翌日の午前中、のび太は空き地に向かっていた。それはジャイアンとスネ夫に呼ばれたからだった。
「……はあっ…どうせ写真撮ってきたかどうか聞かれるんだろーなぁ…っ」
そうぶつぶつ言いながら歩いていると、道端の電柱の真下にふと目を通した。
「んっ?こんなところに花が……」
よく見ると、大部分がアスファルトに覆われている地面のそこに、一輪の花が咲いていた。
しかし連日に続く猛暑の影響で、しかもあまり人には目立たない場所に生えているためかろくに水分をとっていないのだろう、その花は萎え、今にも枯れてしまいそうだった。
「…………」
のび太はその花を少し眺めた後、何を思いたったのか二人がいる所とは反対の方向へ走っていった。
……数分後、のび太はまた同じ所に戻っていた。
すると右手に持っていた小さなスコップを使って、運よくアスファルトに侵されてなく素の土が剥き出しているあの花がある地面を掘り出した。
のび太は花を傷付けないように慎重に地面を削っていき、ついには無傷な状態で花を取り出した。
それをすぐさま自分の家の庭の片隅に持っていき、それを植えた。
水を上げると、花の葉から雫が一滴、二滴、地面から落ちる。
それを見たのび太はニコっと笑った。
「……早く元気になるといいね」
純粋なのかお人好しなのか、この一連の行動は彼の良い部分の性格を表したとも言えるだろう。
すると、
「おーいっ、のび太ぁ〜!!」
塀の外からジャイアンの声が聞こえる。
「そっそういえば二人に呼ばれてたんだっ!急がなきゃ!」
すぐに玄関に向かうとそこにスネ夫とジャイアン、しずかが待っていた。
「あれっ?しずかちゃんまでどうしたの?」
するとスネ夫が腰を低くした状態でのび太に近寄った。
「あのう……のび太っ、昨日は僕が悪かった、謝るよ。実は折入って頼みがあるんだ……」
「……?」
……………………………
「ええっ?どこでもドアで宇宙へ連れてけってっ!?」
ドラえもんは昨日ののび太が言ったのと同じ頼みごとをされて、すっかり呆れかえっていた。
「昨日のび太君に話した通り、どこでもドアは10光年の範囲でしか使えないのっ!!」
「じゃあ、その10光年先に連れていってよ。それならいいでしょ?
どっかの惑星に降り立ってみたいし。」
彼らの頼みこみにドラえもんはため息をついた。
「……10光年範囲にはそんな珍しい星なんかないけど……いいの?」
その言葉にコクッと頷くのび太達。ドラえもんはやれやれと言わんばかりにのっそり立ち上がった。
「……たくぅ」
……そう言うと全員は裏山へ向かった。
ドラえもん達は人口的に作られたと思われる森の広場に移動し、四次元ポケットから『どこでもドア』を取り出した。
そこはとりあえず何が起こっても大丈夫とは言えないが家で開けるよりは幾分安全だったからだ。
「いいっ?すぐ戻ってくるんだよ。何が起こるか分からないからね。
その前に…」
ドラえもんは四次元ポケットを探り、あるものを取り出した。
それはピストルのような形状をした秘密道具だった。
「『テキオー灯』、これをかけておかないと向こうは地球とはワケが違うからね」
ドラえもんはのび太達にテキオー灯の光を照らす。
この光によってどんな環境、状況下においても影響を一切受け付けないのが凄みである。その効能は24時間有効である。
「じゃあいこうかっ」
のび太は興奮しているのか、震える手でどこでもドアのドアノブを握り、グッと開いた。

「「「「「…………」」」」」
ドアの向こうは地球とは違う異様な景色だった。空は暗く、地面は鉄のような金属質に覆われ果てしなく広がる世界だった。
のび太達はドアの向こうに赴いてみる。
何もない。それだけの世界が地平線の如く拡がっているのみであった。
「こんなとこじゃ寂し過ぎて面白くなぁ〜い!」
地球に戻り、ドアを閉める。
「のび太じゃダメだ!俺にやらせろっ!!」
今度はジャイアンがのび太をはねのけて、ドアノブを握って開いた。
「「「「「!?」」」」」
そこはさっきよりはかなり明るくなったが、ドアの向こうから不気味な色をしたガスが充満し、こちらに流れこんでくる。
ジャイアンはすぐにドアを閉める。そのガスに有害性があると察知したからだ。テキオー灯を浴びた身体なら影響はないが、そんな所にいっていたら頭が狂いそうだ。
「ほらね?10光年内の惑星には何の面白みもないだろ?」
結果が見えていたドラえもんが諦めさせようと促すが、それが逆効果だった。
「僕にもやらせてよぉ!!」
「いいやっ!!僕だよ!」
「お前らには役不足だっ!!もう一度俺に!」
のび太ら男三人がドアの主導権について取り合いしていた。それを見たドラえもんはいっそう情けなく感じたことか、深くため息をついた。
「もう三人ともっ!!やめましょうよっ!」
見かねたしずかは三人に叱咤した。が、いっこうに治まる気配はなかった。
三人はドアノブをガチャガチャ回し、開けては閉め、開けては閉めを頻繁に繰り返した。
すると、ドアの枠から『バチバチっ!』という音と共にスパークのようなものがほどばしり始める。
「んああっ!!それ以上やるとドアが壊れる!!
三人ともやめろぉ!!」
ドラえもんは慌てて三人の所に駆け寄り止めようとするが三人はさらにヒートアップし、その拍子にドアを強引に引き開けた。
次の瞬間、