小説『死神のシンフォニー【完結】』
作者:迷音ユウ(華雪‡マナのつぶやきごと)

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「テスト?」

「そう、テスト」

「テストってなにの?」

「君が生き返れるかどうかのテストだよ」

「――――――!」

生き返れるかどうかのテスト。死んだ後のことなんかもちろん知らなかった。しかしそんなものがあるとは驚きだ。

「人はね、死んだあとに地獄か天国に送られるの。現世では善いことをした人が天国で、悪いことばっかりしてた人が地獄にいくみたいな考え方があるみたいだけど、それは違うの。老いて死んだり、未練がない状態で死んだら天国行き。それ以外で死んだら地獄行きなんだよ」

「へぇ」

「そして、地獄に来た人はテストを受けるの。まぁテストは受けなくてもいいけど、受けなかったら天国行き。テスト不合格でも天国行きになるよ」

自分がここにいる……ということは、当然老いではないから、『未練がある状態で死んだ』ということだろう。だがやはりよく分からなかった。

何故飛び降りたのかも。未練も。向こうにはもう誰も居ないのに。

そこで照火はふと、雷人のことを思い出した。雷人も死んでいる。ならば地獄(ここ)にいるかもしれない。

「雷人……光見雷人って知らない? 一週間前に死んだんだけど」

「んー、雷人? あぁ知ってるよ。君の担当をする前、私が担当をしていたから」

「えっ、雷人を知ってるの? 今、どこにいるの」

雷斗が死んでからずっと塞ぎこんでいた照火は、今までになく明るい表情になり、唯に聞きせまった。

だが、唯は俯いてこう言った。

「彼はテストを受けなかったの。だから今はたぶん天国に……」

「えっ!?」

生き返れるかどうかのテストを拒否するとは……。でも照火はそれ以上は驚かなかった。なにせ、ライトは自殺した。その原因が完全にはわからないとはいえ生き返ってもしょうがないと思ったのだろう。

(でも天国にいるなら………)

照火はさっき唯が言った、「テストを受けなければ天国行き」という言葉を思い出した。ならばテストを受けなければ天国に行ってライトに会えるかもしれない。

「ねぇ、唯。じゃあ僕もテストを受けなくてもいい? それで雷人に会えるなら、生き返らなくてもいいからさ」

そういうと唯は首を横に振った。

「いやそれは別にかまわないんだけど、会える可能性はないよ? 一口に天国っていったっていくつもあるの。その数は無数っていってもいいかも。まぁそうしないと天国が死人(ひと)であふれるからね。だから天国に行ってもすでに死んだ特定の人と合う確立はほぼゼロ。いくら、私が雷人の担当だったとはいえ、どこの天国に行ったかまでは把握できないの」

「そんな……。じゃあ、もう会えない……」

雷人に会えないんだったら天国に言っても意味はない。かといって生き返っても……。照火は考え込んでしまった。

そんな様子をジッと見ていた唯は、ハァとため息をついて、
「ホラホラ、そんなに暗くならない!一応だめもとでテスト受けといたら?何もしないでだめになるより何かしてだめになったほうがいいと思わない?」
といって、背中をドンと押してきた。

確かにそうだ。現実から逃げていたほうが楽ではあるが、逃げてちゃ何も始まらない。やるだけやったほうがいい。

「わかった。テストを受けるよ。がんばれるだけがんばってみる」

照火がそういうと唯はニコッと笑った。

「わかった。じゃあテスト会場に案内するね。結構近いから」

唯はそういうと照火の手を引っ張った。

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