「なっ!!?」
あまりに突然の出来事に、ウルフィアスに隠れながらクリームヒルデを運び出そうとしていたテオが驚愕した。
テオだけじゃなく、この場にいた全員が驚いたに違いない。
なにせ先程まで死にかけていたガキに自分達の中で一番強いはずの「頭」が、なんの造作も無く吹き飛ばされたからだ。
いや。
それだけじゃない。
もう一つ、天使であるミカを含めたこの場の全員が驚いたことがある。
それは、俺自身に起きた「異質」な変化。
もこもこと、まっ白な「それ」は、もともとの形状ではなく、とてつもなく大きく肥大した腕。
突然生えたまっ白な翼が変形した、天使の腕だった。
『……Percutiamque vos bastardus』
俺は、まるで編集したようにエコーが掛かった声で、日本語でも英語でも無い言語で相手を罵倒する。
なんでこんな知りもしない厨二病言語を使っていたのか知らないが、俺自身に起きた変化など微塵も気にならなかった。
今はこいつを殺す。
殺して誰が敵になろうが、仲間を助ける。
ミカを助ける。
天使のような外観にそぐわない獣のような咆哮をあげて翼の拳を振りあげる。