「んっ…ここは?」
俺は日差しの眩しさに目を覚まし、辺りを見回した。
どうやら俺は何処かの公園のベンチで横になっているようだ。
「…そっか、俺は本来居るべき世界に連れ戻されたんだっけ…」
もう過ぎたもんはしょうがない…それならこの世界で命一杯生きよう。
それがせめて俺がいた世界で世話になった人達への感謝の念だ。
取り合えずは現状確認といきますかな。
え〜っと、俺は今何処にいるんだ?
ていうかこの雰囲気は…日本だよな?
「ぐっ!?」
最初の疑問を浮かべていると、突然の頭痛に思わず悲鳴を上げてしまったが、その頭痛から頭に情報が流れてきた。
今流れてきた情報によると、ここは太陽系第三惑星地球、日本の海鳴市らしい。
どっかで聞いた事ある地名と何で太陽系から入ったのが疑問だ。
災厄と言ってたから、化物が現れるのは確かだろうが…舞台は地球以外にもあるのか?
まぁ、気を取り直して持ち物の確認といこう!
え〜っと、まず出てきたのは印鑑か…大理石で出来てる(汗
新居のカードキーに携帯電話…ipho〇e5?
この世界にsoft〇ankあるの?
次にパスポートに通帳が5冊…ん? 5冊?
ちょっと中身が気になって開いてみたら…5冊ともゼロがギッシリ詰まっていた。
ロト〇何回当てりゃ手に入る額だよ、税金ちゃんと納めたのか疑問だぜ。
んでお次は財布っと。
中身は…ひい、ふう、みい…30万、しかも新札…だと…?
そして、保険証にクレジットカード一枚・・・ブラック。
俺はどこの成金なんだろう…
うしっ、気を取り直して〜、免許証が数枚…数枚?
俺原付しか持ってないはずだけどなぁ。
え〜っとなになに?
大型自動二輪
大型自動四輪
特殊車両
調理師免許
河豚調理師免許
フォークリフト
パワーショベル
クレーンオペレーター
玉掛け
危険物取り扱い
薬剤師免許
医師免許
一級建築士
獣医師
トリマー
MOSExcel Word 一級
Webクリエイター上級
Java
C++
…おいおい、どんだけ資格持ってんだよ。
これ全部俺が将来取りたいと思ってた資格ばっかじゃねぇかよ。
しかも実際扱ってみようと思うとちゃんと知識が出てくるとか…今まで必死で勉強していた日々が崩れ去っていく…
はぁ、今日はとことん汗を掻く日だなぁ〜…
―――――とりあえず、ゲッター線、やりすぎだ
よし、取り合えず確認は終わった。
ほんじゃまぁ、さっき流れてきた情報に俺の新居の住所があったけど、今はまだ昼間だし、ブラブラしながら行ってみるとするか。
そう思い、俺が公園の出口を探して歩いていると―――
「離しなさい!!」
「うるせぇ! とっとと乗りやがれ!!」
「兄貴! 早くしねぇと誰か来ちまいます!?」
何だか物騒な会話(?)が聞こえて来た。
声のほうに向かってみると、妙な男三人組がワゴン車に大学生ぐらいの女性を無理矢理乗せようとしていた。
って思いっきり誘拐しようとしてる場面じゃねぇか。
新世界に到着早々トラブル遭遇とか、RPGのお約束じゃねぇかよ。
ここは当然、助けるっきゃないよね?
うん、とりあえず。
―――ドドドドドドドド! ダッ!!
「いい年扱いた大人が三人揃って何しとるんじゃボケがぁぁぁぁ!!!」
「何っ!?ぶふぇぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!?」
俺は今まさに誘拐を実行しようとしてる3人組のうちのリーダー格っぽいのにジャンピングドロップキックを顔面に食らわせた。
その男はきりもみ回転をしながらゴミ箱に向かって吹っ飛んでいった。
おお、見事頭から突っ込んだ。
「兄貴!?」
「てめぇ何もんだ!!」
おお、今蹴飛ばしたのは実際にリーダー格だったか。
しかしおかしいなぁ…俺の身体能力、こんな高かったか?
身体測定でバドミントン部の同級生と比べて俺の身体能力は1/2という結果が出て俺は凹んでたんだが…
ゲッター線の影響か?
とにかく―――
「てめぇら下種に名乗るわけねぇだろうがボケ!」
「あ゛あ゛!? ガキが調子乗ってんじゃねぇぞ!!」
下っ端Aは突然現れた俺に吹き飛ばされたリーダーの安否に気が向き、下っ端Bが割り込んできた俺に腹を立て、殴りかかってきた。
しかし、俺から見て下っ端Bのパンチは全然遅く感じた。
まぁ、避けようと思えば避けれたけど、自分の今のスペックを確かめるために、向かってくる拳に思いっきり殴り返してみた。
―――バキボキボキボキッ!!
「―――――What?」
「―――――え?」
「なっ…がっ! がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!?」
俺が思いっきり殴り返した下っ端Bの右腕が肘までぺしゃんこになってしまった。
おいおい、俺のスペックやべぇじゃんよ。
相手の腕、描写的にリアル18禁になったぜ(汗
「腕がぁぁ!? 俺の、俺の腕がぁぁぁぁぁあ!?」
錯乱のあまり下っ端Bはムス〇ネタに走っていた。
まずい、俺の後ろにはあの女史がいる…こんなグロい腕を見せでもしたらトラウマものになる。
ここは速攻で終わらせてもらう!
動いてくれよ俺の身体!!
「ちょっとごめんよ!」
「ふぇ、何ッ?」
―――バサッ!
俺が羽織っていた黒いジャケットを背中越しに女史に投げかけて視界を塞ぎ、ゲッター線から授かった何かを信じてあらん限り速く動いた。
痛みでのたうち回る下っ端Bの首に手刀を当てて気絶させた後、すぐそこで腰を抜かしてた下っ端Aの肩と膝の関節を壊した。
そしてゴミ箱で気絶しているリーダー格も回収して三人を一箇所に集め、リーダーの服を剥ぎ取って下っ端Bの右腕に巻き付けた後に下っ端Aが持ってたロープで縛り、血を止めた。
止血の方法とかは中学の時に保健体育で習って以来触れたことすら無いけど、医師免許のおかげで直ぐに出来た…よかった。
ここまでの時間、四秒…女史も突然のことでテンパっているのか、被せられた後に尻餅をついてジャケットを剥がせていない。
腕がグロいことになっている下っ端Bもいるので、今の内に三人を車の中に押し込んでハンドルとキーをぶっ壊しておいた。
うわぁ、改めて思うと俺のスペック本当に馬鹿高くなったなぁ。
後で筋肉痛とか勘弁してくれよ?
「あ…あの」
車から出ると、さっきの女史が俺のジャケットを持って近づいて来た。
…あれ? この女史どっかで見たことあるような…
「その、おかげで助かったわ。ありがとう…」
「ん? あぁ、気にするな。アンタみたいな美人さんを誘拐しようとした下種にムカついただけだから」
「び、美人?」
あら、顔が引き吊っちまってるよ…目の前で起こった事の後に聞いても引くよね。
「ところで、警察と救急車を呼んでくれないか? 」
「その必要はないわ。こいつらは私が処理するから」
「はい?」
この嬢さん、さらっと怖いことを慣れた様に言ってたぞ?
もしかしてこういう誘拐とかは何度もあるのか?
「忍お嬢様ーーーー!!」
ん? うぉ!? あれってメイドか!?
やべ、リアルメイド初めてみたぜ…あれ、でもあのメイドもやっぱ見覚えあるなぁ〜。
「あっノエル!」
ノエル?
あのメイドの名前か。
ん〜、やっぱ聞き覚えある。
それに忍って名前も…でも、なんか面倒臭いことになりそうだから、さっさとトンズラしますかな?
「じゃ、じゃぁ、後はよろしくね〜〜!!」
「あ、待って!!」
俺は女史の声に答えず、公園を走り去った。
女性side
「忍お嬢様、ご無事ですか!?」
ノエルは私の危機を察してか、連絡もしていないのに駆けつけて来てくれた。
「ええ、大丈夫よ。彼が助けてくれたから」
私は彼が走り去っていった先を見ながらノエルに無事を伝えた。
「ご無事でなによりです―――っ!? こ、これはいったい?」
「これは彼が一人でしたことよ。私は何もしてないわ」
ノエルは私を誘拐しようとした者共を探して、目に入った血溜まりと車を見て驚いている。
当たり前と言えばそうね、この惨状を一人で起こしたのだから。
本人は私が見えないように隠していたつもりだろうけど、最初は見ていたわ。
確かに、腕を肘まで殴って潰したり、飛び蹴りであそこまで人を吹き飛ばしたりなんてまず一般人の力では出来ない。
後半は服で視界を奪われたけど、聞こえてくる音からして暴れまわってたわね。
車の壊れ方からしても、一般の力持ちでもハンドルなんて壊せれない…
下手したら、私達夜の一族よりも強いかもしれない。
でも、彼は殴り返して相手の肘まで潰した時、自分も驚いていた…どういうこと?
「…その男は何者ですか? とても人間が出来ることではないのですが…」
「まぁ、この町にいる限り、又会えるでしょう。それも、意外と早くに…」
「は、はぁ…お嬢様?」
「ノエル、今何時?」
「あ、はい。現在午後4時…ッ!?」
「ファリンは!?」
「すずか様の迎えに向かっていますがまだ隣町を出たばかりです!」
「直ぐに車を学校に向けて!」
「かしこまりました、忍お嬢様!」
不味い、私が襲われてすずかが襲われていない訳が無い!
ファリンは隣町の買い物から直接迎えに行く予定だから間に合わない!
すずか、無事でいて!