小説『幸せバレンタイン【蘭マサ蘭】』
作者:ポテサラ()

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―2月13日―
皆さんこんにちは、狩屋マサキです。
何故か俺は今お日さま園のキッチンにいます。
そして、何故かチョコ作りをしています。

なんで、こんなことをしているかというと・・・

さかのぼる事、今日の部活が終わり部室で帰りの支度をしている時であった。
ふいに、浜野先輩が、
「あっ、明日バレンタインデーじゃん!ちゅーか、今年も神童が1番多く貰って来るんだろうな?。」
と、言った。
そう、この一言から始まった。

へぇ、やっぱりキャプテンもてるんだなぁー、と、てきとうに話を聞いていたら、
「そんなことないだろう。霧野だって毎年結構もらってるよな?」
キャプテンが霧野先輩に話しをふる。

その時、俺は何故か胸の奥がズキンと痛かった。
「ハハッ、神童にはかなわないけどなー。」
なんて、霧野先輩は笑う。
いつもだったら、ここで俺は霧野先輩を茶化してみたりするはずだけれど、何故かこの時だけはただ無償にイライラしていた。
だから、俺はさっさと部室から出た。
あの場所に何故か居たくなかった。霧野先輩がチョコ貰うとか、どうでもいいはずなのに何故かとても悲しかった。自分でもよく分からなかった。

「早く帰ろう・・・。」
俺が、校門を出ようとした時、後ろから誰かに呼ばれた。
「おい、狩屋ぁー!」
あ、この声は・・・
振り向くとやっぱり予想通り、霧野先輩がこちらへ走ってきた。

「なんですか、霧野先輩。」
俺は、霧野先輩の顔が見れなかった。霧野先輩の顔をみたらさっきの話を思い出して泣きそうになるからだ。

「お前、さっき怒ってたろ?だから、心配になって。」
なんで、こんな時だけちゃんと俺を見ているのか。

「別に、怒ってませんよ。」
俺は、素っ気無い態度で返事をする。

「明日、良かったですね。たくさんチョコ貰えるんでしょう?」
嫌味でも言わなきゃ泣きそうだった。もっと、他の嫌味を言えばよかったと後悔した。

「あー・・・、もしかしてお前、ヤキモチ焼いてるのか?」
いきなり図星をつかれて驚いた。いつも、鈍感なくせにこんな時だけ鋭くなりやがって。

「はぁ?何言ってんですか。なんで、俺が、霧野先輩のことで・・・。」
なんとか、ばれないように嫌味を言い続けようとしたが、限界だった。言葉の途中でずっと我慢してた涙が溢れ出てきた。

涙が中々止まらなくて、喋れなかった。
そしたら、霧野先輩が、
「あのさ、狩屋。もし良かったら。俺のために、チョコ、作ってくれないか?」

「はっ?」
俺は、びっくりした。なんで、いきなりそんなこと言い出すのか、と思った。

「あっ、いや、別に嫌だったらいいんだ。けど、その、もし良かったらなぁーって。」
霧野先輩はそっぽを向く。耳が赤かった。きっと、照れてるところを見られたくないのだろう。
そんな、霧野先輩がおかしくて、俺は笑ってしまった。
「いいですよ。作ってきてあげても。」

俺が、そう答えると霧野先輩は、
「本当か!絶対だぞ。約束なっ!」
って、笑った。そんな嬉しそうにされてもなぁ。
俺は、少し恥ずかしいような、嬉しいような気分だった。




そういうわけで、チョコ作りをはじめるが、中学一年生の男子がチョコなんか作った事もなく、
「まぁ、なんとかなるよな。」
って、思ったがその考えは甘かったようだ。
チョコを作ってたはずなのに、何故か得体の知れないものができた。

「こんなの、渡せるわけ無いよなぁ・・・。」
そう、困っていると、
「マサキ?そんな所で何してんの?」
後ろから、ヒロトさんが声をかけてきた。

「えっと、これは、その・・・」
部活の先輩にあげるとも言えなくて、なんとか、言い訳を考えようとするがまったく思いつかなかった。
そんな俺を見て、
「チョコ作るの?教えてあげようか?」
と、ヒロトさんが笑ってくれたから、俺は素直に教えてもらう事にした。


そして、なんとかチョコができた。
「わぁ、超すげぇ!ヒロトさんありがとう!」

「いいえ、じゃ、明日頑張ってね。」

「え、あぁ、うん。」
そっか、これ渡すんだよなぁ。なんか恥ずいなぁ。

でも、霧野先輩のために作ったんだから、ちゃんと渡さなきゃだよな。
ちゃんと素直に渡せますように、と考えながら俺は2月14日を迎えた。

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