小説『とある東方の弦楽器』
作者:のださん(のださんさんのマイページ)

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第一話 幻想入り

俺のいる場所は昔から理不尽だった。
一番初めの理不尽は親の他界だった。
ちょっといろいろあって俺が五歳のとき死んでしまった
それからというもの俺の人生は理不尽だった。
そう今も・・・・。

Side命切
俺の名前はモンラッテ・命切。
名前から分かるかもしれないが日本人とイタリア人のハーフだ。
父さんが金髪だったのは今でも覚えている。
なので自分の髪の毛には金色がちょいちょい混じっている。
親はもう死んでしまった。

さて話を戻そう、今時分の身に起きている理不尽とは・・・。

「痛ってえ・・・」

自分の腹に穴が開いていることだ。
刺されたのだ。
刺したのは多分昨日潰した不良集団の残党だろう。
昨日銃などを持って街の人を恐怖に落とし入れた不良集団を三個ほど潰したのだ。
今は道の脇の壁に寄りかかって座っている。
白いYシャツを着ていたはずだがもう自分の血で真っ赤で意識が朦朧なので確証がない。

自分の右側には箱が置いてある。
これは父さんが死ぬときに渡してくれたものだ。
まあつまりは遺品って事だ。
この箱の中身はヴァイオリン。
そうあの弦楽器の。
父さんはむかしプロのヴァイオリンニストで昔生きてた頃は良く聞かせてもらっていた。
俺も自分で言っちゃあ何だがかなりうまい。

さて今の自分の周りには誰も居ないあと一時間は誰も来ないだろう。
というかそういう場所を歩いていたのだ。
俺は近所づきあいが苦手でできるだけ人と付き合いたくなかった。
携帯なんぞ持っていない。
なぜなら電話かける相手がいないからだ。

まあようするに・・・絶体絶命だった。

「こりゃ、あと三十分もすりゃ死ぬな」

ハハハハ、と笑いしか出てこない。
そして自分の右側にふと目をやった。
そこにはヴァイオリンの入ったヴァイオリンケースがあるはずだった。
そう『あるはずだったのだ』

自分の右側にはなぜか『ヴァイオリンケース』ではなく『ヴァイオリン』そのものがあった。

「は????」

自分でも認識が追いつかない。
なぜヴァイオリンが出ているのだろう。
というか今の今までケースに入れて持っていたのに・・・。

「まあいいか」

どうせ死ぬんだ、最後くらいこのヴァイオリンを弾かせてやるという神からの恵みなんだろう。
そう考えると腹の痛みも忘れ躊躇なくヴァイオリンを弾く。
弾きながらかんがえる。

神様聞いてくれ。
俺の人生は理不尽ばかりだった。
だから転生というものがあるのならこんな理不尽がない幻想のような世界に連れて行ってくれ。

自分の限界を感じた。
目に入ってくる映像がぼやけてくる。
最後に目に入ったのは・・・・・竹?

「こんなところに竹なんてあったっけ?」

そう考えながらも自身の体は倒れていった。

side鈴仙・優曇華院・イナバ
私の名前は優曇華(うどんげ)月のウサギをやっていたわ。
今は地球に来て迷いの竹林に住んでいる八意(やごころ) 永淋(えいりん)のところで弟子にしてもらっているわ。
今日は特に何もない日なので永遠亭を飛び出し迷いの竹林を探検してみることにした。
歩いて十分位経った頃どこからか美しい音色がした。
私は余りの美しさに歩くのを忘れる位聞き入ってしまった。
五分位聞いていると急に音が止まってしまった。
「???」
なぜ止まってしまったんだろう。そう考えながら音がしたほうにいってみることにした。
するとそこには血まみれの金髪の青年が倒れていた。

Side命切
「ぶっは!!」
目が覚め突然起き上がる。
まず目に入ったのは知らない天井。
そして自分の周りにあるのは見たことのない襖(ふすま)と襖と襖と襖と俺のヴァイオリンケースと知らない女性。

「あら、目が覚めた?」

そう声をかけてきたのは銀髪でものすごく個性のある赤と青の服を着ている美人の女性だった。

「体は大丈夫?」

「はい?」

「だから か・ら・だは大丈夫?」

そういえば俺は刺されたんだったな。
そうそう死ねるくらい。というか最後のほう意識がなかったり・・・

「はぁ!?」

「え、どうしたの???」

「俺どうなってんの、良く見ると腹の傷治ってるし、なに俺死んだの?そしてこの超純粋和風の家はなに?」

「ええとまずあなたは死んでいなくて、傷は私が作った薬で治ったわ、ここは永遠亭よ、ところであなた姿を見るなり外の世界から来たようだけど違う?」

「外の世界?それよりも『永遠亭』なんて聞いたことないけどどこ?ここ」

「幻想郷よ」

「『幻想郷』ってどこ?何県にあるの?」

「ここは幻想郷、それはその名の通り幻想の世界、忘れられた神や居場所がなくなった妖怪が居る世界よ、日本に存在しないわ」

「ゑ?」

「そういえば自己紹介してなかったわね。私の名前は八意(やごころ) 永琳(えいりん)あなたは?」

「モンラッテ・命切「偽名?」違います・・・・・」

俺はこの名前で結構苛められていたつらい思い出があった・・・・
ヤバイ無茶苦茶涙でてきた・・・・

「その、あの、ゴメンナサイ」

それから永淋さんに幻想郷のいろんなことを教えてもらった。
聞いた話を簡単にまとめると
この幻想郷ははるか昔大妖怪 八雲(やくも) 紫(ゆかり)(自称永遠の二十歳)が作ったらしい。
この世界での俺の立場は『外の世界から来た外来人』ということらしい。
そしてこの世界では妖怪や妖怪といったなんとも非科学ものがものすごく存在しているらしい。
今幻想郷は弾幕ごっこと言う殺傷力0の決闘がはやっているらしい。
スペルカードというので相手を墜とすらしい。
あと人間もいて中には妖怪相手に無双する人間もいるらしい。
マジかよ・・・・
ところで俺のヴァイオリン無事なのか!?すっかり忘れてた!
そう思ってヴァイオリンケースに触ると俺の頭に知識が流れ込んできた。

「これは・・・?」

そのとき事件が起こった。

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