小説『ハイスクールD×D Dragon×Dark』
作者:()

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 今日は授業参観日である。
 魔王が二人も来る授業参観日である。

 それはさておき、親というものがいなくなって久しい俺にとって、授業参観は知らない人が後ろに並んでいる日という認識なのだが……。
(何故か二人ほど見知った顔がいるんですけど。外の木には一匹の黒猫がいて、一年生のとある教室を見ているのですけど)
 ちなみに黒猫は言うまでもなく黒歌で、見知った二つの顔の片方はレイナーレである。
 黒いスーツ――おそらく適当に渡した娯楽費用で買ったのだろう――に身を包み、変装のためか黒縁の眼鏡をかけている。高校の授業参観にいると少々若すぎる外見――実年齢は不明だが、見た目通りではないだろう――だが、姉と言えば通りそうなのでこちらはいいだろう。
 問題はもう片方だ。
 長い黒髪。眠たそうな(まなこ)。TPOに合っていないゴシックロリータ風のドレス。その女性の正体とは!?
(なんでオーフィスがいるんだ!?)
 『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』ことオーフィスさん(見た目年齢17歳ほど)でした。
 言うまでもないが、オーフィスに授業参観のことを伝えてない。何故知っている。
(レイナーレ! どういう事か分かるか!?)
 目に見えないほど細く絞って創った糸電話で、レイナーレと内緒話を行う。ちなみにレイナーレとオーフィスは面識がある。
(すいません! 今日出かける時にオーフィスさんが来て、話をしたらついて来ちゃいました!)
(ついて来ちゃいましたじゃねー! 魔王いるんだぞ、魔王! 下手すりゃ校舎が吹き飛ぶ!)
 魔王やら龍神は鼻歌混じりに校舎ぐらい更地にできる。
(一応気配を遮断する魔法具を渡してますけど……)
 その魔法具は知り合いのドワーフさんが作った一品であるが、龍神のオーラを隠しきれるとは思えなかった。せめて強いドラゴン程度に思われれば吉!
(レイナーレ。絶対にオーフィスと魔王を合わせるなよ。後イッセーもだ。本人は気が付かなくても赤龍帝(ドライグ)は気づく!)
(分かりました! 命に()けてでも!)
(本当に頼む!)
 オーフィスってば「今のはメラゾーマでは無い……メラだ」とか普通にできるのに、加減適当にオーラ飛ばすから、周りに何かある場所で戦闘なんてやらせられないんだよ! 下手すれば流れ弾でレイナーレくらいなら死ねる!
(全く、この学校は混沌(カオス)過ぎる……)
 魔王と龍神と堕天使が集まる高校とか、世界のどこ探してもないだろう。


 木場が後ろを気にしているのはさておき、授業参観されるのは古典なのです。今の時代何に使うのかと思わなくもない、古典なのです。古典のはずだった。
「今日は君たちに殺し合いをして――」
「テンパるな」
 教師にどこからか飛んできた黒いチョークが命中する。はて、一体誰の仕業だろう?
 正気に戻った教師が再び口を開いた。手に直方体を持ちながら。
「今日は粘土で何かを作ってもらいます。そういう古典もある」
(((ねーよ!)))
 今クラスの心が一つになった気がする。こんな授業が他にあるはずない。
(さて、一体何を作ったものだろうか?)
 クラスを(うかが)ってみると、隣の奴がいきなり立ち上がった。
「先生! できた!」
「早いな木之上(きのうえ)。一体何を作ったんだ?」
「豆腐!」
 そう言った奴の机の上には白い直方形……って、変化してない?
「おいおい、ちゃんと作れよ木之上」
「違えよ先生! よく見てくれよ!」
 いや、よく見ても豆腐は豆腐……――はっ!
「かつおぶしと醤油まで再現されているだと!?」
 しかもかつおぶしは踊っている! 粘土でどうやって再現したんだ!?
「おお……私は生徒の才能を目覚めさせてしまったようだ……」
 先生が戦慄した。無理もない。俺も鳥肌が立った。
(まあ、それはそれとして。俺は1/10スケールのオーフィス(幼女版)でも作るか。これぞまさにねんど○いど)
 学校だと着色まではできんけどな。



 昼休みに昼食も食わず、レイナーレとオーフィスを誰にも気づかれ無いように屋上に連れて行く。
「オーフィス、どうして来たんだ?」
「我、最近退屈」
「暇だったからといって、ここには来ないでくれ……頼むから」
 冗談抜きで死ぬ程気をすり減らす。
「だったら、朧から来る」
「週三で寄ってるじゃないか」
「その倍来て」
「無茶言うな」
 ただでさえ接触を制限されてるってのに。
「今日のところはもう帰るぞ」
 この際早退しよう。
「……分かった」
 今は俺よりも少しだけ背の低いオーフィスの頭を撫でると、オーフィスは渋々と頷いてくれた。

 そのまま二人を(ともな)って階段を下りていくと、何やら人だかりができていた。
「何だ?……うわっ、魔王だ」
 人だかりの中心は魔法少女の格好をした魔王レヴィアタンだった。ある意味で世も末である。
「反対側からも魔王が来てるし……」
 正に前門の虎、後門の狼である。

 普通に階段を下りたら遭遇せず、そのまま家に帰れたので何の問題も無かったが。

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