小説『神のミスでONE PIECEに転生させられた男』
作者:八咫()

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『名前』



「あれ?」

気が付くと健は周囲を気に囲まれた場所に立っていた。

手には赤い槍を持っている。

「どこだここ? なんか目線も低くなってるし」

とはいえいつまでもそこにとど持っているわけにはいかず、歩くことにした。

すると目の前に一枚の紙が現れた。健は手に取り、調べる。

字が書かれており、内容は手紙と言えた。

『無事に着いたようじゃの、重畳じゃ、お主が手に持っているのが武器となるゲイ・ボルグじゃ

 本来のは怪力無双でなければならんものじゃし、それだと不便かと思っての、

 Fateと呼ばれる作品から取り寄せてみた。とはいえ効果が変わっていてな。

 必中することは当然じゃが、心臓ではなく必ず当たるだけじゃ、回避しようとする敵にも当たる。

 ただし致命傷ではないぞ、あくまで当たるだけじゃ。まぁお主が努力し、鍛えれば強くなるじゃろう。

 現在の年齢は15歳じゃ、21歳になったら原作開始まで不老にしてやるからの。

 また身体能力を一般の人間と比べて高くしてある。

 生存率を上げるため能力者に対して耐性がついておる。

 これに関しては実戦で覚えてくれ。

 黄金律と呼ばれるスキルで金には困らんじゃろ。

 星の開拓者というスキルであらゆる難航、難行が不可能のまま可能な出来事になるぞ。うまく使いこなしてくれ

 それとお主の名前はアスラじゃ、元の名前が使えないからの。

 お主が頑張れば新しい特典が付くかもしれんぞ? まぁ頑張ってくれ。

PS この手紙はお主の手から離れると自動で燃えるぞ、武運を祈る。 神』

手紙を読み終えた健は、

「なんで最後がミッション・イン・ポッシブル風なんだ……」

と一言だけ言った。

手紙が燃えたのを確認したのち、木々を抜けて進んでいくと遠くで銃声が聞こえた。

「なんだ……近くにだれか居るのか」

無性に嫌な予感がしたため、健は音がしたほうへ走る。

身体能力が上がっている為、生前より早く走っている。

「これなら早く着きそうだ!」





「はぁ、はぁ、はぁ」

彼女にとって今日は最悪の日だった。

海賊が現れたのだ。

それも略奪をする為に金になりそうなもの、食糧、女など己の欲するままに進む海賊たち、

海賊王が処刑され、大航海時代が幕を開けた。

力のない者たちは従うか、殺されるかのどちらかしかなかった。

海軍も奮闘してはいるが、数では相手が上だった。

周囲は悲鳴や銃声ばかり、時には断末魔の叫びも聞こえる。

彼女は海賊が嫌いだ。自身の欲を満たす以外に何もしようとしない。

そんな海賊が嫌いだった。

「姉ちゃんもう逃げられないぜ、大人しくしてもらおうか」

足がもつれ倒れてしまい彼女はもう逃げられないと絶望した。

「女を助けるのに縁でもあるのか俺は」

この声を聞くまでは。




健が数分走っていると、煙が上がっているのが見えた。

木々を抜けた先には町があった。

普段は木々と山々に囲まれ、漁業を営む穏やかな町だったのだろう。

しかし今は阿鼻叫喚の街へと変貌していた。

港と思われる場所にガレオン船が一隻あった。

「海賊か、本当に来たんだな」

そんなことをつぶやくが思いにふけるわけにはいかず、健は再び走り出す。

町に近づくと、一人の女性が逃げているのが確認できた。

女性は足がもつれてしまったようで転んでしまった。

後ろから海賊が下卑な笑みを浮かべている。

健は女性を助けて死んだ。そして新しい生を得てまた女性が困っている。

「女を助けるのに縁でもあるのか俺は」

つぶやく訳でもなく思ったことを口にしながら海賊を蹴り飛ばした。

「げふぅ!?」

奇声を上げながら男は転がって行った。

健は左膝をついて女性と目線を合わせる。

「えっと、大丈夫ですか?」

「は、はい……」

「あっ、大丈夫ですよ何もしませんから。手を出すのも互いのご―」

「てめぇ! なにしやがる!」

蹴り飛ばされた男が殺気立ちながら健に近づく。

「…………なにって彼女を助けただけですけど?」

「お前、俺がリベリー海賊団のモンって知ったうえでやってんのか?」

「知らん」

先ほどこの世界にやってきたばかりである為知るわけがない。

「て、てめぇ……死にやがれ!」

男は銃を健に向かって発砲した。

健は槍を前に持ってきて素早く回転させる。

弾丸は回転している槍に当たって弾かれた。

「な、なんだと」

「次はこっちから行くぞ」

槍を両手に持ち、瞬時に近づく。

身体能力が上がっている恩恵だろう、海賊は反応できずにいた。

「えっ……」

男が理解できたのは自信が刺された時だった。

「悪いな」

男が最後に聞いた言葉は短く簡潔だった。




彼女は突然現れた人物に驚いていた。

槍を回して弾丸を弾き、素早く海賊に近づき一突きで命を奪う。

彼なら町を救えるかもしれないと思った。

槍を引き抜き、血を落としている健に彼女は声をかけた。

「あ、あの」

「はい?」

「こ、この町に凄い多くの海賊が来ていて、それで……」

「ああ、大丈夫ですよ、今から助けますから、あなたは隠れていてください」

「は、はい」

そういわれて彼女は近くの建物に隠れた。

「さて、行きますか」




「くっ、ここまでとは……」

「がはははは! どうした海軍さんよ、この程度か?」

アルストレイ中将はピンチだった。

彼は実力もある人物だったが、対する相手がここ最近力をつけている剛腕のリベリー一味だった。

リベリーはしっかりと見聞色の覇気を使いこなしており、またその名にふさわしい攻撃スタイルをする。

アルストレイも覇気を使うことができるが、見聞色は使えない。さらに戦闘スタイルが主に近接戦闘である為読まれてしまうのだった。

「一億五千万は伊達じゃないか……」

「当然だ。その額に相応しい生き方をして来たつもりだぜ?」

「こんな風に町を襲ってか?」

「海賊だからな、当然だ。それ以外に何をするんだ?」

「くっ……」

アルストレイは悔しかった。海軍では若い年齢で中将になった。しかし、いざというときには傷つき、敗北しようとしている。それが悔しくてならなかった。

「じゃあな海軍さんよ!」

リベリーは手に持っている鉄の棒をアルストレイに振り下ろした。

鈍い音が地面へと当たる。

しかしそこにアルストレイはいなかった。

「あぁん?」

「危なかった……」

リベリーは声のする方を見ると、アルストレイが一人の男に助けられている所だった。

「大丈夫ですか?」

「あ、ああ、私は平気だ」

「よかった。えっとこの町を襲っている海賊の頭を探しているんですけど知りませんか?」

健は生前海軍が嫌いだった。正義正義言うのが嫌いで、結局汚いことをしている奴らだっている。

そんな奴らが大っ嫌いだった。しかし、今はそんなことを言っている場合ではない。

「それは俺のことを言ってんのか?」

「えっ?」

「俺がこの町を襲っている海賊たちの頭、リベリーだ。またの名を剛腕」

「へぇ、あんたが……あんた賞金首?」

「あ? そうだ。一億五千万ベリーの大物よ!」

「……チュートリアルにしては高い気がするが(黄金律のせいか?)」

リベリーには聞こえないようボソッとつぶやく。

「何を言っているかは知らねぇが、いい槍を持ってんじゃねぇか、おい、それよこせ」

「そういわれてよこすバカはいない」

「なら、てめぇを殺してからだ!」

リベリーは鉄の棒を健に向って振り下ろす。

健は後方に飛んで躱す。しかし、

「分かってんだよ!」

「なに!?」

地面を叩いた鉄の棒を素早く持ち上げてリベリー自身近づく。そして躱した健に向って振り上げる。

「ぐっ!」

空中に持ち上げられた健は意識が吹き飛びそうなのを耐え、リベリーに槍を向ける。

「当たるか!」

リベリーは当然回避する。

回避し、素早く空中の健に再び鉄の棒を振り落す。

地面に叩きつけられた健は動かなかった。

「大人しく槍を渡して―ん?」

リベリーは首に温かいものを感じ触れてみた。

「なに!?」

それは自分の首から流れた血だった。深くは無かった為、止血すれば納まる程度だった。

「さっき躱したかと思ったんだがな……まぁいい」

リベリーは槍を回収しようとするが、

「ま、待て!」

アルストレイが止めに入った。

「鬱陶しい、さっさと死ね!」

アルストレイの方を見て、武器を構える。

しかしそれは油断だった。たったそれだけの油断で、

「なに……?」

リベリーは命を落としたのだった。

それは赤い槍。

心臓を容赦なく突き、命を奪った。

「ばか……な」

そしてリベリーは力尽きた。

その場に立っていたのはアルストレイと叩きつけられた背中が痛いと言いながらも立ち上がる健だけであった。

「おい! 頭がやられたぞ!」

「バカな、そんなわけないだろ!」

部下だった者はリベリーが死んでしまったことで混乱が生じていた。

「今だ! 混乱している海賊たちを捕えろ!」

海軍側が息を吹きあえし、海賊たちを捕えていった。

アルストレイは「身体が強化されてるのはいいけど、やっぱりきつい」などと言っている健に近づく。

「君、失礼だが名前は?」

「えっ? ああ、いち―じゃなかった。俺はアスラと言いますたった今賞金稼ぎになりました」

こうして一条健は死に、アスラが生まれた。

これは大航海時代にやってきた一人の転生者の物語。

-3-
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