小説『ハイスクールD×D Dragon×Dark』
作者:()

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「…………」
「……にゃぁ……」
 黒縫朧です。最近、朝起きると布団の上で猫が丸くなって寝ていて起きられません。
「……ごはん……」
 よくは分からないが、どうやら餌付けに成功してしまったようです。



「小猫さん。前々から言っていますが、家の人はテロリストなのですから、こうも頻繁(ひんぱん)に来られるとあなたの主の立場が悪くなるんですよ? でもこの料理美味しいですよね」
 小猫が無言でコクリと頷く。俺が料理できることを知ってから、レイナーレは俺に料理をさせるようになった。
「それに、年頃の娘さんが男性の寝室に入るのは感心しません」
(それは隣の奴らにも言ってやれ)
 あいつら毎晩同じベッドで寝てるし。ただ寝てるだけだが。
「それに、家にはまだ小さな子もいますし……」
 レイナーレの言う小さな子とは、この間俺が連れて帰って来た天使と堕天使の合成獣子(キメラっこ)だ。名前は黒と白の翼からとって黒羽(くろはね) 白羽(しらは)である。髪が黒いので対外的にはレイナーレの妹で通している。純粋な堕天使に血縁があるかは知らないが。
「それに黙って来るとグレモリー眷属の皆さんも心配するので、来るのでしたらちゃんと玄関から来てください」
 ちなみにこれは十数回目のお説教であり、効果は既に期待してない。

「ところで、最近兵藤さんの家の前に大量の荷物が置かれているのですが、あれは一体なんですか?」
「……あれは、最近アーシア先輩にプロポーズしたディオドラ・アスタロトからの贈り物です」
「ディオドラ?」
 基本的に二人の話には口を挟まない俺ではあるが、この時は思わず声を出してしまった。
「……何か知ってるんですか?」
 そう小猫に尋ねられてしまった俺としては黙っているわけにも行かず、誤魔化すために口を開くのであった。
「ディオドラ・アスタロトといえばあいつだろ? リアス・グレモリーと同期の上級悪魔。現ベルゼブブの血縁。そんな奴が何故アーシアを?」
「……昔、アーシア先輩が教会を追放される原因となった悪魔が彼なんだそうです」
「……何それ超怪しい」
 怪しさ世界一の俺が言うのもなんだが。
「上級悪魔が眷属も連れずに地上で大怪我? 俺に襲われた訳でもあるまいし」
「……それ、自分で言いますか?」
 俺は言うのだ。
「まあ、それはそれとして、そいつには気をつけた方がいいぜ。あの時は気のせいだと思って言わなかったけど、アーシアが一度死んだとき、あの場にはもう一人上級悪魔がいた。それが奴だとすると、求婚に真実味は薄いぜ」
「……気をつけておきます」
 テロリストの言うことではあるが、一応は聞いてくれたようだ。俺もアーシアには幸せになって欲しいから、少々気を配って置こう。
「……もしかして、私が生き残ったのってもの凄い低い確率だったんじゃ……」
「そうかもな」
 俺がいなければ十中八九死んでたし。
「でも、済んだことを気にしていても仕方ありませんね! お二人共、早くしないと遅刻しますよ?」
「……お前、変わったな」
「誰かのせいです」
 その誰かは俺なんだろうな。



 いつも通り始業ギリギリに学校へ行くと、何故だか聖なるオーラを感知した。悪魔の経営する学校に聖なるオーラを発する者がいるのが気になった俺がそちらへフラフラと歩いていくと、そこにはかつて見たことのある少女がいた。
「紫藤イリナじゃねーか。こんな所で何してんだ?」
 俺に名前を呼ばれたイリナがこちらを向くと、直様(すぐさま)臨戦態勢をとった。
「おいおい、俺と戦う気か? こんな人が近くにいる場所で?」
 ここは職員室近くの廊下であり、始業近くだということもあって人は居ないが、俺たちが戦えばその気がなくとも周りの人は死ぬであろう。
「『禍の団(カオス・ブリゲード)』の一員のあなたが何でこんな所にいるの?」
「ここの生徒だから。元々の住人である俺がこの町にいても、ここらの結界には一切反応しないからな。そうでなくてもすり抜ける位はできるけど。――というか、聞かされて無かったのか?」
 その言葉に対する返答は無い。どうやら図星の様だ。
「しかし、お前から天使と同質のオーラを感じるのはどういう事だ? ――いや、言う必要はない。大方、悪魔が転生するように天使も転生を始めたんだろう」
 疑問が解消されたので、イリナに背を向けて歩き出す。
「ま、待ちなさい!」
「慌てなくとも、放課後には会えるさ」
 思わず叫んで俺を引き止めようとするイリナに短く返して教室に向かう。――途中で始業の(チャイム)が鳴って遅刻したが。

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