小説『死神のシンフォニー【完結】』
作者:迷音ユウ(華雪‡マナのつぶやきごと)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

飛鳥は何が起きたのかあまり理解できていなかった。

(いまのは・・・。いつ移動した?全く見えなかった・・・・・・んん?)

殴る直前まで幸希がいた場所を見て気になった。さっき幸希が自分に投げつけてきたはずの小石が落ちていた。

「あ、なんだかよくわからないって顔してるね。僕の『力』教えてあげるよ。一個だけだけどね」
一息。
「反転逆転(リバース)。もの、物事などの立場、状況を反転そして逆転させる『力』。まぁそれだけ言ってもあまりイメージわかないよね」

幸希は鼻で笑う。

「そうだ、まだ自己紹介してなかったね。僕の名前は御影幸希。こっちは双子の妹の望美」

幸希は再び小石を取り出して軽く照火のほうへ投げた。小石が照火の近くへ転がる。

照火たちは呆然とそれを見ていた。

瞬きをした。

『・・・!?』

その刹那、小石は消えその代りに向こうにいた飛鳥がそこにいた。本人も余り状況が分かっていない様子。

「ねぇ、唯。これどうなってんの?あの幸希とかいう奴の『力』って・・・あれ?」

照火は後ろを振り向いたが唯(洸も、あと・・・だれだっけ)はいなくなっていた。

「唯?どこいったの」

そういえば向うの2人の周りにも死神はいない。

「ん?しらなかったの?死人(ひと)同士の戦いのときは死神たちは手出ししちゃいけないらしくて、姿をくらます『力』を使うんだよ?」

幸希はまた、手を前に出す。その手にいつの間にか金属バットが握られていた。

「じゃあ説明も終わったことだし、もういくよ?」

幸希は不敵に笑い、急に走り出した。結構足は速い。

「うっうわぁ!」

照火はその迫力に身を一歩引いたが、とっさに『力』を使った。

ドラゴンを倒した時のサイズの火球を作り出し、投げた。

「おっ、やるねー。でもそんなぬるい『力』じゃ僕には勝てないよ?」

幸希はバットを投げ捨てて急に止まった。バットがからからと音を立てて落ちる。眼前まで火が迫る。幸希はポツリと呟いた。

「権利制限(ライトリミット)?能力(アビリティ)?」

火球のスピードが落ちる。その輪郭がぐにゃりと歪む。火球はそのまま空気の中へと消えていく。

「えっ!?なに、いまの」

照火は再び火球を作り出そうとするが。うまく作ることができない。

「フフフ。これが僕の2つ目の『力』。『権利剥奪(ライトスティール)』。どんな『力』かは想像に任せるよ」

それにしても、と幸希は照火を指差す
「君の()なかなか強そうだね」

いきなりこいつは何を言い出すのだろうか。さっき自分で「ぬるい」とか言っておきながら。

「そこの背の高いやつはそうでもないけど、君はなかなか楽しめそうだよ」

その言葉に、飛鳥はキレた。まぁ、飛鳥は言葉に敏感な性格だ。

「オマエ、さっきから何様のつもりだ?調子に乗りすぎなんだよ!」

飛鳥は再び、拳を握り幸希に殴りかかろうとする。

「あぁ、もうウザイなぁ。おなじことだって。わからないかなぁ。『権利剥奪(ライトスティ?ル)?動(move)?』」

瞬間、飛鳥の動きが止まった。正直言って不自然な格好で。

「ぐっ、なんだこれ。う、うごけねぇ」

なんだか後ろから変な視線を感じる。あらためて自分の格好を見る。

飛び掛ろうとしていたところで止められたので、なんとも恥ずかしい格好になっている。

(・・・・・・・・・)

「あぁ、もぅ。邪魔が入るのいやだな。僕はそこの照火(きみ)と一対一で戦いたいんだよ。・・・・・・仕方がない。「あれ」を使うか」

幸希がにやりと笑う。

四人は身を構える(もっとも、飛鳥は変な格好のままだが)。


「『権利剥奪?生存?』。対象は多数――――――」

-32-
Copyright ©迷音ユウ All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える