小説『ハイスクールD×D Dragon×Dark』
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 レーティングゲームをするまでの十日間、俺達は山で修行する事になった。

 学校は良いのかとか、今時山篭りとか思ったが、それよりも何よりも、俺は一人だけ別で移動しなければならないという事が(こた)えた。

 そりゃ、俺は眷属悪魔では無いから魔方陣で移動できないのは仕方ないけどさ、他に手段は無かったのか。
 交通費だけ渡されて頑張れとは、虐めでは無いだろうか?

 まあ、済んだ事は仕方ない。
 それで、俺は今、宿泊所であろう別荘の前で、黒き御手(ダーク・クリエイト)で創り出した椅子に座って待っていた。

 ちなみに、別荘は魔力で周囲に擬態していたが、俺は魔力を感知できるので余裕で発見できたが鍵がないのでは入れなかった。




 別荘に着いてから待つ事1時間。ようやく皆がやって来た。

「遅いですよ、部長。いえ、この様子を見るとイッセーが原因ですか」
 目の前には普通の人間が持てる量を越えた量の荷物を持っているイッセーの姿。全身汗まみれな姿が彼のここまでの苦労が伺える。

「朧君、もう着いてたの?」
「ええ、一時間程前に」
「大分待たせてしまったわね。今開けるわ」


 皆はジャージ(俺は持ってきてない)に着替えてから集合し、修行する事になった。


 まずは木場とイッセーの訓練の見学をする。

 イッセーは木刀を力一杯に振り回すも、木場には(かす)りもせずに避けられ、木刀を叩き落される。

「そうじゃないよ。剣の動きを見るだけじゃなく、視野を広げて相手と周囲も見るんだ」
 木場はそう言うが、イッセーは上手く出来ないようなので少しアドバイスをする事にした。

「剣を振るためには腕を動かす必要がある。そして、腕が動くのは縦か横か斜め。その延長線上に立たなければ大抵の場合は避けられるし、剣を置けば防ぐ事ができる。後、剣をそんなに力一杯に振ってどうする。剣は鈍器じゃないんだ。力を入れ過ぎると振る速度は却って遅くなる。剣は力で叩き切る物だけど、速さも必要なんだよ。力は程々に、要所だけに入れておけ」

 まあ、長ったらしく言ったが、イッセーの動きは余り良くはならなかった。
 こういうのは一夕一朝で出来るものでは無いので、続けるしかないだろう。継続は力なりだ。



 次はイッセーと代わって、俺が木場と手合わせをする事になった。

 しかしまぁ、木場の速い事速い事。
 『騎士(ナイト)』の特徴がスピードとは言え、見失わない様にするのは面倒である。

「っと!」
 死角から振り抜かれる木刀を間一髪で受け止める。
 直ぐ様反撃に一太刀を振るうが、それはアッサリと躱される。
「面倒っ!」

 普段の俺はこういった相手には辺り一帯を薙ぎ払う様な攻撃するから、木刀だと戦い難い事この上ない。
 イライラして太刀筋が鈍るのでより一層攻撃が当たらなくなり、悪循環に(おちい)る。

 結局、一撃も与えられずに、木場との手合わせは終了した。



 次に小猫と軽く組手をする事になった。

「フッ!」
「っと……」

 軽い気合の声と共に放たれた拳打を何とか躱す。

 俺は基本的に武器を使って戦うので徒手格闘はあまり得意でないのだが、一芸に秀でる者は(俺は別に一芸に秀でている訳ではないが)何とやらで付いていってる。

(まあ、白音……では無く小猫は姉とは違って格闘型なのね。しかも、仙術は使わないようだし……まあ、教育に悪い姉が居たから仕方ないと言えばそうなのだが……)

 などと考え事をしていたら(さば)き損なって拳が正中線にめり込んだ。
「……タイム、少し待って……」
「……はい」

 当たり所が悪かった(小猫に取っては良かった)ので、しばらくの間悶絶しそうになるのを抑える。
 その間、小猫と少し話をした。

 小猫の格闘技は結構な腕前(悪魔と人間の違いを除けばプロ一歩手前と言った位)なので、普段は余り組手をする人が居ないのだとか。
 木場は得物が剣なので組手をするのには余り適していないし、部長や姫島先輩は魔力を使って戦うので肉弾戦は得意で無い。
 よって、俺の様な奴が居るのは有り難いとの事。

 組手が終わった後、次はイッセーの相手をするとの事だった。
 今のイッセーでは動くサンドバックにしかならないだろうなーと思いながら、その背中を見送った。



「こここ、これは修行って言わねー!」
 俺は全力で逃げていた。何から?それは――

「ふふふ、待ってくださーい」
 S全開で追ってくる姫島朱乃先輩からですが?

 炎や雷が乱舞する中を駆け抜ける。ずっと逃げ回るのが修行なのだとか。

(そんな修行があって(たま)るか!)

 正確には、逃げる俺に姫島先輩が攻撃を当てる修行なのだが、その時の俺はそんな事知りもしなかった。



 しかし、因果というのは巡る物である。

「つまりだイッセー。俺もお前に同じ事をする」
「話が見えないんだけど?」
「俺は神器(セイクリッド・ギア)有りでお前を攻撃する。お前はそれを避ける。オーケー?」
「ああ!」
「ふふ、その威勢、どこまで持つかな?」
 俺は黒い球体を無数に創り出す。

「さあ、ストレス解消の始まりだ!頑張って逃げ惑え!」
 俺は球体をイッセーに投げつける。
 イッセーはそれを何とか避け続ける。

「よーし、どんどんペース上げてくぞー!お前も逃げまくれー!」
「お、おう!」


 一日目はこんな風だった。

 他にも、食事には牡丹肉が出たり、青春してたり、風呂の事で色々あった。
 それと、イッセー達に夜の部があったそうだが、俺は悪魔ほど夜目が効かないので非参加だった。


 二日目の朝からは悪魔や天使、堕天使についての勉強。俺は一応参加はしたが、大抵聞き流した。

 アーシアは未だに聖書を読んでいるそうだが、その度に頭痛がするので読めないでいる。

(俺の神器で創り出した眼鏡等を使えば聖書も読めなくは無いが……その際俺が創った物を持ってなきゃ消えるからなぁ……)
 その光景を思い浮かべるとシュールなので、この事は誰にも言わないでおこう。


 その後は個人練習よりも、連携や攻防のバリエーションの訓練。俺は仮想敵に徹した。


 そしてある日、部長は練習を始める前に、イッセーに赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を使う様に指示した。
 山に入ってから一度も使用されていなかった赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を使用し、木場と戦うらしい。

 赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)が発動してから二分。イッセーの力はかなり強大になっていた。

 それでも相変わらず木場の動きについて行けないイッセーだが、木場の攻撃を何とかガードする。
 木場は今の一撃でイッセーを打ち倒す気でいた様で、戦闘中にも拘らず、驚きを見せていた。
 
 イッセーはその隙に拳を放つも木場にはあっさりと躱される。
 木場は上から落下の勢いを付けてイッセーの頭部を打つ。

 思い切り攻撃を受けたイッセーだったが、あまり効いていないようで、すぐに反撃するも、再び回避される。

「イッセー!魔力の一撃を撃ってみなさい!魔力の塊を出すとき、自分が一番イメージしやすい形で撃つの!」

 部長の指示に従い、イッセーは米粒程の大きさの魔力の塊を作り出し、木場へ投げつける。
 それはイッセーの手から離れた瞬間に巨大化した。恐らく、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の力によるものだろう。

 その一撃は木場に躱され、隣の山にぶつかり、吹き飛ばす。
「たーまやー」

『Reset』
 その音声と共に、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)によって倍加されていた力が元に戻る。

「そこまでよ。分かった、イッセー。赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を使っていないあなたは確かに弱いわ。けど、その力を使ったあなたは、強さの次元が違う」
 そこで部長は、吹き飛んだ山を指す。
(今更だが……人とか動物は居なかったよな?)
 そんな事を考えたら精神衛生的に悪いので気づかないフリをして忘れる事にした。

「あの山を消し飛ばした一撃は上級悪魔クラス。あれが当たれば大抵の相手は消し飛ばせるわ。基礎を鍛えたあなたは倍加した力を受け止める器になった。あなたは基礎を鍛えていけば最強になっていくの。そして、あなたはゲームの要。イッセーの攻撃力が状況を左右するわ。力の倍加中は私達がフォローするわ。そうすれば、私達は強くなる。勝てるわ!」
 部長は強い調子で言い切る。


「あなたをバカにした者に見せつけてやりましょう。相手がフェニックスだろうと関係ないわ。リアス・グレモリーとその眷属悪魔がどれだけ強いのか、彼らに思い知らせてやるのよ!」
『はい!』
 全員(俺を除く)が力強く返事をした。



 その後、山篭り修行は順調に進み、無事に終わりを迎える。


 そしてついに、決戦当日がやって来た。

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