「瑠璃ちゃん、あたし実は昨日高瀬に告白されたんだわ」
あたしの突然の発言に、向かいの席に座ってタコさんウィンナーを口に運ぼうとしていた瑠璃ちゃんの手がとまった。
「ごめん、もう一回言ってくれる」
「告白されたんだわ」
「誰に?」
「高瀬に」
「いつ?」
「昨日」
「何でもっと早く言わなかったの?」
「別にわざわざ言うことじゃないかなって」
瑠璃ちゃんは左手にウィンナーの刺さった箸を持ったまま、右手で額を押さえため息を吐いた。
「おかしいなーと思ったのよ。あの馬鹿な高瀬が学校休むわけないもん。知ってる?あたしとあいつ中学から一緒だけど今まで一回も学校休んだことないのよ」
「へぇ」
馬鹿は風ひかないって本当なんだ。
「で、何で高瀬は休みなの?」
「あたしが聞きたい」
「高瀬のこと振ったんじゃないの?」
「考えて、今日返事するって言った」
「へぇ」
瑠璃ちゃんは笑い、身を乗り出して、
「詳しく聞かせてよ」
「いいけど、早くウィンナー食べなよ」
さっきからすごく気になってるんだから。
高瀬(下の名前は忘れた)はとにかく馬鹿な奴だ。
どこの学校のどこのクラスにもたいてい一人はいると思う。
やたら元気で、テンション高くて、自分はそれでおもしろいと思っているんだろうけど、実は全然笑えないジョークを飛ばし、奇想天外な行動を起こして、目立とうとする。
まわりの人間は一人でボケてる高瀬を見て、笑うか、冷たい視線を浴びせるかどちらかに別れる。
あたしは始め、高瀬を頭の悪い奴だと思って冷たい視線を浴びせていた。
けど誰に対しても物怖じしない高瀬が、次々につまらない冗談を考えてはあたしに言いにきて、あたしもあたしでそのたびに高瀬に突っ込みを入れていたものだから、いつのまにやらあたしと高瀬はいいコンビだとクラスの中で噂されるようになってしまった。
別に迷惑ではない。高瀬は頭悪いし冗談はつまらないけど、人間としてはいい奴だし、笑うと右の頬にえくぼが出来るのが子供っぽくてなんか可愛い。
あたしと高瀬はまぁいい友達、そう思っていた。
告白されたのは本当に突然だった。