小説『大長編ドラえもん のび太の宇宙大決戦!!【R-15】【完結】』
作者:はならむ()

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ユノンは運ばれてすぐさま、彼女を心配する部下達が見守る中、サイサリスの元、即座に輸血、傷の治療が始められた。


失血死が心配されたが幸いにも、発見した時間が比較的早かったため、懸命な治療の末、なんとか一命をとりとめることに成功した。


その後、部下達を安心し、解散した。
しかし、そのメディカルルームには痛みがやっと収まり、駆けつけたラクリーマとサイサリス、そして心配して駆けつけてきたレクシーとのび太としずかが、静かに眠るユノンを見つめていた。

「ユノンさん……」

「…………っ」

「くそっ、ユノンに何があったんだ……。いきなり手首を切るなんて……そんなふざけたことを……」

一方、何か気づいたのか、サイサリスは彼女の左手首を見続けている。


「……」

「どうしたサイサリス?」

「ユノンちゃんはもしかして……。
ラクリーマ、最近彼女に異変が見られなかったか?」

「いや、特には……どうした?」

サイサリスは彼女の腕を持ち、皮膚を見えるように着替えさせた服の袖をめくり、全員に見えるように注目させた。

「これを見なよ」


その場にいる全員がユノンを腕を近づいて見ると……。


「なんだこの無数の傷は……?」

ラクリーマ達は目を疑った。それは無数の切り傷の痕が至る所に浮き出ていた。近づいてみるとよくわかる。ついさっき作った新しい傷とは違い、古い年季のはいった傷が圧倒的に多い。しかも、明らかに自分がつけたとしか言い様のない不自然な切り方だ。

「リストカットだよ」

「リストカット?なんだそれ……」


「知らねえのか?まあ確かにお前には無縁なものだな。まさかこんなことをしてるなんて……」


……手首自傷症候群(リストカットシンドローム)……。


文字通り、『手首を切ること』で、自傷行為の一つである。派生として腕を切ることを『アームカット』、脚を切ることを『レッグカット』とも言うことがある。

特に精神的に不安定な女性や物、場所、人などに不満や本音をぶつけにくい内向的な人などにその傾向が多い。動機については三種類あり、
一つ目は何かしら愛情に飢えていて、それをして、注目されて誰かに愛されたい、かまってほしいという欲求から。

二つ目は、それにより生きているという存在意義(アイデンティティー)を作るため、または快楽、安心感を持たせるため。

3つ目は現実を逃避する人格(解離した別人格)が作用していることから始まる行為などがある(リストカットした記憶がない、気づいたらできていたなどがある)。
それらの原因が、子供の時に親から愛情を受けずに成長した、虐待を受けた、トラウマになるような出来事があったなど、過去に受けた精神的な傷から来ることが多い。
ユノンの場合はどちらかと言えば、2つ目の動機に分類される。

……………………………………

サイサリスは『ハァ……』とため息を吐いた。


「……厄介だな。はっきり言ってユノンちゃんは心の病気だ。
ウイルスとか病原菌などから来る肉体的な病気なら、薬治療や栄養補給、安静にしてればほぼ絶対に完治するが、精神的な病気だと、下手したら一生治らねえかもしんねえぜ」


全員が絶句した。
リストカットは一般的に病気だと認知されないこともあるが、精神的な面から来る立派な病気だ。例え治ったとしても、また精神が不安定になれば再発する可能性が非常に高い。

この場合、これに限らず精神病系統には薬物治療、カウンセリング治療を施すのが一般的に効果的なのだが、結局は患者本人が乗り越えなければ意味がないのである。


「ちぃ!!ユノンとて悩みか何かあったんなら、なんで俺に打ち明けてくれなかったんだ!?

……だがそれ以上に俺が情けねえ!!
こいつがこんなになるまで気づかなかった俺が一番情けねえぜ!!」

「ラクリーマ……」

「リーダー……」

ラクリーマは責任を感じていた。ほぼ一緒に行動していながら彼女の心情を察知してやれなかったことを。
そして彼女のことが好きである彼からしたらなおさらである。

「お前のせいじゃねえよ。この子は元々、あたしらと違って意思創通が苦手だ。

それに羞恥心ってもんがあるだろ。

『リストカットしています』なんて、たとえあたしでも人前で言えねえよ」


「くっ、せめて原因がわかれば何らかの対処ができるのによ……っ」

「サイサリスさん……。ユノンさんを救う方法はないんですか?」

サイサリスは目を閉じて、数秒間、また目を開けて顔をラクリーマに向けた。


「こうなったら最終手段だ。アレを使おう」


「アレってなんだ……?」

「ちょっと待っててくれ。開発エリアからあるものを持ってくる」
サイサリスは立ち上がると、メディカルルームから去っていった。

……数分後、戻ってきた彼女の手に球体のような水色の機械が2つ、ひとつは野球ボールほどの大きさで、もうひとつはドッチボールほどの大きさを持っている。


「なんだこれは?」


「これは人の精神を映像として具現化する機械だ。
これで彼女の心の闇を引っ張り出せる」

「本当にできるのかそれ……?」


「ああ」


サイサリスはユノンにその野球ボールほどの機械を両手で持たせる。


「これからユノンちゃんの精神を読み取り、もう片方のこれからその内容を空間モニターで映写してくれる。その内容から適切な治療法を考えよう」

「お前、すげぇな……っ」


「へっ、作成にはホントに苦労したよ。まあ、こんなデバイスがあっても面白いと思ってな」

苦労したとはいえ、こんな超テクノロジーの産物を作り出すとは、サイサリス恐るべし……。


「……ラクリーマ、これを使う前に一つ忠告しておくぞ

これを使うとここにいる全員がユノンちゃんの全てを知ることになる。

……お前、その意味がわかるか?」

「……どういうことだ?」

「つまりな、彼女の人に見られたくない部分まで映像化されるんだぞ。

見ている間はユノンちゃん自身には影響はないが……あたしらはともかくお前、どんなに絶望するような内容でも彼女の全てを受け入れられるか?」

ラクリーマは何の迷いなく頷いた。

「ああっ!全てを受け入れる覚悟はとっくの間に出来てるぜ!大事な仲間だからな!」


「……ならいい。あとお前ら三人にも約束してほしい。どんな内容だろうと、決してユノンちゃんに失望したり、軽蔑するなよ。守れねえのなら今すぐここから出ていけ」


レクシー、のび太、しずかも状況を受けて止めて、約束すると言う意味で首を縦に降った。


「……よし。なら、読み込むぞ。

……あと、この事はあまりユノンちゃんに言わないほうがいいかもしんねえぜ。

ここからは彼女のプライバシーの領域だ。もし知られたりでもしたら……」


「…………」


――そして、読み取り終了の合図と思わせる『ピピピッ……』と小さくかわいい機械音が聞こえ、サイサリスはそのデバイスをユノンの手から取り上げた。

彼女は次に、もう一つのデバイスの頂点に触れると、一気に花の蕾が咲いたかのように動作、変形。
先ほどの読み込んだデバイスをその中に入れるとまた、閉じて丸型に戻った。


「よし、見るぞ!これで動機がわかる」


“…………”


全員に不安と緊張感が走る。
そして、サイサリスはデバイスの横にあるボタンを押した――。



(シュウウウ……)


デバイスの頭上に膨大な黄色の粒子が拡散し、しばらくすると何かが映り見えてきた。

――が、

「二人とも見るな!!」

すかさずレクシーがのび太としずかを体で覆い、映像を遮った。

ラクリーマとサイサリスも瞳を震わせながらその内容に唖然と見ていた。

そこに映し出された内容とは……。


……………………………………

(ガシャアアアッ!!)


そこはどこかのアパートである。その一室では、一人の女性と男が壮絶なケンカをしていた。

「〜〜〜〜〜〜〜っ!」

「〜〜〜〜〜〜〜っ!」


次第に家具や食器を投げ合い、、辺りは凄惨な状況でもはや殺し合いともいうべき域まで発展していた。

その隅っこの部屋で必死に耳を塞ぎながら耐え忍んでいる少女の姿があった。

小さい頃のユノンである。

何日も洗わずに着ているような汚れた服、痩せ細ったその身体を見るからに、まともな生活をしていないと思われる。

そして身体中の至る所の皮膚から見える異常なまでに生々しく、痛々しい傷やアザ、切傷、そして火傷……。彼女は誰かに暴力を受けているのがよく分かった。

……これらが日常茶飯事であった。ケンカをしていた一人の女性がユノンの母親である。


母親に男運がないらしく、いつも男に寄り添っては最終的に逃げられる、または喧嘩の末に暴力を振るわれるといったことが度々であった。
その度に酒に溺れ、悲しみや怒り、ストレスの捌け口に向けられたのが――。



(ママやめてぇぇっっ!!いたいよぉいたいよぉォーーっ!!!)


いつも聞こえてくるのはユノンの苦痛を伴う悲鳴であった。


「えぐっ……ひっ……」

「まだ泣くかこのぉ!!」


彼女が泣くたびに一発、一発と本気に近いビンタが飛び乾いた音が響き渡った、次第に彼女の柔らかい両頬には赤いアザができた――。


それでもワンワン泣くのを止まらないユノンに対し、

(ジュッ!)

「ギャアッッ!」

タバコの火をユノンの顔に押し付けた。いわゆる『根性焼き』である。
タバコの火はついていてると言うが実際は燃えているのである。
実際、そんなモノを押し付けられれば熱さによる相当な痛みと苦痛そのものである。

「ひく……ひっ……っ」

『泣いたらまた叩かれる、殴られる、酷いことをされる』、必死でこらえている彼女を突然、母親は優しく抱き抱えた。

「ユノンごめんね……。またあんたにこんな酷いことを……あたし最低だね……ううっ……」


震える声と鼻をすする音が母親から聴こえる。彼女は泣いていた。
ユノンは母親の服にギュッと握りしめ、また瞳に涙を浮かべ――。

「マ……マ……っ、なかないで………ママは……わるくないの……」

悪くないはずのユノンが謝ってしまった。
また暴力を振るわれるのを恐れているのもあるが、それ以上にこんな母親でもやはり『愛されたい、見捨てられたくない』と思う子供の心境なのであろう――。
しかし、その願いとは裏腹に、これがほぼ毎日繰り返されられるために、結局は負の連鎖は止まらないのであった――。

そして……この日。

「ユノン!!こっちおいで!!」

ある日、母親はユノンを呼び出す。
彼女の前には見知らぬ男性がいた。また、何処からか引っかけて来たのだろう。

「こんにちわ……」

「…………」

笑顔が似合い、柔らかな口調で喋る辺りは、見る限り優男のように思える。

しかし、ユノンは怯えたように身震いし、素早く部屋の奥へ隠れた。

「ご……ごめんね!!あの子人見知りなの!!」

「いいんだよ。まだあんなに小さいんだから……」

二人は笑い話になるが、ユノンからしてみれば男を連れてくる……恐怖そのものであった。

何故なら今までにも沢山の男性を連れ込んでいた。
そのあとのやりとりは、大体二人が酒を呑み、酔い始めて男が母親の身体をイヤらしく触り、そんな母親もまんざら嫌でもなく、寧ろ喜んでいる。その行き着く先は……。




「ああっんっ……あっあっ!!んいいっ!!いいよォっ!!もっとおま〇こ突いてェーーっ!!」


ユノンは寝室でこの場面を何度も目撃したことがあった。
二人とも裸になり男の大きくなった局部を母親は口で奥までくわえむしゃぶり、次に四つん這いになって高らかに喘いでいる。
男は彼女の後ろで気持ちよさそうに腰を前後に振っているのを……。

「〜〜〜〜っ!!」


今の母親の声を聞きたくないのか耳を押さえて目を瞑る。
まだ純粋で何も知らないユノンは何をしているのか分からなかったがこれだけは感じていた。

『得体の知れない嫌悪感と恥辱、吐き気に襲われる……』。

そして結局は、何かトラブルで大喧嘩、果てに苦痛が苦痛を呼ぶ虐待シナリオへ行き着くのであったから――。

――ついにこの後、彼女の不幸は始まった。


「長い緑色の髪……かわいいよ……」

(やめ……てぇ……っっ)


その連れ込んだ男に押し倒されて、その汚い手で身体中を触られ、弄ばれて、彼女の大事な所……そう、下半身の『秘部』にまで手が迫った時――。


「ぐっ……ゲェェェッ!!」



彼女は男が一瞬、口を押えてた手を放したと同時に、嘔吐物が吹き出し、男の手に付着した。


「うわあああっ、汚ねぇっっ!!吐きやがった!!」

男はすぐに立ち上がると、手を洗うために水道へ向かった。
その時、ご機嫌だった母親も帰宅し、異臭と男の慌てように目の色を変えた。


「どうしたの!?」


「おっ、お前んとこのクソガキが俺の手にゲロ吐きやがったんだよ!!」

「! !」

「せっかく、寂しそうだから遊んでやろうとしたのに……もうこんなとこいられるかぁ!」

「ああっ、ちょっと待ってよぉっっ!!」

男はドアを乱暴に吹き飛ばして出ていってしまった――。


「…………」

震えたまま立ちすくむ彼女は数秒後、怒りに満ちた顔である方向に見つめた。
無論、自分の娘である。


「…………ぶぇっ……きもちわるいよぉ……ママ……たすけてぇ……っ」


嘔吐物で上着と床を汚し、口を押さえて倒れてるユノンの姿が見えた。

涙を浮かべて、震える声で自分に助けを求めている。
が、


「ユノン……吐いちゃったの? なら……キレイにしないとねえっ!!」

母親は乱暴にユノンの首もとを掴むと引きずって行く。


……ついた場所はどうやら風呂場のようだ。しかし浴槽に張る水を見ると透明どころか酷く黒ずんでいて、ぬめりや髪の毛などのゴミや汚れが所々浮かび上がっていて清掃していないと思われる有り様だ。
――最後の入浴から一体、どれだけの日にちが立っているのだろうか。


そんな状態の浴槽に、なんと母親はユノンを裸にさせてその汚水に体を浸かせた――。


ヌルヌルする浴槽の底、冷たく臭いが酷い汚れた水の感触がユノンにさらなる不快感と嫌悪感が一気に襲った。


「うえっ……げぇっっ!!ゲホっ!ゲホっっ!」


その場にまた嘔吐してしまった。
しかし、母親はそれを見過ごすハズがなかった。

(ジャバァ!!)


“ゴボァ!!?”


彼女の頭を掴むと、母親は顔を水の中に押し込んだ。

ユノンの目、耳、鼻、口、顔の穴という穴全てに汚水が入っていく。

“息が出来ない、このままでは本当に死んでしまう”


「どお、キレイになった?
あたしに感謝しなさいよ!」


顔を引き揚げると、ユノンの顔は見る影もなく汚れて、鼻水や涙とも言える液、さっきの汚水が混じって顔から流れている。
また、窒息しかかり本当に苦しい表情をしていた。

「言わないの?ほら、“ありがとう、ママ”は?」

しかし、返ってきた返事は……。


「……くるしい……よ、もうやめて……ママ…し……しんじゃう……」

その言葉が母親の癪に触り、さらなる怒りを呼んだ。


「あんたホントにムカつくガキねぇ!!誰のせいでこうなったんだぁ!!」


ユノンを浴槽から出すと、床に押し倒し、そして!!


「あんたみたいな親不孝のガキなんかもういらない……。殺してやるわ!!」


「ぐ……ぇっ」


最悪の事態が起こった。母親が自分の娘の首を両手で締めたのであった。その腕と手に伝わる強さは完全に殺気を込めている。


(ころ……され……る………なんで……あたしが……わるい……から……?)

泡を吹き始め、窒息し意識のなくなりかけた時に、母親が放った一言……それは。




(あ ん た な ん か 産 ま な き ゃ よ か っ た ! !)


そして彼女の意識は闇の中へ沈んでいった――。



目覚めた時にはとある白い壁に包まれた部屋のベッドの上で寝ていた。ここは病院のようである。

彼女は奇跡的に生きていた。


どうやらあの後、運よく気づいた人が警察に通報してくれたみたいだ。

――母親は逮捕されて、事情聴取を受けているらしい。

しかし、『あの子のせいで人生を狂わされた』、『産みたくなかった』などと供述した末、もうユノンとは会いたくないと――。


それを聞かされたユノンの心にトドメを刺された。
ヒビの入り、脆かったガラスが一気に粉砕されて跡形もなく崩壊したように。

あんな人間でもたった一人の親であり、愛されたかった彼女にとってはもう親に捨てられたと気づいてしまった。
彼女は知ってしまったのだ。

――『孤独』になるということを……。

(もう……ひとりぼっちなんだ……ママにすてられたんだ……)

……そして彼女はその日から心を閉ざしてしまった。


退院後は施設へ入った。
虐待で出来た傷や痕はドグリス人の医療技術のおかけで綺麗さっぱりなくなり、前の生活と比べたら段違いに良くなったが、それだけでは彼女の心までも良くなることはない。

彼女の同年代の子どころか誰とも接しようとしなかった。
片隅でずっとうずくまっていて、その様子を見ていた人々や施設員の証言では『いつも今にも泣きそうなくらいに悲しい顔をしていた』、『接しようとするとひどく怯えて逃げていく』、『警戒心がとても強く、誰とも心を開こうとしない』など。

しかし、彼女も勇気を出して友達と接し、遊ぼうとしたことはあった。

だが、彼女は一人になることを拒み、仲良くなった子だけに執拗に付きまとうために次第にうざがられて結局相手が彼女から離れていく……。
その度に彼女の心をさらに傷つけることとなった。


(みんな……あたしがきらいなんだ……だからみんなあたしからはなれていくんだ……)


心がボロボロとなり、それからはもう彼女は誰とも自ら関わることをしなくなった。
そんな彼女も大人になるに連れて心情も複雑になりさまざまな葛藤に伴い、更なる闇も広がっていた。

その過程で生んだ行動の一つがそう、『リストカット』である。


“プッ……プツ……”


彼女はもはや自分を傷つけないと『存在意義』を生み出せないほどに心が病んでいた――。


“だれかおしえて……あたしはなんのためにうまれてきたの……?

……くるしい……くるしいよ……こうでもしないといまにもきえてしまいそうだよ……。
だれかぁ……たすけてよぉ……”

……………………………………

映像はここで終わっている。

“………………”


その悲惨な内容に誰も声を発することなど出来なかった。

「こりゃあひでえや……っ」


先に沈黙を破ったのはサイサリスであった。


「これじゃあ……心が病んでもおかしくねえな……っ」


「…………」


……ユノンが普段人と関わらない、関わろうとしないのは、子供の頃に受けた心の傷もあるが『本当は孤独を嫌い、誰かにかまってもらいたい、一緒にいたい心情を裏返した形』なのでは……。


あるいは、誰かと一緒にいても、突然捨てられてまた孤独になるのを恐れているのでは……。




“いなくならないで……”


彼女が酔っていたあの時に放った言葉と合わせると辻褄が合う。あれが彼女の本音だとすれば……。
ラクリーマは何かを決意したかのようにコクっとうなづいた。

「……ふふっ、めんどくせえ女だな、こいつは……」

“! ?”

突然、彼女を罵るような言い方をし出すラクリーマに全員が疑うような目をして彼に注目した。

「こうやって自分から閉じこもって……挙げ句の果てには自分自身を傷つけることしか生きる意味を見いだせなくて……俺ら戦闘員なんか生きるために嫌でもケガしてんのに……バカな女だ」


「……キサマぁ、わたしの忠告を忘れたのか!?
罵るなんてやめろって言ったハズだが……どおゆう了見だ!!」


「……」

しかし、その顔から反省するどころかむしろ当然な表情をしている。


「ひっ、ひどいよラクリーマ!!」

「そうよ、いくらなんでもユノンさんにあんまりよぉ!!」


のび太としずかもラクリーマに非難の声を浴びせた。

「ラクリーマ、今すぐここから出ていけ……今すぐだ!!
てめえみてぇな約束破りはもう――」


「だが!!」


突然、彼の大きい声がサイサリスの声を掻き消した。


「そんな女に恋をした俺は……こいつ以上のバカだ」


「おっ……お前……」


「言っただろ、とっくに受け入れる覚悟は出来てるって。

さっきの内容を見て、俺はもっとこいつのことが好きになった。
……決めたぜ。一生、こいつの重いもん背負う勢いで愛してやる!!」

怒りを露にしていたサイサリスや非難をしたのび太達は彼の決意にまた沈黙した。

だが、サイサリスは徐々に笑い始め……。

「ふふ……カッコつけやがって……。

だが……さすがはラクリーマだ、お前の男気を再認識したぜ!!」

「けっ。それでみんな、ちょっと二人っきりになりたい。出ていってくれないか?」

「……わかった。みんな、ここから出ていこう、あとはこいつに任せる」


彼女の言葉に従って、のび太達はメディカルルームから出ていった……。

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