小説『ハイスクールD×D改』
作者:ダーク・シリウス()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>




未来の家族との再会



空中都市のアグレアスで行うレーティングゲームの日になった。過去と未来の幽幻龍騎士団は

アグレアス・ドーム会場の横にある高層高級ホテルに移動していた。豪華絢爛な造り出天井に巨大な

シャンデリアが吊るされている。ゲームは夜で行われるようで過去と未来の幽幻龍騎士団はその時まで

待機部屋で待っていようと決めて歩を進めていた。


「・・・・・」


通路を進んでいる時だった。通路の向こうに2人が佇んでいた。その2人が過去と未来の幽幻龍騎士団が

現れると悠然とした態度で声を掛けてきた。


「久しぶりだな」


「・・・・・」


過去と未来の幽幻龍騎士団は数人の前に停まった。


「お前たちの行動は読めている。目的もだ・・・・・」


「・・・・・アザゼルおじさん、サーゼクスおじさん」


常闇と思わせる漆黒の6対12枚の翼を見せる男にアザゼルと真紅の髪の男性、サーゼクスはフードを深く

着込む大勢の存在を見て悲しそうな表情を浮かべた。


「・・・・・新たな仲間を増やしたようだね。まるで死んだキミの父親がしたように・・・・・」


「それで、何の用だ」


「ゲームをするのは構わない。だが、復讐なんて止めろ。復讐なんてしたってあいつらが喜ぶ訳が無い。

お前等はそれを知っている筈だ」


アザゼルとサーゼクスの目的、それは説得。クロノスたちを説得しようと試みる。


「何で今頃に成って行動を起こす。お前たちが行動を起こすと各勢力が黙っちゃいないのは

解っている筈だぞ」


「幽幻龍騎士団に、家族に手を出したらどうなるか思い知らせる為だ。それが2代目の幽幻龍騎士団の

行動を起こす理由だ」


「分かっている。お前達に危害を加えたらどうなるかお前の父親、兵藤一誠が生存していた頃にいた俺たちが

良く分かっている」


「それは昔の事だ。だが、俺たちの時代ではそんな事を忘れている奴が殆どだ。―――忘れているのなら

思い出してやる。分からないのなら分からせてやる。俺たち幽幻龍騎士団に恩を仇で返した勢力に

 絶望を、恐怖を・・・・・!」


仮面越しでクロノスはアザゼルを睨んだ。その瞳に揺ぎ無い決意と敵意、殺意を籠めて。

するとサーゼクスが「すまない」と言って頭を下げた。


「私たちは本当に飛んでもない事をした。それは謝っても許されない事だ。恩を仇で返したと言われても言い

返す事はできない。しかし、お願いだ。復讐なんて止めて欲しい・・・・・。復讐が復讐を呼んで連鎖する。

キミの父親はそんな事を望んでいない」


「綺麗事を言ってくれる。なら、どうしてあの時、俺たちの父親と母親を助けてくれなかったんだ。

アザゼルおじさんもそうだ。どうして助けてくれなかったんだ。―――おじさんたちが助けてくれたら

俺たちは悲しい思いをしなかった!父親と母親と離れ離れにはならなかったんだ!これも、これも、

全て・・・・・お前達の所為だぞ!」


「「・・・・・っ」」


「俺たちは新たな力を得た。巨大な力を持つ協力者も俺たちの考えに賛同してくれた。俺たちは進む。

例え、父さんの友人だったあんた等でも容赦はしない」


クロノスはそれだけ言って歩を進めた。クロノスに続き過去と未来の幽幻龍騎士団も続く。


「・・・・・ダメだった・・・・・な」


「・・・・・彼等を止める術はもう無いのか・・・・・」


自分に向ける敵意と殺意を籠めたクロノスの瞳が脳裏に焼き付いてしまった。アザゼルとサーゼクスは己の

行動に悔い、自分を許す事が出来なくなった瞬間だった。一方、歩を進めたクロノスたちに再びとある人物と

出会った。


「久しいのぅ・・・・・元気にしておったか?」


「お爺ちゃん・・・・・」


アースガルズの主神、オーディン。その人だった。


「ほっほっほ、ほれ、わしに顔を見せてはくれんかのう?」


「・・・・・」


クロノスは言う通りに仮面を外してオーディンに素顔を見せるとクロノスに近づき

皺だらけの手で頬を撫でる。


「あんな小さかった子供が見ない間に大きくなりおって・・・・・」


「ヒトは成長するもんだよ」


「うむ・・・・・そうじゃのう」


「・・・・・お爺ちゃんも俺たちを説得しに来たのか?」


「・・・・・そんな事はせん。止めても無駄だと分かっておるし説得をする気も起きないわぃ」


「そうか・・・・・」


「お主等の行動は間違っておる。じゃが、行動を起こすのなら最後まで貫くんじゃよ」


「うん、そのつもりだ」


「―――行くがいい、わしの孫たちよ」


杖を通路の先に指す。その行動に「ありがとう・・・・・」と呟きクロノスたちは歩を進める。しかし、

ローブを着込んだ2人組の幽幻龍騎士団がオーディンに近づく。


「なんじゃ?」


「・・・・・申し訳ございません、オーディンさま」


「・・・・・その声は・・・・・」


謝罪の声音を発する男にオーディンは気付く。謝罪した男は仮面だけ取り除き素顔を見せる。


「サーゼクス・・・・・?いや、さっきサーゼクスとアザゼルと会った。・・・・・お主は誰じゃ」


「私は過去から来たサーゼクス・ルシファーです。オーディンさま」


「なんじゃと・・・・・?」


「オーディンのおじさま、私もいるよ」


そう言って仮面を取って素顔を見せたセラフォルー。彼女の顔を見てオーディンの顔が驚愕の色を染めた。


「セラフォルー・・・・・サーゼクス・・・・・これはどう言う事じゃ、わしは幻を見ておるのか?」


「事実です。私とセラフォルーは過去から来た悪魔です」


「では、どうやって過去から来たのじゃ。それにお主等はなぜ孫の子供たちと行動をしておる」


「それは・・・・・今は言えません」


「でも、ゲームが始まったら分かるよ」


「・・・・・」


「こんな悲しい未来が存在してはならないの。私の大好きなイッセーくんが私たちの勢力に

殺されてしまうそんな未来はあってはならないの・・・・・」


「オーディンさま、私は誓います。過去に戻っても幽幻龍騎士団に危害を加えません」


「・・・・・その言葉に偽りはないのじゃな?」


「「はい」」


サーゼクスとセラフォルーは真剣な表情と眼差しでオーディンに誓った。その後、

2人は仮面を被り通路の先に進んだ。そんな2人の背中を見て呟く。


「・・・・・過去から来た・・・・・のう」


「オーディンさまでもダメでしたか・・・・・」


「俺たちでもダメならじじいもダメだなと薄々思っていたがな。・・・・・て、何で笑っているんだ?」


アザゼルの指摘にオーディンが頷いて口を開いた。その理由は・・・・・。


「なに、ちょいと面白いものを見たからのぅ」


「面白いものだと?」


「それは一体何なんですか?」


「ほっほっほ、それはゲームが始まるまで秘密じゃよ」


サーゼクスとアザゼルは顔を見合わせて首を傾げた。一体、オーディンは何が

面白いものを見たのか?と・・・・・。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「思いきり、警戒されているね」


「ああ、ご丁寧に部屋の前には数人の悪魔がいるし」


待機室に俺たちが入った瞬間、鍵を掛けられドアの向こうには悪魔がいる事に気づく。過去の幽幻龍騎士団は

フードを外すが仮面は取らないでいる。クロノスたちは仮面とフードを取り払って顔を曝け出した。


「俺たちの事を気づいている証拠だな」


「まあ、どうでもいいけどな。俺たちは此処で夜に成るまで待機している予定だったし」


創造の能力で部屋中に皆の分の椅子やソファーを発現して俺はソファーに座る。


「盗聴、盗撮の類の物は・・・・・」


と、首を部屋中に見渡すとドアの向こうから騒音が聞こえた。


「・・・・・何だ?」


「さあ・・・・・」


首を傾げてしばらく、騒音が止んだと思えば鍵を開ける音が聞こえて扉が開け放たれた。この部屋に

入ってきたのは数人の女性だった。俺はその数人の女性に見覚えがあった。いや、この待機室にいる

少女たちとそっくりな女性たちだった


「みんな・・・・・」


「・・・・・は、母上・・・・・?」


ソーナ・シトリー。


「会いに来たよ!」


「母さま・・・・・」


セラフォルー・レヴィアタン(シトリー)


「ようやく、ようやくですわ・・・・・」


「お母さま・・・・・」


レイヴェル・フェニックス。


「この時を今か今かと待っていたわ」


「お母さま・・・・・」


シーグヴァイラ・アガレス。この4人とそっくりな女性たち。いや、この時代の4人に違い無い。

俺とソーナの息子のフィーナ、セラフォルーと俺の娘のネリノ、レイヴェルと俺の息子のヴェルガ、

 俺とヴァイラの息子、ヴォルガルスがゆっくりとこの時代のソーナたちに近寄る。


「ようやく・・・・・ようやく母上と会えました・・・・・」


「本当に・・・・・本当に・・・・・!」


「ううう・・・・・っ!」


「お母さま!」


長い間、離れ離れになった親子がようやく再会した瞬間を俺たちは静観した。すると、

この時代のガイアが仮面を外して話し掛けた。


「久しぶりだな、お前たち」


「っ・・・・・!?ガイア!貴女はコキュートスに封印されていたのでは・・・・・!?」


「我だけではない、コキュートスに封印されていたオーフィスたちも全員もいるぞ」


「我もいる」


この時代のオーフィスも仮面を外して素顔を見せた。その衝撃の事実にこの時代の

シーグヴァイラ・アガレスに顔を向けると彼女も驚愕の色を染めていた。そっか、冥府の事は知らないのか。


「・・・・・では、アルビオンやファフニール、邪龍たちも・・・・・」


「言っただろう、全員いると」


「まさか、冥府に行って救出に行ったのですか!?」


ソーナが目を見開いて驚愕の声音を発した。まさか、息子たちが冥府に

行くなんて思いもしなかったんだろう。この時代のレイヴェルたちも驚きを隠さずにいた。

 クロノスは頷いて肯定の言葉を放った。


「その通りです、俺たちは冥府に行ってお母さんたちを救出に行ったんです」


「ちょっと待って、冥府にはオリュンポスの神がいる筈よ。その神相手にどうやって

ガイアたちを助けたと言うの?」


「俺たちの協力者とお母さんたちを助けたんだ。ハーデスは協力者に滅ぼされた」


クロノスは俺たちに顔を向けた。ハーデスが死んだと聞いてこの時代のソーナ達は空いた口が塞がらず

俺たちに視線を向けてきた。


「ハーデスさまが・・・・・死んだ?」


「フィーナ、協力者とは・・・・・」


「私たちと同じ志を持つ者たちです」


クスクスと笑みを浮かべる。そんなフィーナに怪訝な表情を浮かべるとヴェルガと抱擁していた

レイヴェルがこっちに来た。


「貴方方は一体どなたですか?いえ、私たちの子供たちに協力して下さって感謝しますわ。

ですが・・・・・」


お辞儀したレイヴェルが暗い顔をした。俺たちを心配しているんだろう。そんなレイヴェルに俺は頭を

撫でる。するといきなり頭を撫でられた事に彼女は驚き、怒り出した。


「ちょっ!いきなり何ですの!?いくら子供たちの協力者とは言え初対面の人が私の頭を撫でるなんて

失礼ではないですの!」


「お母さま、ある意味ですけど初対面じゃないよ」


「ヴェルガ、それはどう言う意味ですの」


苦笑を浮かべて自分の母親に向かって言うヴェルガ、そんな息子に理解が出来ないと言った表情を浮かべて

言葉を発した。


「そろそろ、顔を見せたらどうだ?」


すると、突然クロノスがそう言ってきた。「良いのかよ?」と視線に乗せて見ると頷かれた。俺は仮面を

掴んで顔から外し、フードを取った。それで俺の顔が目の前にいるレイヴェルの瞳に入った。


「・・・・・イッセー・・・・・さま・・・・・?」


「・・・・ちょっと違うな。俺は過去から来た兵藤一誠だ」


「・・・・・過去・・・・・?」


「だが、この時代の俺、兵藤一誠と変わりはないようだ」


もう一度、彼女の頭を撫でる。今度は驚かないし怒らなかった。寧ろ、瞳を濡らして俺の瞳を据えて来る。


「イッセーさま・・・・・」


―――ボロボロと涙を流し始めた。


「―――イッセーさまぁああああああああああああああああああああああっ!」


・・・・・一拍して声を張り上げ、俺に強い力で抱きついてきた。


「うああああああああああああああああああああああああああああああっ!」


「よしよし・・・・・」


「・・・・・イッセーくん」


「ソーナ・・・・・」


「例え・・・・・、例え・・・・・、過去のイッセーくんでもイッセーくんはイッセーくんですよね・・・・・?」


少しずつ俺に近づき、身体を震わせて涙ぐみ、涙を流すのを我慢して問い掛けてきた。


「未来でも過去でも俺は俺だ。過去のソーナを愛しているから未来のソーナがいるんだ。そうだろう?

―――愛しいソーナ」


「―――っ!」


目に溜めていた涙が決壊したかのように大量の涙を流して俺に抱きついてきた。


「そうよね・・・・・イッセーはイッセーよね・・・・・ただ、過去と未来が違うだけでイッセーは

イッセーよ」


「うん・・・・・!うん・・・・・!そうだよ・・・・!イッセーくんはイッセーくんだよ・・・・・!」


シーグヴァイラとセラフォルーも俺の傍によって抱きついて涙を流し始めた。場の空気を読んで

こう言った方が良いか?


「ただいま。ソーナ、セラフォルー、レイヴェル、ヴァイラ」


「「「「・・・・・おかえりなさい・・・・・」」」」


どうやら正解のようだった。未来の俺じゃないけど彼女たちの心の穴を変わりに埋めよう・・・・・。

-178-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




ハイスクールD×D 15 限定版 陽だまりのダークナイト
新品 \4725
中古 \
(参考価格:\4725)