小説『死神のシンフォニー【完結】』
作者:迷音ユウ(華雪‡マナのつぶやきごと)

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二/学校

「ねっねぇ。唯。まだつかないの?」

唯は近いといっていたが、もうすでに四十分以上は歩いている。

もともと体力がない照火はすっかり疲れきっていた。照火は前を歩いている唯のほうを向く。すると、唯は辺りをきょろきょろと見ながら歩いていた。

「……もしかして唯。迷った?」
照火はおそるおそる訊いてみた。迷ったも何も真っ暗闇なので照火にはさっぱりだが。

「そっそんなわけないじゃん。ほっほらあそこだよ」

唯は焦りながらも前方を指差した。そこから先だけいままでの暗闇とはうってかわり、明るくなっている。そこにあったのは大きな広場だった。いや、その先に学校のような大きい建物があるから校庭だろう。

「何でこんなところに学校が?」
照火はそう、唯に訊いた。しかし唯はそれを独り言と思ったらしくスルーした。

「うわぁ、久しぶりだなぁ、このステージ。一年ぶりかも」

唯はそう言ってスタスタと先に歩いていってしまった。

「どうしたの? 照火。早く行くよ」

「う、うん」

「ホラ、照火急いで」

唯はどんどん先に行っている。

「あ、待ってよ」

何とか走って追いつく。

広い校庭も終わり、校舎の入り口まで来た。ガラス張りのドアを開けて校舎に入る。

校舎の中に入ると少し違和感を感じた。どう見ても外から見た大きさと中の床面積が違うような気がする。

また首をかしげていた照火を横目に唯は、
「じゃあ、照火は二十二階の3-Axの教室に行って待機してて。二十二階まではエレベーターを使うと便利だよ。多分すぐわかると思うから」
と言ってどこかへ行ってしまった。

照火は首をかしげた。外から見たときは三階建てだったはずだ。それなのに唯は二十二階という。どういうことだろうか。

   †

照火は長く広い廊下を一人で歩いていった。エレベーターはその廊下をまっすぐ進んでいった突き当たりにあった。しかし、エレベーターまでたどり着いたのはいいものの、どこにもスイッチがない。普通どのエレベーターにもあるはずの『△▽』ボタンがない。スイッチのあるべき場所にはこんな張り紙がしてあった。

『行きたいクラス番号を叫んでね。叫ばないとエレベーターの扉は永遠に開かないぞ☆』

「…………」

叫ぶのは恥ずかしいが書いてあるので仕方がない。別に周りには誰もいない。照火は覚悟を決めて叫んだ。

「3−Ax! …………。これでいいのかな」

エレベータのほうをじっと見つめていると、ヒューンというエレベータの音の後に、エレベーターの扉が開いた。

どんなシステムなんだろうと考えながら照火はエレベーターに乗った。それから二十二階のボタンを押そうとしたが、やはりここにもボタンはなかった。焦りながらきょろきょろと見回していると、勝手にドアが閉まり動き始めた。どうやら上へ向かっているようだった。

-7-
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