小説『ハイスクールD×D Dragon×Dark』
作者:()

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(いて)て……。全く、世界を変えるなんざ、三流悪役のすることだってのに、よくやるぜ」
 地面に落ちたアザゼルは、服についた土埃を払いながら起き上がる。
「黙りなさい、堕天使総督。神器(セイクリッド・ギア)ばかりにうつつを抜かすあなたに言われたくはありません」
「耳が痛えな。ヴァーリ、この状況で反旗か」
「悪いなアザゼル。こっちに付いた方が面白そうだったんだ」
「……お前はそういう奴だからな。いつかはこうなるんじゃないかとは思ってたよ」
 そう言うアザゼルは、余人には分からないほどだが、悲しそうな顔をした。
「世界変革の第一歩として、堕天使の総督であるあなたを滅ぼす!」
 アザゼルは愉快そうに笑って懐から短剣のような物を取り出した。
「それは――」
「俺は神器(セイクリッド・ギア)マニア過ぎてな。自分で製作したりする事もある。これはその内の一つであり、俺が作った神器(セイクリッド・ギア)の中で一番の傑作だ」
「新世界では神器(セイクリッド・ギア)なんてものは決して作らない。そんな物がなくても、世界は十分に機能します」
「それを聞いて、ますますお前たちの邪魔をしたくなった。俺の楽しみを奪うものは、消えてなくなれ」
 アザゼルが持つ短剣がいくつものパーツに分かれ、強い光を発する。
禁手化(バランス・ブレイク)……!」
 辺りを一瞬の閃光が包み、それが消え去った後には、アザゼルが龍を模した黄金の鎧を着けて立っていた。
「俺の傑作人工神器(セイクリッド・ギア)堕天龍の閃光槍(ダウン・フォール・ドラゴン・スピア)』、その擬似的な禁手(バランス・ブレイカー)状態『堕天龍の鎧(ダウン・フォール・ドラゴン・アナザー・アーマー)』だ」
 アザゼルがそう言うと、黄金の鎧の背中に漆黒の十二枚の翼が展開される。
 カテレアはその圧倒的なオーラに気圧されながらも、全身を青黒い魔力で覆う。
「私は偉大なる真なるレヴィアタンの血を引く者、カテレア・レヴィアタン! 忌々しい堕天使などには負けはしない!」
「来いよ」
 カテレアに短い一言で答え、光の槍を持っていない手で手招きをする。
 カテレアがアザゼルに飛び込んでいき、二人が交錯した瞬間、アザゼルの槍がカテレアの体を切り裂いた。
「ただではやられません!」
 カテレアの左腕が触手のように変わり、アザゼルの左腕に巻き付き、更に全身に自爆用の紋様が浮かび上がる。
「アザゼル! この状態で私を殺せば、あなたもの死ぬように強力な呪術が発動します!」
「へぇ。それはいい事を聞いた」
 二人と、その戦いを見ていた誰にも気付かれることなくカテレアの背後に回り込んだ朧は、彼女の腹部を素手で貫いた。その手は何かが手の中にあるように握っていた。
「あ、あなたは……」
「くははっ! この時を待ち望んでいたぞ、カテレア」
「まさか、ずっと隙を伺っていたのですか……?」
「隙が無くても殺すつもりだったさ。お前を殺す方法は83通りほど用意していたが、無駄になって何よりだ。後はアザゼルと一緒に死んでくれや」
 カテレアを貫いていた左腕が腹の中ほどで止まり、黒の粒子が集まる。
刃花開放(はなひら)け、黒咲(ブラック・ブルーム)
 カテレアの体を朧の手を中心に剣や槍、その他諸々の刃物が突き出し、カテレアを消滅させた。



「これで一人目……」
 武器の形を無くした黒の粒子が舞い散る中、左腕で優しく握りこんだものに頬ずりする。
「くそっ、危うく死ぬ所だったぜ……」
 黒の粒子が晴れた向こう側に、鎧と左腕を失ったアザゼルが膝を着いており、その側には金色の玉が落ちていた。
「アザゼル……生きてたんですか」
「左腕を切り落とさなきゃ死んでたぜ。あーあ、これどうすんだよ一体」
「ギミック搭載した義手でも着ければいいのでは? お好きでしょう?」
「そうだな……そうすっか」
 アザゼルがそう言うと、朧に光の槍を投げつけた。
「……何をするのですか?」
「はっ、人を殺そうとして何をぬけぬけと言いやがる」
「別に、死のうが死ぬまいが、どちらでも構わなかっただけなんですけどね。昔の怒りをついでで晴らそうかと」
「……堕天使総督の俺の生き死にを、ついでと言われるとは思わなかったぜ」
 この言葉には流石のアザゼルも言葉に唖然とした。
「堕天使への怒りは既に過去のことですからね。今の俺にとっては、大した優先事項では無いです」
「だったら、何でお前は『禍の団(カオス・ブリゲード)』みたいなテロ組織に属してるんだ?」
「言いません。悪役が動機を語るのは、負けフラグですから。でも、所属している訳の一端くらいはお教えしましょうか」
 朧が身を丸めると、背中――ただし右側だけから、三枚の悪魔の翼が出現する。
「……お前、悪魔とのハーフだったのか」
「ええ。これが堕天使嫌いの理由の一つでもあります。――といっても、俺の悪魔の血は薄いので、羽は片側だけ、種族固有の言語能力も中途半端、寿命もどれだけかは定かではないですね。ですが、これはただのオマケですのでお気になさらず。俺の父は悪魔だった。それだけの話です」
 そう締めくくって悪魔の翼をしまう。
「所属してる理由の一端じゃねえのかよ」
「おやおや、敵の言うことを信じるのですか?」
「……お前と会話するのは時間の無駄みてえだな」
 アザゼルは表情を消すと、光の槍を構える。
「それには同意ですね。ですけど、片腕無い状態で俺と戦う気ですか? それよりも、あっちの赤白龍対決でも見ましょうよ。戦いになったら俺は逃げるだけですし」
 それを聞いたアザゼルは、黙って光の槍を決して、赤と白の二天龍の戦いに目を向けた。

 その戦いを要約すると――一誠が胸が半分になる事にキレて、少しの間だが、ヴァーリを圧倒した――だった。アザゼル大爆笑。
 他にも、白龍皇の力を一誠が取り込むとか、龍にとっては龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)はもの凄く効果的だとかあったが、これに印象が塗りつぶされた。

「……相変わらずだなー」
 シリアスモードの朧もついつい苦笑する。
「しかし、全てが半分になれば、相対的には変化がないんじゃ?」
 そういう問題ではない。
(それはそれとして、もう引き上げますか。ヴァーリに『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』を使ってもらうには早いし)
「ヴァーリ、帰るぞ。迎えも来た事だしな」
 朧がそう言うと同時に美猴が現れ、一誠とヴァーリの間に入り込んだ。
「朧、ヴァーリ、迎えに来たぜぃ。アース神族と戦うから、とっとと帰って来いって本部がうるせえからよ」
「……そうか」
 朧がうんざりとしてため息を吐く。
「はぁ、一難去ってまた一難か……。美猴ー、俺疲れたから休んでたら駄目か?」
「その言い訳が通じる相手じゃねえよぅ」
「……それもそうか」
 朧が指を鳴らすと、彼とヴァーリ、美猴の足元に魔方陣が出現する。
「それでは。なお、死体は三日ぐらいで腐敗するかも?」

 そんな疑問形を残して、朧たちは姿を消した。

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