小説『ハイスクールD×D Dragon×Dark』
作者:()

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 その後、イリナは五本のエクスカリバーと、俺が支払ったファミレスの請求書(レシート)を持って――無論、教会本部に支払わせるため。誰も奢るとは言ってない――教会に帰った。
 ゼノヴィアは神の不在を知ったことで教会を追放され、やぶれかぶれで悪魔に転生した。部長は二人目の騎士(ナイト)が手に入ってホクホク顔だったが、俺としては正直大変申し訳なくて深々と謝ったが、気にしなくていいと言われた。ところで悪魔が聖剣使って大丈夫なんだろうか?
 ヴァーリも暗殺と捜索を終えて正式に『禍の団(カオス・ブリゲード)』に迎え入れられた。

「そんな順風満帆な俺の前に、どうして現れた? 堕天使総督アザゼル」
 目の前の椅子に座っているのは黒髪の悪そうな容貌(ようぼう)をした男。
「コカビエルから丸くなったって聞いたからな。会談ついでに、ちょっと様子を見に来たんだよ」
「俺たちそんな仲じゃないですよね? それに、何故俺の家の場所を知っている?」
「そりゃ、俺は堕天使総督だからな。多少は情報を知っているさ」
「赤龍帝にもちょっかい出してたようですが……あれはグレモリーの眷属ですよ? あなたが下手に手を出せば戦争になってもおかしくはないのですけど?」
「ちょっかいっていっても一緒にゲームしたりパン買って来てもらっただけだぜ? その程度じゃ戦争は起こらねえよ」
「悪魔を何に使っているんですか……」
 目の前で大らかに笑う男は、とても堕天使の総督には見えなかった。
「単なるおっさんにしか見えないよなぁ……」
「聞こえてるぞ」
 そりゃそうだ。聞こえるように言ったからな。

「聞くところによると、さっきの話に出てた会談で、和平を結ぶそうですね」
「……お前、そういう話をどっから仕入れて来るんだ?」
 アザゼルの疑問も(もっと)もだ。普通の人間だからな、体面的には。
「風の噂です。それで、結ぶんですか? 戦争するんですか?」
「その二択はおかしいだろ。まあ、和平を提案する気ではあるな」
「三大勢力内信用率ワースト一位のアザゼルが言うと、裏があるように感じるな……。人をうまく騙す詐術でも教えましょうか?」
「余計なお世話だ」

「ところでよ……あの姉ちゃん一体何よ?」
「ん? ……ああ」
 アザゼルが親指で指したのは物陰に隠れているメイド服の女性――レイナーレだった。
「あの姉ちゃんなんだ? お前のコレか?」
 アザゼルは小指を立てて訊いてくる。
「死ね、腐れ堕天使」
 ムカついたので黒槍を投げたが、あっさりと避けられた。マジ死ねばいいのに。
「……あなたのファンですよ。しかもかなり熱狂的な」
 人間でいえば犯罪を起こすほどの。
(でも、これ単なるエロオヤジだよな……)
 ちょっとレイナーレが不憫になってきた。

 レイナーレがここに来るに至った経緯を簡単に説明すると、アザゼルは重々しく頷いたきり黙り込んだ。
「……それで、あなた、本当は何しに来たのですか?」
「何って……さっき言っただろ?」
「俺が丸くなったって言ったコカビエルは、俺の手によって致命的な怪我を負って、地獄の最下層(コキュートス)で冷凍保存されたんでしょう?」
「……耳が早いな」
「風の噂ですよ。これもね」
「随分と便利な風の噂だな」
「ええ、本当に」
「俺は何も変わってませんよ。人間がそう簡単に変われるはずもなく、俺はあの時から全く成長もしていない。――俺は今も、弱いままだ」
「コカビエルを倒したのにか?」
「あんなのはただの不意討ちです。俺は今も昔も、神器(セイクリッド・ギア)の力に頼りきりです」
神器(セイクリッド・ギア)はお前の一部だ。分けて考えることでもないだろ?」
「だとしても、何も変わらず弱いままです。昔も今も、たった一人も守れない、か弱い人間です」
「そうか……」
 それを聞いたアザゼルはしばらく黙りこみ、そして静かに立ち去った。



「あの……」
 先ほどまで物陰に隠れていたレイナーレがおずおずと話しかけてくる。
「なんだレイナーレ。まだ居たのか?」
 それに朧が少し意外そうな顔をして答える。
「え……?」
「アザゼルについて行かなかったのか? 憧れの人だろ?」
「そうですけど……」
 レイナーレは歯切れが悪そうに口ごもる。
「……あなたの事が、放っておけないんです」
「は……?」
 この女、何を言ってるんだ?
「どういう事?」
「状況的にも心理的にも、今のあなたを一人にすることは(まか)りなりません!」
「えっと……」
 この状態になってからレイナーレはあんまり強く物を言うことが無かったので、朧は少し驚いていた。
「大体、あなたの生活水準は低すぎるんです! 私が来る前は(ろく)な食事をしていませんでしたよね!? そんな人を一人で生活させる事なんてできません!」
「……お前、堕天使のはずだよね?」
「それがどうかしましたか?」
 レイナーレは可愛らしく小首を傾げた。
(堕天使が世話を焼くのは、果たして普通なのだろうか?)
「……まあ、好きにすればいいんじゃない」
「はい、好きにします」

 朧は、少し前までと打って変わったレイナーレの(したた)かさに、ため息を吐くのであった。

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