小説『ハイスクールD×D Dragon×Dark』
作者:()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

 今日の部活は旧校舎の清掃のため、一誠の家で行われる。

「という訳で、今日はお前をイッセーの所へ連れて行く」
 他のオカ研のメンバーが学校から直接向かった中、一度家に戻った朧は家で掃除をしていた女性へ向けてそう言い放った。
「待ってください!まだ心の準備が!」
「問答無用」
嫌がる女性の襟首をつかんで引きずる。
「せ、せめて服を着替えさせてください!この服じゃ……!」
「この方が面白そうなので却下」
「この人でなし!」
「俺は人間だってば」
 嫌がる声に耳を貸さず、朧は女性を連れて一誠の家へ向かった。



 イッセーの家へ着いた俺は呼び鈴(チャイム)を鳴らす。すると、イッセーの母親らしき人が出て来た。
「どちら様かしら?」
「あ、私一誠君と同じオカルト研究会に所属している黒縫朧と申します。こっちの人は気にしないでください」
「あら、ご丁寧にどうも。イッセーの所へ案内するわね」
 自分で言っといてなんだが、本当に気にされていなかった。それでいいのか兵藤母よ。


「イッセー、お友達が来たわよ。黒縫くん」
「遅くなりました……――って空気重っ」
 部屋の中には重い空気がどんよりと漂っていた。原因は木場から殺気が(にじ)みだしているせい。
「よ、よう朧!遅かったな」
「ああ、こいつを連れて来たからな」
 扉の向こうに隠れているこいつをイッセー達の眼前に(さら)した。
「れ、レイナーレか……?」
「はい……」
 そう、俺が今日連れてきたのは少し前に騒ぎを起こしたレイナーレだった。その彼女を見たイッセー達は木場も含めて全員が呆然としている。しかし、その原因はレイナーレそのものにあるのではなかった。
 そんな面々の中で一番早く冷静さを取り戻した部長が代表して皆が抱いているだろう疑問を尋ねてきた。

「ねえ朧、何でレイナーレはメイド服を着ているの?」
「家にそれしかレイナーレに合う服が無かったんです」
 俺とレイナーレでは身長が頭一つ分は違うし、それ以前に性別が違うため体型からしてかなり違うので(特に胸部)、俺の服をレイナーレは着れなかった。
『何故それだけあったんだ……?』
 オカルト研究会の全員は当然の質問をしてきたが、それに朧は答えなかった。



「この前は本当にごめんなさい!」

 場所は変わってイッセーの部屋。レイナーレはそこでイッセーとアーシアに向かって土下座をしていた。

「謝って許される事じゃないのは分かってます。だって私は二人の命を奪ってしまったんですから……。けど、ごめんなさい!」
 一度頭を上げたと思ったらもう一度頭を床に埋れとばかりに下げた。
 それを見たアーシアはオロオロとして頭を上げてくださいと言うが、レイナーレは決して上げようとはしなかった。イッセーは頭を下げ続けるレイナーレをしばらく黙って見ていたが、やがてゆっくりと口を開いた。
「頭を上げてくれ」
 先程までアーシアにその言葉を言われても顔を上げなかったレイナーレだが、イッセーの言葉にはゆっくりとだが顔を上げた。
「お前が反省しているのはよく分かった。それで、お前は俺達にどうして欲しいんだ?」
「私はあなた達に何かをしてもらおうとも、()して許してもらおうとも思ってないです」
「だったら何で謝るんだ?」
「……私はあなた達の命を奪いました。それは悪魔に転生することで取り戻されましたけど、本来なら命はたった一つ。それはほぼ全ての種族に共通する事です。そんな大事な命を奪っておいて、その相手に望む事はありません。もしあるとすれば――」
 レイナーレは伏し目がちにしていた目をイッセーに真っ直ぐ向けて言った。
「せめて、二度目の人生は幸せになってください」

 その言葉を最後にレイナーレはその場を去った。

「ねえ、あなた一体彼女に何したの?まるっきり別人じゃない」
 同伴していた部長が俺に尋ねてきたが、それは俺も知らなかった。むしろ俺も知りたい。
「さて、何をしたんでしょうかね?」
 俺は部長をはぐらかしてイッセーとアーシアに声をかけた。
「さて、それじゃあ俺もお(いとま)するけど、レイナーレに伝えたい事はあるか?」
「あ、それじゃあ……」
 アーシアがおずおずと言った。
「今度は一緒にお茶をしましょうと、伝えてください」
「了解。イッセーは?」
 イッセーは長々と考えてから、一言だけ言った。
「また、遊びに来ても良いって伝えてくれ」
「分かった。――ありがとうな、イッセー、アーシア」

 最後に言った言葉の返答を聞く前に、俺はイッセーの部屋を出た。





 その後、兵藤家の玄関のすぐ外で立っていたレイナーレに先程の事を伝えると、レイナーレは泣き崩れてしまった。

(あの、ここ公道なんで、泣かれると俺の立場とか名誉が危ないんですけど……)

-18-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




「ハイスクールD×D」リアス・グレモリー 抱き枕カバー(スムースニット&セベリスライクラ本体改)セット
新品 \0
中古 \
(参考価格:\)