小説『聖痕のクェイサー×真剣で私に恋しなさい!  第2章:武士道プラン異聞録編』
作者:みおん/あるあじふ()

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第2章『武士道プラン異聞録編』



バトルエピソード1「Silver Twins」


川神学園、校庭裏庭前。


ヨンパチは駆け足で学園へと戻っていた。


本日発売のアダルトBlu-rayを買いに走り、満足感に浸っていたら昼休みの時間がすっかり終わってしまっていた。当然、午後の授業は遅刻寸前である。


ビッグ・マムの制裁によっておっぱいがトラウマと化していたが、彼のエロに対する欲望はそんなトラウマさえも打ち砕いた。故に彼は復活を遂げていた。


が、相変わらず馬鹿である事に変わりはなく、今の状況に至っている。


一刻も早く教室へと戻らなければ梅子の教育的指導が待っている。鞭で打たれたら、溜まったものでは……いや、打たれたいとヨンパチは思っていた。


ともかく誰にも見つからないように戻らなければならない。教師に見つかったら終わりだ。そんな事を考えながら裏庭を走っていると、


「あの〜、すみません」


背後から突然声を掛けられた。見つかってしまった……ビクッと体を震わせ、ヨンパチは恐る恐る後ろを振り返る。


「………え?」


ヨンパチの目の前にいたのは、桃色の髪の少女だった。あまり見かけない顔である。少なくとも、この学園の生徒でない事は確かだ。


……それにしても、何て幼い顔をしているのだろうか。そして極めつけは小柄な割に大きな胸。思わずヨンパチの目が釘付けになる。


(ま、マジかよ!ロリで巨乳と来てやがる。ああ、今すぐセックスしてぇ……あ、やべえ勃ってきやがった)


童顔巨乳。ヨンパチの性的欲求が反応し、下半身を疼かせた。男としての欲望が止められない。下半身を押さえ、持っていたBlu-rayが袋から散乱した。


「………?」


Blu-rayのパッケージが少女の足元に落ちる。少女は興味本位でそれを拾い上げ、パッケージの表紙を確認する。そこには、


『陵辱!打って射精(うた)れて嬲られて』


と、女性が陵辱を受けている内容の物だった。少女の目が点になり、しばらく無言になる。


(ま、まずい……!)


ヨンパチの経験が危険信号を告げていた。少女が叫び、“エッチなのはいけないと思います!”と平手打ちが来て、最後には教師に見つかりバットエンド……ヨンパチは死を覚悟した。


しかし、少女の反応は極めて意外なものだった。少女はパッケージを見ている内に、次第に表情がうっとりとしていく。


「まあ……もしかしてご主人様、欲求不満なのでございますの?」


でしたら、と少女は座り込み始めた。シートを広げ、下げていたカバンから何かを取り出し、ヨンパチの前に披露する。


それは―――――大量のSMグッズだった。ヨンパチの思考が止まる。SMというよりは、むしろM要素の高いグッズしかない。


「さあ、ご主人様。お好きな物をお使いくださいまし。(ユー)を虐めて、貫いて、何も考えられなくなるくらい、壊してください、なのでございます」


(ユー)と名乗った少女が目を輝かせながらヨンパチに求めていた。


虐められたいというマゾヒズムを、彼女は欲している。Uの予想だにしない行動に、ヨンパチは動揺を隠せなかったが、その動揺は僅か数秒で終わった。


(来た……俺の欲望が、解き放たれる日が)


今のヨンパチには欲望というのエロスしか見えていない。それは、彼がずっと求めていた理想郷。


これはもうキメるしかない。正直な話、野外でというのは恥ずかしい気もするが、見られるかもしれないという背徳感を味わうのも悪くないというか興奮する。


それに彼女が求めているのだ……誰かが来て避難したとしても、こちらに非はないし、なにより彼女の欲求に応えなければならない。


よって、肯定。ヨンパチの息が荒くなり、そして理性が、音を立てて弾けた。


「じゃあな、モロ。スグル。ガクト。そして大和。俺は……先にいくぜ」


誰に言うわけでもなく呟き、ヨンパチはズボンのベルトに手をかける。そして、Uの元へ――――理想郷へとダイブした。


「いっただっきま〜す!!!!」


これでヨンパチの童貞は終わる。Uと交わる事によって。ヨンパチは夢へと飛び込み、


「―――――トンファーキック!!」


そして鋭い蹴りと共に身体を鞭打ちにされ、現実へと引き戻された。ヨンパチはガクガクと身体を震わせながら、あられもない姿で地面に倒れ伏せている。


「公共の場で堂々と破廉恥な行動を取る事は許さない……恥を知りなさい」


性行為に走ろうとしたヨンパチに鉄槌を下したのは、2−Sのマルギッテだった。その後ろには同じクラスのクリスもいる。


「いたいけな少女に手を出すとは……貴様は恥ずかしくはないのか!」


ヨンパチの軽率な行動に、厳しい視線を送るクリスとマルギッテ。


「ちょ、ちょっと待ってくれよ!俺は承認の上でヤろうとしたんだぜ?俺は悪くねぇ!!」


ヨンパチもさすがに反論する。そもそもUが頼んできたのだから、ヨンパチに罪はない。しかし、クリスとマルギッテは当然信用する筈もなく、


「この期に及んで言い訳とは見苦しいぞ」


「救いようのない男だ。歯を食い縛りなさい」


ヨンパチに対してさらなる不信感を買い、ついにはそれぞれ武器を構え始めた。


「ぼ、暴力反対!そんな事より、早く教室戻んないと遅刻しちまうぜ?ってか、なんでお前らまでここにいるんだよ!?」


と、ヨンパチ。確かに、この時間帯に生徒がいるのはおかしい。自分もそうなのだが。


すると、マルギッテは勝ち誇ったように笑った。


「私はお嬢様と昼食のいなり寿司を買いに行っただけだ。“一日30個限定の幻のいなり寿司”。貴様のようなくだらない慰み物とは訳が違う。格の違いを知りなさい」


要するに、限定のいなり寿司を買いに行く為にわざわざ学園を抜け出したのである。どちらにせよ、自分と同じじゃないかと思ったヨンパチだったが、口にしたら殺されかねないので止めた。


「―――――ここにいやがったか」


すると、ヨンパチとUの背後からもう一人――――桃色の髪にツインテールの少女が、不機嫌そうにSMグッズを広げているUを見下ろしていた。


顔立ちは、Uそっくりである。恐らく双子であろう。


(ファオ)……?」


Uはその少女を(ファオ)と呼んでいた。まるでアルファベットのような名前である。


(双子どんぶり!?ああ、やべえ滾ってきたああぁ!!!)


ヨンパチは制裁を受けてなお、懲りずに性行為を迫ろうと考えていた。呆れる程に、欲望に従順であった。


「おい、そこのブタザル」


「は……?」


Vが横目でヨンパチを睨み付ける。


「キモい目でこっち見んな。てめぇのイチモツ、根元からぶっちぎるぞ?」


Vは男に対して悍ましい言葉を向け、ヨンパチを一撃で撃沈させたのだった。ヨンパチは股間を押さえ、ひぃ!と悲鳴を上げている。Vは再びUへと視線を戻す。


「チョロチョロすんなっつたろ!?どんだけ探したと思ってんだよ、この豚姉!」


突然Uの背中を足で踏みつけ、ぐりぐりと踵を食い込ませるV。Uはうっ、と痛々しく埋めく。その光景に、クリスとマルギッテ、ヨンパチは目を見開いた。


「お、おい、お前。喧嘩は――――」


クリスが二人に声をかけようとした時、Uの様子がおかしい事に気づいた。何故なら、


「あっ、いたっ……こ、こらV!お姉ちゃんに向かってそんな……ああ、でも、いいぃぃ!!感じるので、ございますううぅ!!」


表情をうっとりさせながら、気持ち良さそうに快感に浸っていたからである。


「ほらほらぁ!痛ぶられて感じるんだろぉ!?どうしようもねークソマゾがぁ!!!」


Vの行為は次第にエスカレートしていき、終いには鞭まで使い、Uの身体を容赦なく激しく叩いていた。Uはそれでも嫌がろうとはせず、それを受け入れている。


つまり、Uは真性のマゾヒストなのだ。それを呆然と眺めているクリス、マルギッテ。


(やべえ、俺も叩かれてぇ!!ああ……)


色々な意味で救い用のないヨンパチ。するとマルギッテが小さく溜息をつき、


「戻りましょう、お嬢様」


「……そうだな」


クリスと共に、彼女らから背を向けて立ち去っていく。


……世の中には、様々な性癖を持った人間がいる。あまり関わらない方がいいと二人は思った。背後からはUの喘ぐような声と、Vの罵りと鞭打つ声が未だに聞こえている。


叩いて、叩いて、叩き続け、それを繰り返す。


「だめ、だめええぇ!!!それ以上されたら、Uはもう、もう―――――」


叩かれ続けていたUが絶頂を迎える。身体は震え、虐められる事への快感が、Uを至高の快楽へと導く。そして、


「イっちゃうので、ございますううううううううううううううううううぅぅぅぅぅ!!!」


Uの絶頂の叫びと同時に、ニヤリと、Vの口元が三日月状に吊り上がった。





「―――――!?」


只ならぬ殺気を感じ、マルギッテとクリスは背後を振り返る。


「危険です、お嬢様!」


振り返った瞬間、マルギッテは即座にクリスを抱きかかえて回避行動に移った。二人は飛び込むように地面に転がり込む。


「……マルさん、一体何、が――――」


何が起きたのだろう……クリスは目の前で起きた光景に絶句した。


さっきまでクリス達がいた位置の地面には―――――大量の水銀。もしもマルギッテの行動が少しでも遅ければ、今頃はあれに飲み込まれていただろう。


クリスとマルギッテは武器を構えて立ち上がり、UとVのいる方向へ視線を向けた。


「ああ……」


Uは座ったまま動かず、絶頂して快楽に浸っている。が、その地面には夥しい水銀が溢れ返り、変形を繰り返しながら蠢いていた。


「―――――はっ。トロそうな顔してる割に、意外と早ぇじゃんかよ」


ちっ、と唾を吐き捨て、鞭を片手に嘲笑うV。隣にいたヨンパチは得体の知れない恐怖で震え上がり、身動きが取れずにいる。


「水銀使い……まさか、こいつがエヴァ=シルバーなのか?」


警戒し、身構えるクリスとマルギッテ。この少女が、まゆっちを襲ったアデプトのクェイサーなのだろうか。すると、Vが表情を歪めた。


「……ああ、あのババァの事か。あたしらはババァに産み落とされたクローンだ。あんな奴と一緒にされたら、反吐がでるわ」


言って、Vは忌々しげに吐き捨てるのだった。


――――エヴァが作り出したクローン体。UもVも、エヴァによって作られた分身。水銀を操る能力。かなり危険な相手である。


「―――――福本、今の内に逃げろ」


ここは危険だ、とクリス。これからクリス達はこの訳の分からない連中と戦うつもりだ……ヨンパチは躊躇った。性欲に任せ、こんな事になってしまった事は、少なくとも自分にある。


「……分かった。今助けを呼んでくるからな!」


震える身体に鞭を打つようにして立ち上がり、ヨンパチは一目散に駆けていく。


「あ、ご主人様――――」


「ほっときな。どうせ、“助けなんざ呼べねー”んだからよ」


切なそうにヨンパチに声をかけるUを、Vは制した。そして意味深に呟いたその言葉。クリスは眉間に皺を寄せる。


「Vと言ったな……それは、一体どう言う意味だ?」


クリスの問いにVはしばらく黙っていたが、急に狂ったように笑い出した。そしてギロリと、獲物を捉えたような獣の瞳でクリス達を睨みつける。


「決まってんだろ。てめえら全員―――――」


Vの周囲に、湧水のように水銀が生成されていく。水銀は踊り狂い、Vの身体を渦巻きながら不気味に揺らめいていた。


次の瞬間、


「――――――死ぬってことだよおおぉぉぉおぉおお!!!!」


Vの生成した水銀が、無数の槍となってクリスとマルギッテに向けて解き放たれた。

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