てくれて助かったぜ!
困ったことあんだけどな――」


「…………」


しかしユノンはラクリーマを全く見ようとせず、モニターを確認する。
いつも同じ態度だが、明らかに様子がおかしい。

「――お前、まさか風呂場の件で怒ってる?」


「…………」


しかし、彼女は全く無反応だ。ラクリーマはそんな彼女を見て、ムスッとなった。

「けっ、そうですかぁ?総司令の問いかけにも無反応ですかぁ?
勝手にしやがれ!!」

そうやって私情を持ち込まれるほどの余裕はないのに何をやっているのか……。

ともかく、このままではエクセレクターは危険だ。



「……解決策は、直接、本体に攻撃する以外他ないわね……。
しかも近距離で……」


「…………近距離で本体に……っ」



彼女が発した言葉がラクリーマはある方法を思い浮かぶキーワードとなった。


「……そうか。あれを使えってことだな!!」



彼はレンズに手を置く。


「艦内にいる者につぐ。衝撃体勢をとれ。本艦はこれより――」


内容を聞いた艦内全員が、すぐさま衝撃に備え始める。

オペレーションセンターでは、各員がそれぞれ作戦に対応した行動を始めた。

「リーダー、残りの二人はどうするんですか?」

「本形態は俺が操縦する。第2形態はユノン、第3形態はジュネ、やってみるか?」


ジュネはメロメロとしたような態度をとった。


「ウフ♪リーダーのご指名とあらば、行きますニャァ♪」


「よっしゃあ。久々に大暴れしてやるか!!」


……そして三人はあのレンズの場所に集まる。
今度はラクリーマが使っていたレンズが3枚に増え、それぞれ表面に手を置いた。

「まずはジュネ、お前がへばりついてる奴と向かって来ている奴を全員蹴散らせ。

そのあとユノン、どうするか分かってるだろ?」


「………」

「ちっ……作戦確認までシカトかよ。まあいい、なら作戦開始だ!」


三人は息ピッタリにレンズを同時に押し込んだ。すると、三人の周りがNPエネルギーの素粒子の包まれていく――。








「――それぞれ、配置したか?行くぜ!」

「…………」

「いつでもいいですニャ♪」



三人はそれぞれ別の場所に移転する。

それぞれ共通しているのは、三人の周りに見えるのは、手前に各一人ずつのレンズのついた台……、操縦幹の役割を果たすデバイスがあるだけで、果てしない宇宙空間が広がり、周りにあのアンノウンの姿が視界の至るところに映っている。


ジュネはさっそくデバイスに手を置き、遊ぶかのようにウキウキした態度でこう叫んだ。


「エクセレクターチェンジ、タイプ3。行くわよぉ♪」




(ズ ズ ズ ズ ズ ッ !)



なんと言うことだろう。
エクセレクターの前部、中央部、後部が均等に切り下がれたように三頭分に分離を開始したのだった。
それと同時にくっついていたアンノウンも切り離しと同時に無理矢理剥がす。


瞬時に、各分離部の先がアニメーションさながらのモーフィングで別形態へ変形、
さらに後部が一番前に先行し、続いて先ほどの前部、中央部と直列に並び、そして!




(ーーーーーーーーー!!)



三機合体。くっついていたアンノウンの大半は、サンドイッチのように挟まれ、無惨に潰れまくる。

ホントに……常軌を逸脱したアクションである。

前部と後部がそせぞれ前後に折り畳み、前頭部に最初と打って変わって、今度は怒りに狂った顔をした男の顔を露呈し、変形と言う過程が終了する。


「ふふっ、ごめんあそばせ……っ」


その姿は例えるなら巨大な亀。どこから攻撃しても死角のない難攻不落な要塞を思い浮かべる。

ここまで至るまでにかかった時間は数分間。この全長を考えるとあり得ないほどの速さである。


「エクセレクター、全方位空間上のアンノウンをターゲットロック♪いくわよ〜〜♪」

艦の全装甲のありとあらゆる場所から砲門らしきを穴が一気に展開した。


「反撃開始ぃ♪」





( ド ワ オ )




全ての砲門からNPエネルギーの粒子レーザーを発射。
本艦を取り巻く広範囲の宙域を光線の嵐で埋め尽くした。



「うふ〜いい気分ニャァ♪虫けらを一掃するって!」


この一撃で周辺と向かってきていたアンノウンが一気に消滅した。


“よっしゃあ、次はユノン。お前だ!”



“…………”



ユノンはあいからわず平然としている。
レンズをぐっと掴み、ゆっくり目を閉じる。
ーーそして重い口を開いた。

「エクセレクター……タイプ2へと移行する。各員衝撃に備えよ」

先ほどと同じように分離、合体へ移行を開始。元形態の後部が最前に移動し、また直列に並んだ。

「…………」

合体。瞬間、真空状態である宇宙空間が震えている。それはエクセレクターに秘めている膨大なエネルギーが放散しているのである。

ーーそのエネルギー量は、惑星どころか太陽系を消し飛ばすほどのーー


前方に丸い砲門、両舷には空間をも切断しそうな巨大な羽翼を誇る怪鳥の姿だった。


「ーーこれより、アンノウン本体に突撃する。全エネルギーを 前方に収束ーー」


エクセレクターはついに前方へ発進す。その推進力は最初の形態と比べると格段に高かった。


「本体を倒せばもう子供は産み出せない。守っている子供ごと全て潰す……」


前方の砲門からエクセレクターを包むようにエネルギー状の青い幕を展開、さらに加速を増した。



一方、本体の子供は危険を察知し、一気に集まり、自分の周りを取り囲み始める。どうやらあの生物は攻撃本能だけでなく、母を守る『防衛本能』も兼ね備えているようだ。

子供達で構成された壁は、さらに厚みを増し、まさに鉄壁と化していた。


「アンノウン密集地帯に激突するまで、あと200……このまま突貫する」

両者激突まであとわずか!
言葉に表すなら、(対決!!最強の矛VS最強の盾)である。




そして、





(ド ガ ガ ガ ガ ガ ッ ! ! !)


ついに激突。
瞬間に子供達はエクセレクターの突撃により、粉々にされていく。それは土を掘り進むようにドリルのようだ。


あまりの強引さの前に、さすがのアンノウンも驚いたのか、さらに子は前に出すが、勢いに乗ったエクセレクターには歯が立たなかった。



“よっしゃ、ここからは俺の出番だ!!”


奥に潜んでいた本体の姿が表し、前方へ豪快に吹き飛ばす。

やっとお待ちかね、あの男の出番が回ってきた。

(エクセレクタァァァチェェェェンジっっ!!タイプ、ワァン!)


“アンノウンどころかその宙域全土を震撼させるその声(ボイス)はまさしく、ラクリーマ・ベイバルグのものだった!!”



(ガシュイイイッ!!)


もはや説明不要。
合体し、初期の形態へ移行、すぐさまリバエス砲を発射へーー。

「グワハハハッ、死ねぇぇっ!!」


直後に放たれた膨大な粒子の塊がついに本体と残りの子供を包み、分子レベルまで分解し始めた。段々姿、形が無くなっていく……。

【かけら一つ残さず、根絶やしにする。我々の邪魔をする者はどんな相手でも――】







「アンノウン……、完全に消滅しました」


“よっしゃあ!!”


ついに倒すに成功したアマリーリス。
艦内の者は全員歓喜した。


「ふう……やっと倒したな。ちょっとヤバかったな今回……っ」


“あたいはいけると思ってたよ。なぜなら、副司令とリーダーが一緒なら負ける気がしニャいからねぇ。

……にしても、リーダーの叫び声は惚れ惚れするねぇ♪”


「ありがとよ、ジュネ。
なあ、ユノン。よかったろ?」


“…………”


しかし、相変わらずユノンは無反応だった。
モニターを見ても、そっぽ向いている。

「けっ……、ホントに乗らねえ女だぜ……」


“ん?リーダー、大丈夫ですか?”

モニター越しを見ると、ラクリーマが苦しそうに胸を押さえている。


「ああっ…、叫びすぎてキツくなっただけだ。心配すんな」


“………………っ”


ラクリーマはそう言うが全員が心配そうに見ている。
ユノンはあいかわずな態度をしていた……。


一方、のび太としずかは……。



「「うへぇ〜〜、気持ちわるい〜〜っ」」


のび太はプラントルーム、しずかは自室で目を回しながら倒れていた。

あんなにガッタガタに艦内が動き回れば誰でもキツいのはわかっているのだが、分離、合体、変形すること自体、知らない二人に衝撃体勢など、できるワケがなかったのだった。

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