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【エクセレクター】
極悪宇宙人組織アマリーリスの根城である巨大宇宙船。
まるで女性の顔をした前船部で非常に美しいフォルムをしているが、その実態は非常に強力な兵器を搭載し、強力なエネルギーバリアで保護されている、云わば宇宙戦艦である。
全長は日本列島を覆う程で内部は一体どうなっているのか不思議と言いたくなる。
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「ううん……」
のび太はこの船内のとある区域の部屋に倒れていた。
目が覚めて起きあがると辺りを見回す。辺りは真っ暗で何も見えない。
「ここは……どこっ……?」
のび太は寝ぼけているのか全く状況を把握していない。
とりあえず立ち上がり、右も左も分からない暗闇の中で少しずつ前に足を出す。
突然、
「わっ!」
足に何かが突っかかり、転んでしまった。
「なんだいったい……」
さわさわと触ると何やら生暖かく柔らかい……?よく触ると布のような感触がする。
「何っ……これっ?」
しかし次の瞬間、
「がはっ!」
のび太は頬に平手打ちをかまされたような痛みと衝撃をくらい、顔が酷く歪んだ。
「もうっ!!エッチっ!!」
そこから声がする。それはのび太には見覚えがあるどころか、毎日聞いている女の子の声だった。
「その声は……しずかちゃんっ!?」
「えっ!?のび太さんっ!?」
声の主はしずかだった。どうやら二人共、運よく同じ場所に飛ばされたらしい。
二人は無事を祝ってエッチなのび太と手を繋いだ。
「ああっ…よかったっ!!
けどここは何処なんだ…?」
「そっそういえばドラちゃん、タケシさんにスネ夫さんは!?
あたしたち…どうなったのかしら…?」
二人はさっぱりワケが分からない。あの時、なぜあんなことが起こったのか、今何時でここは一体何処なのか?
二人は立ち上がり、のび太は手を前に出しながら歩き始めた。しずかはのび太に寄り添っている。
数メートル歩いた地点で突然、
前が急に輝きだし、扉と思われるシャッターが上に上がった。どうやらここが出入口のようだ。
「なんだここは……っ!?」
「…………」
そこから出た二人は驚愕した。どうやら通路のようだが今まで見たことのない形は金属質で形成された壁に覆われ、たったひとつのライトで広範囲を照らせるほどの非常に明るく過ぎる照明。
通路を見ると左右に別れていて、どちらも奥が見えない。
見る限り、何十メートル、数百メートル、いや何キロ程の果てしない距離がありそうだった。
「……とりあえず歩いてみようか……」
「ええっ」
二人は右側の通路を選び、恐る恐る歩いていった。
……………………………
一方、ドラえもん達3人は例の金属物体を調べていた。
「これはスゴいっ……地球の科学技術では到底造れない、言わば『オーバーテクノロジー』だっ!」
ドラえもんは驚きを隠せない声を張り上げる。これが一体どこからきたのかわからないが、分かったことは『地球の物ではない』ことだった。
「ドラえもんっ、こっちに来てっ!!」
スネ夫の声にドラえもんとジャイアンは彼の元に向かった。
「これって扉じゃないかな!?」
スネ夫が指す先には謎の金属が立ちはだかる……装甲らしきフォルムの側面部に四角のラインがあり、そこだけ出っ張っていた。
「……よし、開けてみよう!」
ドラえもんはそこに近づき、立ってみた。
……………動かない。壊れているのか、そもそも扉ではないのか……?
「こうなったら……っ、『通り抜けフープ』」
ドラえもんはポケットからフラフープのような物を取り出し、装甲に張り付ける。
すると装甲を通り抜けフープの中だけ金属がなくなり、大穴が出来上がった。
「僕が中に入るっ、二人は外で待っててっ!」
ドラえもんは穴の中に入っていった。
「…………」
内部は非常に広い。しかも地球では到底造れなさそうな装置や見たことのない金属で出来たオブジェがあちこちに配置されていた。
「んっ?奥に何かあるぞ」
地面に突き刺さっているため、内部の位置が上下になっているハズなのだがどんな技術でこうなっているのか内部は平面になってるような感覚だ。
ドラえもんは奥にあるドアらしきモノの前に立ち止まった。。
するとガシュッと音を立てて、それが上に向かって開いた。
「んああっ!?」
その奥には沢山の精密機械と装置、操縦幹が設置されており、操縦室と思われる。
しかし、その床で淡いクリアブルー色のミディアムヘアーの女性らしき人物と体毛がピンク色のもこもこした不思議な生物がぐったりと倒れていた。
……どうやら気絶しているらしい。
「たっ大変だっ!!早く救出しなきゃっ!!」
……………………………
その頃、のび太達は果てしなく長い通路をひたすら歩いていた。
しかし歩き疲れて二人は体力の限界に来ていた。
「いっ……いったいどこまで続いてるんだろうっ……」
「ちょっと休みましょ……」
二人はその場で立ち止まり座り込む。同時にため息をつき、額の汗を手で拭った。
「一体どこなんだろう?」
「そもそもここは地球なのかしら?見たかぎりどこかの基地か何かの中にいると思うんだけど……」
二人は正直、不安だらけだった。無理もない。
歩いても歩いても先が見えない通路、全くといっていいほど人のいる雰囲気が全くなく、ここは誰もいないのかと疑いたくなる。
しかしさっきのドアにしても照明にしても、明らかに無人とは思えず、もし人がいたとしてもそれが地球人なのか……いや、そもそも味方なのか敵なのか全く予想がつかなかった。
それでも人がいれば話せば分かってもらえるかもしれない。二人はそう考えていた。
「そろそろいこうか」
二人は立ち上がり、再び果てしない通路を歩き始める。
…………数分後…………
「んっ?」
先が見えない奥から何か緑色に光る物体が高速で近づいてくる。
二人は急に安心感を覚え、顔を向き合い頷いた。すぐにその光に向かって走りだすのび太達。
それと同時に光る物体も高速でのび太の方へ近づいていく。しかしそれが全ての始まりだった。
「何者だキサマらっ!!」
のび太達は目を疑った。宙に浮く円盤のような乗り物の上に立ち、まるで奇妙ともいえるペイントを施した赤色の全身タイツに身を包み、顔はまるでトカゲとも言える爬虫類のような鱗に覆われる顔をした男だった。しかし、言葉を流暢に扱う様を見ると非常に知性は高い。
そう……地球人ではなく、異星人だったのだ。
「ひいっ!!僕たちは決して怪しいものではぁ!」
「あわわわっ……」
のび太達は酷く動揺し慌てふためいている。
しかしこの行動がさらにこの男を逆撫でることとなる。
「侵入者だっ!覚悟しろっ!!」
男はぐっと睨み付けて所持していた拳銃らしきものをのび太達に向けた。
「ヤバいっ!しずかちゃん逃げよう!」
のび太達は即座に振り向いて走り出した。
男はトリガーを引くと銃口から赤色の光弾が発射し、のび太がいた場所の床に命中する。
火花が辺りに飛び散るとすぐに消えた。
内部に大音量がサイレンが鳴り響く。その中でのび太達は必死で逃げていた。
「うわあああっ!!ドラえも〜ん!!」
のび太は走りながらドラえもんの名を呼ぶが来てくれるワケもなく、サイレンの音にもみ消された。
エクセレクター内部にある司令室では。
“ラクリーマさん、艦内の第25格納庫通路付近で侵入者を発見しました。相手はヒューマノイドの子供二人、一人は男、一人は女です!!”
司令室の中央に設置してある3Dスクリーンに映る部下を見て、一人の男が不敵な笑みを浮かべた。
「そいつらを捕らえて中央オペレーションセンターに連れてこい。
どうやって入ったかは知らねえがヒューマノイドの子供二人がエクセレクターに侵入したとは大した奴らだ。
そいつらの顔を拝ませてもらうぜ!!」
男は立ち上がり、横にいた一人の女性を見つめた。
エメラルドグリーン色のロングヘアーで頭部には犬の耳のような突起物がある非常に美人の女性だった。
しかしその女性の瞳から放たれる光は非常に冷たい氷のようだった。
「ユノン、行くぜっ!」
「……」
女性は何も喋らず、男についていく。二人はそのまま司令室に出ていった。
一方、のび太達は走っていたが体力が持つはずもなくへとへとになっていた。特にのび太は……。
「もっ……もうらめっ……走れない……」
のび太はついにその場でへたりこんでしまう。しかししずかは疲れているが顔に出さず諦めまいとのび太を起こそうとする。
「のび太さん!!早くしないと私たち何されるかわからないわよっ!!」
「へええっ……」
しかし、そこまでが運のツキだった。
「お前らをリーダーの元へ連行する。連れてけっ」
ついに追い付かれてのび太達。沢山の男達が集まり二人を囲む。男達を見ると種族が違うのか様々なタイプの顔と皮膚をした男達。しかし共通して言えるのが、全員いかつい顔をした悪人顔そのものだった。
「いやあっ!離してぇ!」
「……」
二人は円盤に乗せられて連行される。
こいつらは一体何者なのか、二人の恐怖と不安は高まるばかりだった。