小説『ハイスクールD×D Dragon×Dark』
作者:()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

「ぐぎゅるぁあああああああああああああああ! アーシアァァァァァァァァァァァァァァァ!」
 獣の叫びのような声を発して、四つん這いになった一誠は目にも留まらぬ速度でシャルバの肩に噛み付く。
「おのれっ!」
 シャルバは右腕に光を作り出し、一誠に放とうとしたが、宝玉の一つから赤い鱗の龍の腕が生えそれを止め、別の宝玉から生えた刃がその右腕を切断した。
「ぐぉぉ!」
 苦悶の声を上げるシャルバの肩肉を食い千切り、四足で着地すると同時にそれを吐き捨てる。
「げごぐぎゅるぁぁぁぁぁァァァァァ!」
 意味をなさない咆哮を上げる一誠の鎧の宝玉からは、龍の腕と刃が無秩序に生えてくる。
「えげつないな」
 一誠を見た朧がそう呟くと、それに反応した一誠が朧に向かって襲いかかる。
「黒炎、黒氷、黒雷、焼き尽くし、凍てつかせ、撃ち貫け!」
 朧が瞬時に展開した黒い三つの魔方陣から黒い炎と黒い氷、黒い雷が迫り来る一誠に向けて放たれた。
 三つの黒に対して、赤龍帝の翼が白龍皇の翼の様に光り輝いた。
Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)!!」
 朧の手加減抜きの魔法攻撃は何度も半減されていって、(てのひら)(にぎ)(つぶ)されるほどの大きさまで小さくなり、血に濡れた赤い鎧に弾かれる。
「ぐりゅァァァァァッ!!」
「クッ……!」
 襲い来る爪と牙を、創り出した剣で受け止める。
「がりゅるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 しかし、牙を受け止められた剣は砕かれ、爪を受け止めた剣はその勢いを止めきれずに、刃を切り裂かれ、体に裂傷を負う。
「力は段違いだな……っ!」
 全力で後ろに飛び退る朧に向けて、一誠は口内に覗くレーザーの発射口のような物を向ける。それを見た朧は高速で転移魔方陣を形成する。
 赤い閃光が走り、朧の左腕が切断され、本体は転移して消え去った。





覇龍(ジャガーノート・ドライブ)か……とんでもないな」
 離脱した朧は切断された左腕の止血を済ませると、ふらつきながら立ち上がった。
「さて……」
 朧は手元に通信用の魔方陣を展開する。
「あー、あー。ヴァーリ、聞こえてるか?」
『何だ朧。そっちで何かあったのか?』
 魔方陣の向こうに映ったヴァーリが何事か尋ねてくる。
「まあ、超色々あった。気になるならこっちに来な。ところで、お前らの近くにアーシア・アルジェントがいってないか?」
『先ほど、次元の狭間で漂っていた所を拾ったが』
「上々。彼女を連れてこちらに来い。そろそろアレの出現予測時間だしな」
『分かっている』

「さて、次はフリードの始末だな」
 朧としては放っておいてもいいが、もし逃がしたら世界にとって害悪にしかならないので、朧は予め仕込んで置いた物を発動させた。
「カチッ」
 朧が何かを手に握り、それを親指で押し込む動作を行う。
「さて、これでフリードの体内に仕込んだ爆弾が爆発するはずだが……生きてるならそれもありだろうさ」
 そう言ったきり、朧はフリードに対する興味を失う。
「うーん……どうするかな? 今のイッセーに近づくと今度こそ死にかねないし。だとすると、もうする事がないんだよね」
 左手を顎に当てようとして存在しない事に気づき、黒き御手(ダーク・クリエイト)にて一先ずの義手とする。
「まあ、思いつかないのならどうでもいいんだろう。オーフィスの所に戻るか」
 再び転移魔方陣を展開すると、オーフィスの下へと跳んでいく。




「――……フィス、オーフィス」
「ん……朧?」
 オーフィスが目を覚まし、朧を見た瞬間、オーフィスが朧の左腕に飛びついた。
「朧……左腕は?」
「……ちょっと、持って行かれてね」
 それを聞いたオーフィスのオーラが増大し、近くにいたアザゼルとタンニーンを押し退ける。
「誰?」
 腕を落としたのは誰なのか。朧はそれを決して言おうとはしなかった。
 言ったら最後、一誠は覇龍(ジャガーノート・ドライブ)であろうとなかろうと、この空間ごと押し潰される。
「言って」
「気にするな。どうせ代わりはすぐに作れる」
「言え」
 オーフィスから発せられるプレッシャーに押されて、朧の背中に冷や汗が流れる。朧がアザゼルとタンニーンに助けを求める視線を向けると、目を逸らされた。
「朧」
「――えい」
 朧は苦し紛れにオーフィスを抱きしめた。
「……ん」
 それが功を奏して、オーフィスは大人しくなった。
「ふぅ……」
 朧が何とかなったと一息吐くと、アザゼルがどこか信じられないながらもニヤニヤしていた。
「失礼しまーす……」
 居た堪れなくなった朧は、オーフィスを連れて再び転移した。



 それからアザゼルたちを()くために連続で転移し、最後に転移した場所では、一誠が覇龍(ジャガーノート・ドライブ)状態から元に戻っており、ヴァーリたちも一緒に来ていた。
「おやおや皆さんお揃いで。赤龍帝くんは元に戻れてなによりだよ」
 転移の繰り返しで心底疲れきった朧を見て、オカ研のメンバーは身構え、千切(ちぎ)れたはずの左腕を見て驚いた。
「やれやれ、俺はもう戦いたくないんですけど」
 と言いつつも神器(セイクリッド・ギア)を発動させ、魔方陣を展開する朧に、朧に右腕一本で抱えられているオーフィスが話しかけた。
「朧、グレートレッド」
 オーフィスの指差す方に目を向けると、そこには百メートルほどの巨大な真紅のドラゴンがいた。
「ああ、本当ですね。では――」
 直後、朧の姿がオーフィスを残して消える。
「殺しておこう」
 再び現れた時、朧はグレートレッドの正面にいて、巨大な刃へと変化(へんげ)した左腕を振り上げていた。
「くたばれ!」
 気合の一声と共に振り下ろされた巨大な黒刃は、グレートレッドの鼻先に振り下ろされ、グレートレッドのオーラに弾かれる。
「硬っ……!」
 余りの硬度に有りもしない左腕の幻痛を感じていると、グレートレッドの口が開き赤い閃光が吐き出された。
「やっぱり無理かっ……!」
 朧は舌打ちを一つすると、赤い閃光に飲み込まれる前に転移を行い、オーフィスの元に戻った。
「『真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)』の名は伊達(だて)じゃないか……オーフィス、ごめ――」
 そこまで言ったところで、オーフィスの拳が朧の顔面に突き刺さり、朧は十数メートルほど吹き飛ばした。
「ぁ痛……」
 オーフィスは瓦礫に思い切り激突し、痛みに呻く朧に近寄り、その小さな手で朧をペシペシ叩き始めた。
「ちょ、オーフィス、痛い、痛いから、あの、ちょっと? あ、左腕消えた……」
 ちなみに、オーフィスが一度叩く(ごと)に軽く地面が揺れている。
「オーフィス、ホントに止め、右腕、右腕折れるから。やーめーれー!」
 流石に叩かれるのが限界に達した朧は、オーフィスを右腕一本で抱き寄せる。朧の腕に捕まったオーフィスはしばらくの間、その短い手足をばたつかせていたが、朧が右腕で頭を撫で始めると大人しくなった。
 朧は大人しくなったオーフィスを抱え上げて立ち上がると、オカ研の面々とヴァーリたちに加え、アザゼルとタンニーンまでこちらを見ていた事に気付いた。
「何か御用ですか?」
 朧は渾身(こんしん)のポーカーフェイスで、内心を隠した。本音では今すぐ逃げ出したい。
「……旧魔王派の連中は退却及び降伏した。まとめ役である末裔(まつえい)を失った旧魔王派は事実上壊滅したぞ」
「まあ、それもありでしょう。――では、次のお相手は英雄派。上級神滅具(ロンギヌス)三つを始めとする、神器(セイクリッド・ギア)持ちの人間たちが貴方がたの次の敵ですね」
「旧魔王派を失ったところで、痛くも痒くもないってか?」
 アザゼルの言葉に、朧はシニカルに笑みを浮かべて答える。
「まあ、痛くない訳ではありませんが……あれらは少々幅を利かせ過ぎました。他の芽を出すのには、間引くのも必要かと思えば、これはこれでありでしょう」
「だったら、徹底的に潰すには、土壌から撤去するしかねえよな」
 アザゼルはそう言って光の槍を朧の腕の中のオーフィスに向ける。
「それは正しい考えでしょう。だが、それをさせる訳にはいかないので――()(ほこ)れ、黒咲(ブラック・ブルーム)紅蓮(クリムゾン)
 朧を中心として、(はす)の花の様に黒の刃が地面より咲き誇る。
「それでは皆様、また」
 咲き誇りし黒き刃は、中央――朧に向かって閉じていく。
「逃がすかよ!」
 それを見たアザゼルが光の槍を投げ、タンニーンがブレスを放つ。
「残念ながら、無駄ですよ」
 閉じる刃が壁となり、槍とブレスを代わりに受け、爆発する。
 爆煙が晴れたとき、朧とオーフィスは姿を消していた。

-52-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




ハイスクールD×D リアス・グレモリー (1/4.5スケール ポリレジン製塗装済み完成品)
新品 \0
中古 \
(参考価格:\16590)