小説『追憶の歯車』
作者:IRIZA()

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第三話


あの戦いから、既に一週間が経った。結局あの聖戦(笑)は

「全力で、お断りさせていただきます!!!!」

の後に私が全力で陰を薄くしたことにより離脱&忘却ができ、上がってもいない幕を閉じたのだった。
それからは、いつも通り山積みの書類と愛を育むことに勤しんでいる。特に大きな問題もなく、そんな私の脳裏に浮かんでいるのはあの風紀委員長と2年B組のことだった。
あれから、結局反省文は届かない。まぁ全力で私の存在を消したのだから、多少の副作用は許容範囲というものだろう。これで平和を得ることができたのだから、釣りがくる。
しかし、それでは彼らはまだあの暴力的な取り締まりを行っているのだろうか。
改めて過去の投書、(風紀委員をなんとかしてください!!)という類のものを読んで、もっと深く調べるべきだったと反省した。
風紀委員からの報告書には、日々の取り締まり報告や並中の現状のことばかりが書いてあって、その被害などの悪いことは一切書かれていない。
私は事実にまったく目を向けようとしていなかったのだ。
言わば、『事件は会議室じゃない、現場で起きているんだ!!』的な感じである。
とにかく、この現状は直ぐにでも変えなければ。しかしどうする?
私の存在はあまりにも微弱で、力にはなり得ないだろう。しかるべき機関もこの並盛においては無力なことも、この一週間ですべて調べ上げた。
ならば、……あの風紀委員長の
、頭が上がらない人。……そうだ、先代の風紀委員長は!!……は、たしか、雲雀委員長に暴力で追い出されたのだったような……

さんざ思案したあげく、私はやはり直接会って話すことにした。それは、他を介してはなんの意味もないと思ったのに加え、彼自身にきちんと理解してもらわないといけないと思ったから。
だから私は、最も時間が取れる放課後、応接室を訪ねた。


「失礼します。生徒会長日之影 紗鳥と申します。雲雀委員長にお話があって参りました。いらっしゃいますか?」
「え?あ、はい。生徒会長、ですか……?」

簡潔に、要点だけを説明する。
草壁さんが、まるで私に初めて会うかのような(、、、、、、、、、、)態度で私を通してくれた。
応接室の一番良い椅子には雲雀委員長が座って書類処理を行っており、私はその正面に当たる位置のソファーに座らされた。
草壁さんが小さく どうぞ、と言って、私は紅茶を頂いた。
雲雀委員長が聞いていないこと覚悟で、話しはじめる。

はじめまして(、、、、、、)雲雀風紀委員長。生徒会長を務めています、日之影 紗鳥です。今回伺ったのは他でもありません、風紀委員の取締法について糾させていただくためです。ご存知かとは思いますが、今期……いえ、あなたが委員長を務めだした前期からそうなのでしょうね、とにかくそのあなたの選んだ風紀委員達は、あなたも含めあまりにも傲慢で、己が一生徒だということを忘れてしまっている。特に、職権の濫用が著しく他生徒から挙げられています。分かっているとは思いますが、今私が言っているのは風紀を正すため、という名目の暴力的行為です。この世の生物は皆平等であるべき存在で、意味のない暴力はなくすべきです。雲雀委員長。あなたの、委員達への影響力があれば今日中にでも正すことができるでしょう。どうですか、了承して頂けますね」

一気にまくし立てた。雲雀委員長はまるで気づいてもいないようなそぶりで書類を片付けていたが、聞こえていないはずがない。
私が全てを言い終えると、彼はチラと私を見て一言、

「無理」

とだけ言った。
その後何故か草壁さんが説明をしてくれたが、風紀を乱す者の中には血の気の多い者がほとんどらしい。故に、風紀委員も武装をしていなければならない、ということらしいのだが、……それでも、

「話し合いで解決できた問題もあったはずです。それらを全て、力でねじ伏せてきたのはあなた達ですよね?私は何も、武装をするな、力を行使するなと言っているわけではありません。ただ、適度に保てと言っているんです。なるべく穏便に、周囲に被害を及ぼさない限度を守ってください。……それでもそちらが変える気がないのでしたら、私も適切な措置を取らなければならなくなります」
「措置って?」

雲雀委員長が、ようやく私の顔を真面目に見てくれた。さっきから私しかほぼ話していない気がするけど、ここぞとばかりに私は

「しかるべき者に報告をして、風紀委員会を解散します」
「なっ!!?そんなこと……!!!!!」

この中では、草壁さんが一番驚いた顔をしている。リアクション派だなぁ……
一方雲雀委員長の方はというと、少し目を見開いて驚いているようだった。

そのとき、応接室の外で複数人の話し声が近づいてきた。

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