小説『ドラゴンクエスト―ダイの大冒険― 冒険家の歩き方』
作者:amon()

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旅の始まりは別れと再会!!の巻



≪SIDE:ハドラー≫


「ぐうぅぅぅ……ッッッ!!」

 俺は今、新たなる我が魔王軍の居城『鬼岩城』の一室で、憎きエイトから受けた傷の治療に当たっている……。

「ぬぐうぅぅぅぅ……ッッ!!」

 斬り飛ばされた両腕は、俺自身の再生能力で再生し、下半身は繋ぎ合わせ蘇生液に漬かる事で結合させている……もうじき、完全に回復できるだろう。

「くッ……!それにしても……!」

 思い出されるのは、返す返すも憎々しいあの若造の事だ!

 この魔軍司令ハドラーを、あそこまでコケにするとは……!

「ぬぅぅッ!ゆ、許せん……!!」

ボコボコボコボコ……!

 湧き上がる怒りで魔力が溢れたか、蘇生液が沸騰し始める。

 と、その時だった――。

『……手酷くやられたな、ハドラー』

 この凄まじい威圧感……我が主、大魔王バーン様だ!

「申し訳ありません……!大魔王様!お見苦しい姿をお見せしまして……!」

『気に病むでない。お前でその有様では、他の者達では帰還する事すら叶うまいて。むしろ、勇者アバン以外にそれほどまでの強敵が存在する事が分かったのだ。名誉の負傷と言って良かろう……』

「ハッ……!」

『余は、お前に全幅の信頼を置いておる。敵がいると分かっておれば、手の打ち様は幾らでもあろう。かつて成し遂げられなかった世界制服の夢を叶えるが良い……』

「ハハァッ!!」

 ややあって、バーン様の気配が消えた……。

「っ、ふうぅ……」

 相も変わらず、偉大で恐ろしいお方よ……間近に接しておらずとも、身が竦む威圧感を放つとは。

「……よし」

 腕の再生は完了だ。下半身も程なく繋がる。

 エイト……冷静に考えれば、恐るべき相手よ。腹立たしい限りだが、この俺が、バーン様に以前より強靱な肉体を与えられたこのハドラーが、手も足も出せずに大敗したのだから……!

 アバンとは比較にならん脅威だ。エイトは明らかに、全盛期のアバンすら遥かに超えた力を持っている。

「叩き潰さねばならん……!我が魔王軍が世界を制服する為にも……!」

 見ておれよ!我が全軍を挙げても、必ず抹殺してくれる!!

 エイトだけではない!我が魔王軍に盾突く者を、必ずや根絶やしにしてやるわ!!





≪SIDE:OUT≫


 ハドラーの襲撃から2日が過ぎた……。

 ひとまず平和を取り戻したデルムリン島で、俺は旅立ちの準備を進めている。


 ハドラーが逃げた後、島にいる皆で話し合った――。

 魔王軍に目を付けられた以上、俺が島に留まるのは拙い。こうなったら一丁、魔王軍と徹底的に戦ってみるかと思い立ち、俺は皆に旅立つ旨を伝えた。

 すると、ダイが俺について来ると言い出した。

「エイト兄ちゃんが魔王軍と戦うなら、オレも一緒に行く!元々、魔王軍をやっつけて世界を平和にする為に、オレはアバン先生に修業してもらったんだから!」

 これには最初、バランやブラスさんが反対したが、意外な事にソアラがダイの味方になった。

「ディーノが自分で考えて決めた事だもの。私達がとやかく言う事じゃないわ」

「し、しかしだな、ソアラ……」

「あなた、信じましょう。私達の子を……」

 バラン・ブラスさん両名は、ソアラの鶴の一声で折れた。母は強し、といったところか?

 それに乗じて、という訳ではないだろうが、アバンさんも旅立つそうだ。

「ハドラーが復活し、その背後に更なる強敵――大魔王バーンが控えていると分かった今、事は急を要します。ダイ君の修業の完成を急がねばなりません」

 その時の言葉通り、この2日の修業はこれまで以上に苛烈となった。尤も、ダイもやる気がみなぎっているから問題はないようだ。

 それに、アバンさんはこうも言った。

「蘇ったハドラーとエイト君の戦いを見ていて分かりました。今の私はエイトはおろか、あのハドラーの足下にも及ばない……私も今一度、己を鍛え直さなければならないという事が!」

 昔の勇者だからと、何もせずにいる気はないらしい。


 バランとラーハルトは、デルムリン島の守りに残る。

「今の私が行っても、エイトの足手纏いになるだけだ……」

 口にはしなかったが、バランはまだ人間の為に戦う気になれないんだろう。

 心に食い込んだ人間不信の棘はまだ抜けないようだ。まあ、それは仕方がない。

「俺も島に残り、バラン様を補佐いたします。魔軍司令とやらがこの島を嗅ぎ付けた以上、相応の警戒が必要かと」

 軍人然とした物言いや振る舞いが板に付いてきたラーハルト。

 バランとラーハルトの2人がいれば、先ず心配ない。


 最後に……俺とダイの旅に、ポップが加わる事になった。アバンさんの指示だ。

「嫌だ、嫌だよ!先生!オレはまだ、先生に教わらなくちゃならない事が沢山あるんだ!」

「いいえ、ポップ。恐らく、もう私が君に教えられる事はないでしょう。むしろ、これ以上私の元にいては、君の成長を妨げる結果になるように思います。それに、さっきも言った様に私も自分の修業に専念しなければなりません。ポップに指導してあげる余裕はないんですよ」

「そ、そんなぁ……!お願いしますっ!今度こそ真面目に、真面目に修業しますから……っ!」

「ポップ……聞き分けなさい」

 ポップは泣き縋ったが、今回ばかりはアバンさんも聞く耳を持たず、結局、俺達の旅に同行する事が決まった。本人は泣く泣くって感じだったが……。

 あんな調子で過酷な旅に出て大丈夫かと、かなり心配だ。


 そんな感じで、やる事が決まると後は各々やるべき事をやるだけ――


 ダイとアバンさんは修業の仕上げを、他の皆は荷造りを……俺は常に旅の支度は万全だから、ダイの修業に付き合った。

 ポップはこの2日間ずっとウジウジしていた……あいつ、本当に旅に出て大丈夫なんだろうか?


 まあ何はともあれ――今日でダイの修業は終わりだ。


 残念ながら、ダイはアバン流刀殺法を完全にマスターするには至らなかったが、アバンさんや俺の都合上、切り上げる事に……。

「ダイ君、この5日間よく頑張りました。修業が途中で中断してしまうのは残念ですが、教えられる事は全て教えたつもりです。後は自分で修業を積み、真の勇者となって下さい。君ならば、必ず私を超える勇者になれます」

「アバン先生……今日まで、ありがとうございましたッ!」

 そうして簡略ながら、ダイの卒業式が行われた。

「ダイ君。君にこれをあげましょう」

 アバンさんが取り出したのは、小さな石の付いたネックレスだった。

「先生、それは?」

「『アバンのしるし』、卒業の証です。これを着けていれば、全国公認の正義の使徒ですよ」

 何やら妙な言い回しだが、取りあえずアバンさんの修業をやり遂げた人間に与える物なんだろう。

 アバンさんはそれをダイの首に掛けた。

「おめでとう、ダイ。中々似合ってるぞ」

「へへへ、そうかな?」

 俺の褒めに、照れくさげに頬をかくダイ。

 と、そこでアバンさんはもう1本の『アバンのしるし』を取り出し、傍で見ていたポップに歩み寄った。

「ポップ……」

「……」

 アバンさんが呼び掛けても、不貞腐れた顔でポップは俯いたままだ。

「……ポップ、修業で身に付けた力を、どうか人々を守る為に使って下さい。あなたにも、いつか分かる日が来ます……己の力の全てを尽くして、戦うことの意味が……。だから、その時の為に、これをあげておきます」

「ッ……そんなの……!」

「ポップ」

 アバンさんが再び呼び掛けると、ポップは涙と鼻水を垂らした顔をあげた。

「私は、あなたを信じています」

「アバン、先生ぇ……!」

 余程我慢していたらしく、ポップが滝の様な涙を流して大泣きし始める。


 色々あったが、卒業式はなんとか終了――その足で、アバンは『ルーラ』でどこかへ旅立って行った。

「魔王軍、そして大魔王との決戦には、必ず駆け付けます」

 こう言い残して……。


 そして翌日――今度は俺・ダイ・ポップのパーティーが旅立つ番だ。

 皆が用意してくれた荷物を、島に一艘しかない小船に積み込み、準備は万端――島の住人達が浜に集合し、旅立つ者と見送る者に分かれて立った。

「みんな!父さんや爺ちゃんの言う事を聞いて、仲良くしてるんだぞ」

『ウオー!』『アウ!アウ!』『ギャ!ギャ!』

 ダイが言うと、モンスター達は各々の鳴き声で騒ぎ、応える。

「ディーノ、身体に気を付けるのよ?」

「分かってるよ、母さん。心配いらないって!」

「ダイよ、無茶をするでないぞ?エイト君の言う事をよく聞いて、迷惑など掛けてはいかんぞ」

「大丈夫だって、ブラス爺ちゃん!俺が必ず、大魔王を倒してやるからさ!」

 ソアラとブラスさんに、ダイは元気に応じる。別れが寂しくない訳がないのに……大したものだ。

「エイト、ディーノの事を頼む」

「任せておけ、バラン」

 俺はバランと固い握手を交わす。

「エイトさん、ご武運を」

「ラーハルト。デルムリン島の事は頼んだぜ」

「お任せを!」

 ラーハルトとも別れの挨拶を交わす。

 これで皆との別れは済んだ――。

「よぅし!ダイ、ポップ。そろそろ行くぞ」

「うん!」「へいへい」

 それぞれ返事をして船に乗り込む2人。

「よッ!」

 俺が船を押し、勢いがついた所で乗りこむ。そのタイミングを見計らってダイが帆を張ると、船は一気に加速して島を離れて行く。

 そこでダイが、島の皆に振り返る。

「みんなーっ!行ってくるーーッ!!」


 さらばデルムリン島――俺達は、魔王軍と戦う為、旅立った。



 さて、最初の行き先だが……ダイの提案でロモス王国を目指す事になった。

 パプニカのレオナ姫を救いに行きたいと言っていたダイだが、パプニカの前に、偽勇者の件で顔見知りになったロモス王を助けに行きたいんだと。

 アバンさんが島に来た時に言っていたそうだが、ロモス王国も魔王軍の攻撃を受けているとか……まあ、世界中でモンスターが大魔王の影響で暴れているんだから、当然だろうな。

 俺が『ルーラ』を使えば世界のどこの街だろうと一瞬で行けるが、この旅では余程の事がない限り『ルーラ』は使わないと公言してある。

 主に、ダイとポップの修業の為――自分の足で歩く事も、れっきとした修業なのだ。現に俺はこの22年、世界中を歩き回ったおかげでスタミナと足腰が鍛えられたんだからな。

 少しでも鍛えておかないとな。ちなみに今の2人のステータスは――


―――――――
ダイ
性別:男
レベル:17
――――――――――――――
E兵士の剣・改(攻+10)
E布の服(守+4)
Eパプニカのナイフ(攻+24)
――――――――――――――
力:51
素早さ:80
身の守り:39
賢さ:25
攻撃力:85
守備力:43
最大HP:113
最大MP:26
Ex:19903
――――――――――
ダイ
HP:113
MP:26
Lv:14
―――――――――――――――――――
ホイミ メラ
大地斬 海波斬
空裂斬・未完 アバンストラッシュ・未完
―――――――――――――――――――


―――――――
ポップ
性別:男
レベル:18
――――――――――――――
Eマジカルブースター(攻+0)
E布の服(守+4)
――――――――――――――
力:17
素早さ:26
身の守り:13
賢さ:42
攻撃力:17
守備力:17
最大HP:86
最大MP:69
Ex:26255
――――――――――
ポップ
HP:86
MP:69
Lv:18
――――――――――
メラ メラミ
メラゾーマ ヒャド
ヒャダルコ
――――――――――


 と、まあ見ての通り、今のままの2人では大魔王はおろかハドラーにすら手も足も出ない。実戦経験も修行も全く足りない……。


 という訳で、小船でラインリバー大陸に上陸し、そこからは基本徒歩だ。

 ラインリバー大陸の南端からロモス城までの中間にはネイル村がある。流石に1日でロモス城まで行くのは強行軍が過ぎるからな、ネイル村で休息を取るつもりだ。

 ついで、と言うと悪いが……ロカさんやレイラさん、それにマァムに挨拶していくとしよう。


 そうして昼過ぎに大陸に上陸した俺達は、ロモスの難所の1つ『魔の森』へと足を踏み入れた――。



「ゼェ、ゼェ……な、なぁ〜、い、いつになったら、ね、ネイル村とやらに、着くんだよぉ〜……?ヒー、ヒー……み、道に迷ったんじゃねえのかぁ〜……?」

 あーうるさい……。ポップは、ここ2、3時間ずっとあの調子でヒーヒー言いながらブーブー文句を言い続けている。

 今は、魔の森に入って約5時間といったところだ。日はすっかり暮れて、空には星と月が出ている――。

「ハァ、ハァ……も、もうクタクタだぁ……。な、なぁ、ホントに大丈夫なのかよぉ……?」

「グチグチ言うな、ポップ!喋る余力があるなら足に回して黙って歩け!」

 今更ながらに、アバンさんはこいつに何を教えてきたのか問い詰めたくなってきた……。

「だらしないなぁ。もう少し頑張れよ、ポップ」

「お、オレは魔法使いで、お前と違って体力は人並ちょい上くらいなんだよ……!」

 ダイの呆れ口調に、ヘロヘロの憎まれ口を返すポップ。可愛げがないなぁ……。

 俺は溜め息を吐きつつ、空の星を見上げる。

 こういう森で迷うのは、木を見て方向を見失うからだ。特徴がある木を目印に、なんて事は不可能に近い。だから、こういう時は空の星や月、太陽などから方角とある程度の位置を割り出し、進むのが正しい。多少、勉強が必要だが、慣れればそれこそゲームの様に真っ直ぐ目指す方角に進める様になる。実際、俺はそうなった。

 今は……大体、魔の森の南西辺りで、ネイル村はもう少し北東だな。順調にいけば、あと20分も掛からずに着けるだろう。

「ネイル村はもうすぐだ。村に行けば、俺の知り合いの家に泊めてもらえるだろう。頑張りな」

 と、俺が2人に声を掛けた――次の瞬間!

「……きゃああぁ〜〜〜!?」

「「「!?」」」

 女の子の悲鳴が聞こえて来た。

 その声に反射的に飛び出したのはダイだ。俺とポップの後を追う。


 そして、少し走ったところで悲鳴の正体を見つけた――。


「あ、ぁ、ぁ……!」

『『ゲッヘッヘッヘ!』』『ケ〜ケケケケ!』

 小さな女の子が、リカント2匹と人面樹1匹に囲まれている!こりゃヤバいな!

「1匹ずつ仕留めるぞ!ダイは人面樹を!ポップは左のリカントをやれ!」

「「おう!」」

 俺達は一斉にモンスター達に向かって駆けだす――

『ゲッヘッヘ!グワァーーッ!!』

「ヒッ!?きゃあぁぁッ助けてぇーーッ!!」

 リカントAが振り上げた爪を女の子に振り下ろそうとする――が、そうはさせん!

「おらぁッ!!」

『グゲェッ!?』

 全体重を掛けた俺の拳を受けて、リカントAの首が可動域を越えて曲がった。音と感触からして、骨がへし折れたようだ。

「たあぁーーーッ!!」

 ダイは得意の剣で、人面樹の頭の枝を全て切り落とした。

『ヘ……ホ……?』

 モンスターでも木だからか、ダメージはないようで、人面樹は自分の頭を確認する様に触る。

『……ヒギィ〜〜ッ!?』

 枝が全て斬られた事で、ダイが敵わない相手と悟ったらしく、人面樹は逃げ出した。

「『メラ』!」

『ギャア〜〜〜ッ!?』

 残るリカントBも、ポップが魔法で攻撃すると、黒焦げになってその場に倒れる。

 魔物の群れをやっつけた――と言いたい所だが……。

「せいッ!!」

『グボ……ッ!?』

 俺がエルボーを落とすと、リカントBは呻き声を上げた。ポップが『メラ』を放ったリカントBは、ダメージで一時的に気絶していただけだったのだ。で、俺の攻撃でようやく倒れた訳だ。

「詰めが甘いぞ、ポップ。アバンさんに何度も言われただろ」

「う……」

 俺の指摘に、ポップがバツの悪そうな表情で顔を背ける。

 と、今はそれより、女の子の方だ。

「お嬢ちゃん、大丈夫だったか?怪我はないか?」

「ひっく、ひっく……うん、ありがとう!おじちゃん!」

「おじ……い、いや、まあ、良いって事だ」

 おじちゃん……いや、まあ……俺はもう27歳だから、小さい子から見たらオジサンなんだって事は分かってるが、実際に言われると軽くヘコむなぁ。髭だって生やしてないし、そこまで老けてないつもりだったのに……。

「……で、なんだって夜の森に1人でいたんだ?誰か、大人と一緒じゃないのか?」

「……あたしのお母さんが、毒のスライムに噛まれちゃったの」

「毒のスライム……って、緑色で地面に広がってて泡が出てる奴か?」

「うん、そう……」

 どうやらバブルスライムの事らしい。

「だからあたし、毒消し草を探そうと思って……」

「無茶な事を……森にはモンスターだっているし、夜の森はそれだけで危険な所なんだぞ?」

「ごめんなさい……でも、お母さんを助けたくて……!」

 泣きそうなのを堪えた顔で言われると、俺の方が悪いみたいで罪悪感が……。

「……それで、毒消し草は見つかったのか?」

「うん……だけど、あたし、森に迷っちゃって……」

「帰れなくなってた所を、さっきのモンスター共に襲われた訳か」

「うん……」

「お前、ネイル村の子か?」

「えっ?おじちゃん、ネイル村を知ってるの!?」

「ああ、俺達はそこへ向かっている途中だったんだ」

「っ!おじちゃん!あたしを村まで連れて行って!お願い!」

 そう言ってお嬢ちゃんは俺の服を握りしめてくる。

「分かった分かった。連れて行ってやるよ」

「ホントッ!?」

「ああ。だが、約束しな。2度と1人で森に入る様な危険な事はしないって」

「う、うん……ごめんなさい」

「謝らなくていいから、約束しろ。今は俺と、そして村に帰ったらお父さんとお母さんとだ」

「はい、約束します!」

「よぉし、良い子だ」

 嘘を吐くような子には見えないし、ちゃんと謝る事もできた。きっと、約束も守るだろう。

「と、そうだ。まだお互い自己紹介してなかったな。俺はエイト、冒険家だ。こっちはダイとポップ」

「へへっ、よろしく」

「よろしくな」

「あたし、ミーナ!よろしくね、エイトおじちゃん!ダイお兄ちゃん!ポップお兄ちゃん!」

 2人はお兄ちゃんなのに、俺はおじちゃんなのか…………まあ、いいか。

「さて、そうと決まればネイル村に急ご……むっ!」

 後ろの方から、気配が近づいて来る……。

「ど、どうしたの?エイト兄ちゃん」

「何か来るぞ……」

「えっ!?」「またモンスターか!?」

 ダイとポップが武器を手に警戒する。だが、近づいて来る気配には肌を刺す様な殺気や敵意が感じられない……。

 一応警戒は怠らず、ミーナを背に庇う位置に立って、森の奥に目を凝らす。

……ッ……!

 森の奥から微かに音が近づいて来る……それも、真っ直ぐこちらへ。加えて、流石に暗くて見え難いが木の枝を何かが跳んで移動しているのが、微かに見えた。中々、身の軽い相手の様だ。

 そして、しばらく警戒を続けていると、正体不明の相手が木の枝から降りて来た。

「……何者だ?」

 まだ暗く、相手の顔は見えないが、どうやら人間の様だ。だが、油断は禁物――世の中には、世の混乱に乗じてあくどい事をやる馬鹿だっているのだ。

「怪しい者じゃないわ。この森の東にあるネイル村の者よ。そこにいるミーナを迎えに来たの」

「む……?」

 女か、しかもどこかで聞いた事がある様な声だが……?

「あっ!マァムお姉ちゃん!」

「マァム……?」

 後ろにいたミーナが、嬉しそうに俺の横をすり抜け、前方の人影に駆け寄って行く。

「ミーナ!」

「マァムお姉ちゃん!」

 人影にミーナが飛びつき、人影もミーナを抱き上げる。

 そこでその姿も完全に見えるようになり、ようやくその正体が分かった――。

「マァム!マァムじゃないか!」

 そこにいたのは、元戦士ロカさんと元僧侶レイラさんの娘のマァムだった。聞いたことある声なはずだ。

「誰かと思ったらっ!エイトさんだったのっ!」

 マァムも俺の姿がちゃんと見えたらしく、笑顔を浮かべた。


 予想外な形ではあるものの、俺は昔からの馴染みに再会した――。



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