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「さぁて、反撃開始といきますか」
望美はそれを聞くと少しビクッとして身を一歩引いた。
飛鳥はそうはいったものの、どうしようかと悩んでいた。自分の『力』は意味がないから・・・。だが飛鳥はそこまで悩まなかった。自分には自分の武器がある。自分は自分の手で戦える。生まれつきの身体能力の高さと、喧嘩でつちかった技がある。
ただこぶしを握って走り出そうとすると、
「・・・・・・・・・(睨)」
後ろから約3人ほどの視線がぐさりと突き刺さる。
(やりにくい・・・)
「・・・・・・じゃあどうしろと」
「んー・・・、せめて女の子殴るのはやめよーよ」
「同感」
「・・・・・・」
どうやら男を殴るのはいいらしいので(いいのか?)、再びこぶしを握る。対象を変え、駆け出そうとした時ひとつ、気になった。女の子のほうの『力』は(なんとなく)理解(わか)った。ただ横の男のほうの『力』が全く分からない。
(一発目は囮で相手の『力』でも探るか)
飛鳥は駆け出す。飛鳥は腕を振りかぶり、幸希のほうに殴りかかる。
瞬間、幸希がニヤッと笑った。飛鳥は殴るのを一瞬、躊躇う。その一瞬の隙に幸希はズボンのポケットから小石を取り出した。
「?」
ひゅっと小石を飛鳥のほうに投げた。
「そんなのが効くと思ってんのか?」
飛鳥はその小石を軽くあしらうと、幸希に殴りかかった。・・・・・・はずだった。
「・・・!?」
殴ったはずだったのだが、その一撃が空を切る。そのまま飛鳥は体勢を崩してしまい、顔面から地面にダイブしてしまった。
目の前にいたはずの幸希がいなくなっていた。
「ぐっ・・・いって・・・ど、どこ行った!?」
起き上がろうとする。
「飛鳥!危ない!」
照火が叫んだ。
飛鳥はハッとなり咄嗟に後ろを向く。そこにいた。すぐ後ろにいた。幸希はどこから取り出したのかしらない金属バット振りかぶっていた。
「――っ!」
飛鳥は体を必死にひねり横へ転がる。飛鳥のすぐ横にバットが振り下ろされる。
「ちっ、惜しかったなぁ」
(いつの間におれの後ろへ行ったんだ・・・)
幸希はゆっくり体勢を立て直しながら言った。
「まだまだこんなの序の口だよ、僕にはあと2つ『力』があるんだからね」