小説『ハイスクールD×D Dragon×Dark』
作者:()

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 深夜11時40分頃。
 オカルト研究会の部員は、いつもの部室に集まっていた。

 アーシアがシスターの服を着ている事を除けば、他の皆は基本的には学生服で、木場は手甲と脛当を、小猫はオープンフィンガーグローブをつけていた。それと――

「朧、その格好……」
「やっぱり物々しいか?」

 朧は学生服こそ着ているが、その上に外套(コート)を羽織り、脛まで覆うブーツを()いていた。
 そして何より異様だったのは、それが真っ黒な事だ。
 深夜である今、悪魔でなかったら見落としてしまう格好を、朧はしていた。

「ちなみに、これは黒き御手(ダーク・クリエイト)で創ってある」
「すげえな……」
 ちなみに、制作時間は20分程である。



「皆さん、準備はお済みになりましたか?開始10分前です」
 部室の魔方陣から現れたグレイフィアさんがそう言うと、皆立ち上がる。

 それを確認したグレイフィアさんは説明を始めた。
「開始時間になりましたら、ここの魔方陣から戦闘用に作られた異世界に移動します。そこは使い捨ての空間なので、何をしても構いません」

 異世界に空間を作る悪魔の技術力に感心していると、イッセーが部長へ質問をした。
「あの、部長。部長にはもう一人『僧侶(ビショップ)』が居るんですよね?その人は参加しないんですか?」
 その質問に部室の空気が変わる。聞かれたく無い事を聞かれてしまったかの様に。

「残念だけど、もう一人の『僧侶』は参加できないわ。この事についてはいずれ話す時が来るでしょうけど」
 部長はイッセーと目を合わせずにそう言った。
 イッセーもそれ以上の追求はしなかった。

「今回の『レーティングゲーム』ですが、両家の皆様も他の場所から中継で今回のゲームの戦闘をご覧になります。更に、魔王ルシファー様も今回のゲームを拝見されております。それをお忘れなきように」
 魔王ルシファー……今回の事が起こった原因でもあるからな。よっぽどの事がない限り見るのは当然だろう。

「そう……お兄様が直接見られるのね」
「部長……今、魔王様の事をお兄様と言いましたか?」
「そうだよ。部長のお兄様は魔王様だ」
 イッセーが恐る恐る質問すると、それに木場が答えた。


 その事にイッセーが驚き、そこから魔王の話から悪魔が三すくみの中で一番弱い事(天使に負けるのは兎も角、堕天使にまで劣っているとは思わなかった)を話していると、すぐに時間が来た。

「そろそろ時間です。皆様、魔方陣の方へ」
 その指示に従い皆が魔方陣へ集まる。
「なお、一度あちらへ移動すると魔方陣での転移はゲーム終了まで不可能になります」

 その言葉を最後に魔方陣が発光し、転移が始まった。


 転移した先は先程居た場所と全く同じ外観をしていた。
(これが悪魔の技術力か。なる程、これは中々……)
 作られた空間に感心していると、アナウンスが聞こえてきた。

『皆様。今回の「レーティングゲーム」の審判(アービター)役を担う事になりました、グレモリー家の使用人、グレイフィアでございます』

 聞こえてきたのはグレイフィアさんの声だ。

『今回のバトルフィールドはリアス様とライザー様のご意見を参考にし、リアス様の通う「駒王学園」のレプリカを異空間に用意しました』

 外を見ると、空は先程までの夜空ではなく白い空だった。

『両陣営の転送された先が「本陣」になっており、リアス様の「本陣」が旧校舎のオカルト研究会の部室。ライザー様の「本陣」は新校舎の生徒会室。「兵士(ポーン)」の方は「プロモーション」する際は相手の本陣まで(おもむ)いてください』
(なる程、今生徒会室に攻撃すれば一気に倒せると)
 そんな事を考えていると、姫島先輩から通信機を配られる。ゲーム中はこれを使って連絡を取るらしい。

『開始のお時間となりました。なお、この時間の制限時間は人間界の夜明けまで。――申し忘れていました。今回、ゲストとして参加されている黒縫朧様のランクは「騎士(ナイト)」とさせていただきます』
(まあ、その配置なら駒は空いてるし、特別な役割も無いし、妥当な所だな)

『それでは、ゲームスタートです』
 学校のチャイムが鳴り響き、『レーティングゲーム』が開始された。





「じゃ、先制攻撃で一発撃ち込んできます」
「待ちなさい。勝手な事しないで」
「……了解」

 確かに勝手な行動は慎むべきだと判断した俺は、指示があるまで待機している事にした。


 部長の指示に従い、森の中にいくつかキルトラップを仕掛けた後、木場と一緒に運動場へ。イッセー達は途中で体育館に寄って何かするそうだが、詳しくは聞いていない。


「朧君、来たよ」
「そうか」

 しばらく走っていると、前方から敵の接近を確認したので立ち止まって臨戦態勢を取る。
 先程から展開していた黒き御手(ダーク・クリエイト)で一振りの剣を創り出す。木場も自身の剣を鞘から抜き放つ。

 前方からやって来た敵を確認すると、俺達二人は敵目がけて突撃した。


「これで、終わりっと」
「こっちも終わったよ」

 俺と木場は三人の敵を無傷で倒した。内訳は俺が一人、木場が二人だ。
 人数が倍違うのに倒した時間が同じだったのは、俺が最初の方、様子見がてら遊んでいたのが理由だ。まあ、すぐにつまらなかったのでピチュンしたが。


「戦ってる最中にアナウンスが合ったな。木場、聞いてたか?」
「うん。相手の『兵士(ポーン)』三人と『戦車(ルーク)』一人、それと、こっちの『戦車』が一人脱落した」
「『戦車』……小猫がやられたか」
「そうみたいだ」

 木場は表面上は取り繕っているが、内心穏やかでは無いな。

「となると、今イッセーは一人の可能性がある。早く合流しよう」
 イッセーを一人にするとすぐにやられそうだ。
「そうだね」



 体育館の側でイッセーを見つけ、木場とイッセーが何やら話す。
 その間に俺は運動場を探る。

(居るのは三人……ランクは『騎士(ナイト)』『僧侶(ビショップ)』『戦車』が一人ずつか……)
 ランクは感だが、人数に間違いはないだろう。感といってもオーラや魔力で能力は大体は分かるし、部長にもらった資料から顔とランクは一致させている。多分合っているだろう。


「で、どうするイッセー、木場。一人一殺で仕留めに行く?」
 そう聞いた時、グラウンドから大声が聞こえてきた。

「私はライザー様に仕える『騎士』カーラマイン!リアス・グレモリーの『騎士』よ、いざ尋常に剣を交えようではないか!」

 それを聞いて木場の闘士に火が付いたのか、立ち上がるとグラウンドに真正面から歩いて行く。
 俺とイッセーもそれに着いて行く。

(全く、剣士の矜持というものか……俺には理解できないな)
 でも、少し格好良いと思った。


「リアス・グレモリー様の眷属、『騎士』木場祐斗」
「俺は『兵士』の兵藤一誠だ!」
「オカルト研究会所属、『騎士』(仮)(かっこかり)黒縫朧」

 正々堂々は俺の趣味では無いのだが……こいつらが言った以上、俺も言わねばならないし……KY(空気読めない)とは言われたくないし。

 そんな事思っていたら木場とカーラマインが戦い始めた。

「全く……剣バカ同士は泥臭くてたまりませんわ。カーラマインったら、『兵士』を『犠牲(サクリファイス)』する時も渋い顔をしてらしたし……主である『(キング)』の戦略がお嫌いなのかしら?」

 『犠牲』……先程の『兵士』を使って俺達の実力を計っていたのか?

「勝てればよっぽどでない限り手段なんて気にしなくても良いよな。『犠牲』といっても死ぬ訳でもあるまいし……」
「ですわよね。個人での戦いならまだしも、団体戦ではそういうのは我慢して欲しいですわよね」
「だよな。集団戦では意思の統一が大事なのに……って誰?」

 つい流れで話していたが、隣に誰かが居る事に今気づいた。
 居るのはお姫様のようなドレスを着た少女と仮面の女性。
 お姫様が『僧侶』で仮面の人が『戦車』だったかな?

「っ!赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)、スタンバイ!」
Boost(ブースト)!』
 イッセーが神器(セイクリッド・ギア)を出して構えるも、お姫様は嘆息するだけだった。

「私は戦いませんわよ。イザベラ、あなたがお相手してあげたら?」
 お姫様と変わって仮面の女性が前に出る。

「元よりそのつもり。と言っても二対一では流石に分が悪いか」
「だったら俺は下がっていよう。俺は本来オマケだしな。イッセー、頑張れよ。お前の強さ、ここらでしっかり見せつけてやれ」
「……ああ、分かった。けど、そこの『僧侶』さんは本当に戦わ(バトら)ないのか?」
「彼女――いや、あの方はレイヴェル・フェニックス。特別な方法で眷属にされているが、実の妹君だよ」

 理由はハーレムに妹を入れたかったからだそうだ。
 それを聞いた俺の心は不死鳥の如く燃え盛る!

「許せん!シスコンの端くれとしてはその行為、許してはおけぬわ!あの腐れ焼き鳥め……全身全霊全力全開でぶん殴ってやる!」
(愛があればまだしも形だけだと!殺しても殺し足りぬわ……!ま、不死なんだから一万回程殺しても問題ないよね?)

 その後に聞いたことだが、内心でそんな事を考えていた時の俺はケタケタと不気味に笑っていて相当に怖かったそうだ。

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