小説『魔導戦記リリカルなのはStrikerS〜鉄の巨人と魔法少女達〜』
作者:明神()

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人型のロボットが、夜の道路を滑空しながら猛スピードで駆け抜ける。

そもそも、現代において人型で等身大のロボットを開発しましたなんて言ったらノーベル賞物だろう。

「リーゼ、目的地まで後何分だ?」

自分はそう尋ねる。

誰に?と聞かれればこのロボット・・・いや、この“パワードスーツ”の形状を取る愛機(デバイス)にだろう。

『三分、減速及び起動解除を』

一年前、神を名乗る人物にある世界へ投げ込まれたときに手にした剣であり、相棒のコイツは普段、待機状態でドッグタグ状で名称のみが正面に明記されている。

アルトアイゼン・リーゼ、独語で“古い鉄の巨人”の意味を冠した愛機を手にした事件当時が、非情に慌しく変化していく環境にてんやわんやだったが、当時から今までを語るとしよう。







魔導戦記リリカルなのはStrikerS〜鉄の巨人と魔法少女達〜
1.『古い鉄』の名を冠するデバイス





一年前、世界が変わった日に自分こと斉藤カズヒロは勤務先から帰宅後、すぐに意識を闇に落とした。

理由は簡単だ、過度の疲労と寝不足。

この時は夢にも思わなかった。次に目が覚めると神を名乗る中性的な顔立ちの美人(美男?)がいきなり頭を下げたのだ。

「ごめんなさい!」

もやは颯爽と眠りに尽きたかったので軽く流して事の説明を求めると実に分かりやすく、心当たりがありまく
りの答えが返って来た。

「貴方は過労死しました。」

成る程、為らばコイツが謝ってくるのも筋違いだろう。

来世ではそこそこに働こうと思いながら目を瞑る、瞑ったつもりだがコイツは視界からきえない。

「それはそうですよ。私、神のミスで殺してしまったって痛い!?」

とりあえず、反射的に殴る。成る程、自分の死因は過労死でも自称・神のミスか。

「そこで、貴方にはある物(システム)の破壊をお願いします」

何?っといぶかしむ間も無く説明は続く。

「本来は転生の輪へ戻っていただくのですが、私もミスします。ええ、ミスしまくりです。世界をぶっ壊しかねないほどのね」

自虐じゃね?

「ま、平たい話は貴方には魔法のある世界へ転生してもらいます。」

よく聞く得点つけて、別世界で生きろってあれか。

「まぁ、得点と言ってもそのシステムには無いパワードスーツです。行き先の世界ではデバイスと呼ばれています。」

で、行き先は?

「リリカルなのはってご存知ですよね?ソレです。その世界に紛れ込んだシステム管理者の破壊と引き換えで扱う剣をプレゼントします。過労死前の肉体ごと転生してください」

何を言っているの?人殺しになる気はないよ!?

「大丈夫です、システム管理者は人に擬態していますが人ではありません。それでは武運を祈ります」





と言う反論を許さない勢いで神に転生させられ、次に意識を取り戻したらあのレジアス・ゲイズ率いる地上本部の重鎮連中に尋問されていた。

この時はのんきにマジで「リリカルなのは」の世界だよ!とか思ってしまったものだ。

何でも、極秘裏に進めていた開発計画の試作機にうっかり使用者登録してしまった為に特例処置で局員入りしろとの事。

選択の余地は無い様で流されるまま承諾。

どうやってアルトアイゼン、試作機の元まで転がり込んだのかまったく記憶に無いまま管理局に身を置くことになった。

はっきり言っていい?

今から地面の頑固な汚れになってくるわ。割とマジで・・・。





この時に手渡されたアルトアイゼン、と言っても急いだレジアスの指示で急造した新型には正式な名称も無く、神の仕組んだこの流れに乗る以外の選択肢をカズヒロにはなかった。だから勝手に名づけた。

と言うところで思い返すと神の用意する剣とはこのアルトだろう。

開発に関わった技術者の話によれば、このミッドチルダ地上で発見された人造ロストロギアをコアにする予定だったらしい。

非魔力保有者でも運用可能な『絶対的な火力をもって正面突破を可能にするデバイス』が開発コンセプト。

リボルビング・ステークは六発のカートリッジ(弾丸に魔力を込めた物)を使用し、カートリッジに込められた“魔力”その物を大量に打ち込む、だから物理的ダメージはそこらのベルカ式デバイスと大差ないらしい。

肥大化した肩の装甲内部には拡散・収束が選択可能なスクエア・クレイモアが内蔵されている。

これは古代ベルカ騎士の魔法・シュワルベフリーゲンの劣化版であり、直射しか出来ないものの高い威力を保有、牽制装備に三連ヴァリアブルキャノン、これはAMF環境下で(魔法が発動しにくい状態・発動が解除される)魔力弾(ヴァリアブルショット)を吐き出す機関銃。

後は非常用武装としてヒートホーン、こちらは角であくまで非常用。しかし威力は極めて高い。

搭載武装が接近戦に傾いた為、過剰なまでに装甲を強化して移動補助にアームドデバイスに用いられる高出力スラスターを搭載して一撃離脱を実現したのだが、この仕様を見てレジアスは「所詮試作品か」と呟いた。

「で、毛嫌いする機動六課に火種として送りつけたと」

一通りの説明を、今日からお世話になる部隊の部隊長へ終えてそう締めくくった。

「そういうことになるんかな?カズヒロくんの処遇も気の毒やけど」

そう言うのは歳がそう違わない、むしろ歳下の少女だった。

「いえいえ、流れはどうあれ、ロボットの操縦なんて少し前までゲームでしか出来ませんでしたから。今はそこそこ楽しめてます」

そう言ってアルトへ視線を落とす。

『光栄だ』

電子音が返って来た。

「そうかなぁ?本来ならカズヒロくんみたいな境遇の人はちゃんと保護するのがうちらのはず何やけど、特定処置なんて早々仕えるもんやないし」

唸る短髪の少女にカズヒロはため息を一つはさんで告げる。

「八神はやてさんの気に止むことじゃないですよ。とりあえず、今日からよろしく」

部隊長にしては若い、若すぎる部隊長・はやてとの挨拶はコレで終わる。







次に挨拶を済ませないといけないのは所属する分隊長と副隊長にである。

一様、アルトアイゼンは次世代デバイスの試作機でカズヒロはそのテスターと言う立場から必然的に前線配備
になる。定期的なデータ送信もあるからカズヒロ的には技術部に近い部署が良かったのだが・・・。

「初めまして、スターズ分隊の隊長を務めてまる高町なのはです。」

(白い悪魔とエンカウントォォ!)

内心絶叫、と言うかメッチャテンション上がる。

「同じく、副隊長のヴィータだ。」

「斉藤カズヒロです。一様、アルトのテスターやってま・・・」

「はやてちゃんから聞いてるよ。次元漂流者さんなんでしょ?」

流石は情報伝達の早い・・・と言うかライトニング分隊もあるとかで金髪美人ことフェイトが自己紹介待ちをしているが、ここまで女性しか見てません。

どうなっての?機動六課の男女比おかしくない?それとも男子禁制の部隊?戦乙女部隊?

「私はライトニング分隊の隊長をしているフェイト・T・ハラオウンです。」

「はぁ」

とりあえず、カズヒロの所属はスターズだ。フェイトは居合わせただけなのだ、この後訓練とかで。

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