小説『真剣で私たちに恋しなさい!』
作者:黒亜()

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【小雪アフター】



「カーイトっ♪」

「うぉっ!」


いきなり背中に飛びついてくる小雪。
今日も見つかってしまった。


「えっへへ〜、どっか行こうよぉ。」

「いや、今日は…」


あの小雪を救った日以降…
正直、仲間と少しの間とはいえ離れなければならないのだから、落ち込んで
いるのではないかと思ったのだが、そんな心配は杞憂に終わった。
かわりに俺にこんなベタベタするようになったのだ。

しかし、それだけではなかった。
頻度だけでなくスキンシップもより激しいものになっていた。
前だって遠慮なく胸を押し付けてくるという無防備ぶりを遺憾なく発揮して
くれたが、今はといえば…


「カイト、カイト。こっち向いてよ、ちゅ〜」


お分かりだろうか。
小雪は抱きつき攻撃よりも遥かにレベルの高いキス攻撃をするようになって
いた。
小雪ほど可愛い女の子からなので、決して嫌ではないのだが。
これは無防備というより自分のことを軽く扱いすぎというか…
懐いてくれているのは嬉しいが、もっとキスは大切にするものだろう。


「小雪、こういうこと葵冬馬とかにもしてんのか?」


そうなると当然気になってしまう。
仲の良い奴にするんだったら、俺よりも付き合いが長いあいつらもやっぱり
そういうことをされてるってことだ。
だが、小雪の答えは、


「しないよー、するわけないよー。だって、トーマと準は友達だもん。」

「え?じゃあ俺は?」

「ボクはいっつも言ってるよーだ。カイトのことは好きだって。」


うん、確かに今までもそう言われて、くっつかれてきた。
あれ?キスされて、好きっていうのはもしかして…
いや、待て。


「葵冬馬のことは好きか?」

「うん、好きだよー」

「…だよな。」

「でも、カイトの好きとは全然ちがうよ。カイトとじゃないと、キスしたく
ないもん。」


なんというか、こんなに自然な告白もないだろう。
今まで好きだと言われ続けていて、でもそれは友達としてだと思っていた。
だからこそ、こう改められるとなんか変な感じだ。
ただ小雪の本当の気持ちは俺も嬉しいのは間違いなくて。


「やっぱ、どっか行くか。デートでも。」

「いくいくー。」


そう言ってしまうのだった。


「どっか行きたいとこあるか?」

「ボクはカイトと一緒ならどこでもいいよん♪」

「んー……あ!そういや、この前…」


どこに行こうかと迷っていたところであるものを思い出す。
他に候補もないし、その場所に向かうことにした。


「よし、ここに入ろうぜ。」

「うぇーい」


カランコロン

ドアを押して中へと入る。
小雪は素直についてきてくれるので本当に助かる。


「いらっしゃいませ、何名様ですか?」

「ああ、二人で。」

「では、お席へご案内いたします。」


俺達がやってきたのは普通のファミレス。
デートにしてはあまりにもチープだが、俺がここに小雪を連れてきたのはき
ちんとした理由がある。


「ご注文お決まりでしょうか。」

「この“マシュマロキングダム”っていうのを1つ。」

「かしこまりました。こちらは彼女さんとお召し上がりになるということで
スプーンお2つでよろしいですか?」

「あ、それで。」


―“マシュマロキングダム”
なんかこのファミレスではフェアをやっているらしく、期間限定で登場した
カップル向けのメニュー。
王国という名だけあって、そのボリュームも結構ある。
俺はこの宣伝を見かけたとき、ついつい小雪を思い出してしまっていたので
覚えていたというわけだ。


「小雪、マシュマロ好きだよな?」

「うんー!大好きだよ〜。」


いや、これで嫌いとか言われても困るけどな。
なんかマシュマロのイメージが強いんだよな。


「お待たせしました。」


やってくるマシュマロキングダム。
…なんかメニューよりも大したことないってのはよくあるが、これは実物の
ほうが迫力が凄い。
どう手をつけようか迷っていたときだった。


「カイト、カイト、あーんして?」

「なっ…」


無邪気な笑顔でそんなことを言う。
ある意味やってることは小雪の得意技“マシュマロ食べるー?”と変わらな
いのだが、これは意味も異なれば破壊力も別次元だ。

そのまま俺たちはしばらく食べさせあって、量を減らしていった。
小雪の最強に可愛いあーんにも慣れてきたのだが…


「なんか小雪の肌も白くて柔らかくて、マシュマロみたいだよな。」

「えへへー、食べてみるー?」

「ごほっ…!」


不意打ちで放り込まれる爆弾は色んな意味で危なかった。
なんつーかその体躯と幼さの組み合わせは反則だろう。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


日も暮れて、すっかり街に明かりがともった頃。
俺たちは川原の芝の上に座り込んでいた。
そこは街とは違い、ほとんど闇に包まれている。


「小雪、寂しくないか?」


すっかり楽しんで落ち着いた今だからこそ聞く。


「自分の友達が捕まって、離れ離れになってることがよ。」

「だいじょーぶだよ。確かにトーマや準とは少しの間会えなくなっちゃった
けど、二人とも本当の辛さからは救われたんだもん。」


小雪はいつもの調子で喋っているが、本音を言ってくれる。
俺には隠さないという約束はきちんと守ってくれているのだ。


「…ボク、小さい頃ここでずっと見てたんだ。他の子が楽しそうに遊んでる
のを。ボクは入れてもらえなかったんだけどね。」


俺は何も言わずに小雪の肩を抱いた。


「今は俺がいるだろ?どうだ、彼氏と星空の下でデート。これでもまだ満足
じゃないか?」

「ううん、幸せだよ。ありがと、カイト。」

「ならもっと幸せになろうぜ。」


そう言って俺はキスをする。
小雪も背中に手を回して抱きついてくる。


「これからは幸せじゃないなんて言わせないからな。」


もうそんな辛いことは味わわなくていいんだ。
持てる全てで幸せにしてあげたい。
それが俺の幸せでもあるから。

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