小説『Fate/Zero これは戦争ですか? いいえ観光です』
作者:銃剣()

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第十四話 飯を食う時は騒がずに


アインツベル城 夜


「いよいよ今日ね」


「そうですねアイリスフィール」


今日、セイバー陣営と義明と愉快なサーヴァント達との話の日である
セイバーは最初は反対していたが、ハサンの手紙により何とか同意した
二人が部屋で待っていると


「・・・来たわね」


「はい」


アイリスフィールとセイバーは何か来たことに気づく
急いで部屋を出て、階段を下り、外へ出る


城の庭園に出たセイバーとアイリスフィール
庭園は、白い花が咲いており、真ん中は丸く広場となっている
そんな所に丸いテーブルに椅子があり、そこに人影もあった


「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」


椅子に座っていたのは、善明、ランスロット、ジル・ド・レイ、ギルガメッシュの四人だった。しかし、いつもと雰囲気が違い、腕を組んで黙っていた


「まさか庭園に現れるとは、それにいつもと違いますね」


「それもそうね。でも今日は今後の聖杯について話し合い・・・真剣にもなるわよ」


「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」


「ですが、異様に神妙な顔をしていませんか?」


「緊張しているのよ。話し合いなんて滅多にないんだから」


アイリスフィールがそう言っているが、セイバーはどうも納得しなかった
この前まで夕食目当てで海岸で釣りをして、猫のチョコを狙い、そして何故か爆発して倒れていたという訳の分からん状況を作った彼らがそんな真面目な事をするはずがないと思った


…考え過ぎか。彼らも少しは真剣に


ジリリリリリリリ


「…ん?」


セイバーが納得しかけた時に、妙な音が鳴っていた
それは善明達のテーブルの中央にある…人生ゲームのルーレットだった


「5!!1…2…3…4…5……よぉぉぉぉぉし!!人気俳優となり収入二千万増える!!以後順番が回ってくる事に二千万入る!!」


ジル・ド・レイが自分の駒を動かし、マスに書かれている事を読み上げると立ち上がって、腕を上げて喜ぶ


「勝ったァァァァ!!これは完全に勝ちましたね!!勝ち組です。勝ち組の仲間入れですよ!!ついに私も」


「黙れぇぇぇぇ!!勝負は最後まで分からんぞォォ!!」


ジル・ド・レイの勝利宣言にギルガメッシュが怒涛に声を荒げながら叫ぶ
だがジル・ド・レイが憎たらしい笑みを浮かべながら叫ぶ


「いいえ、勝ちましたね。こっから貴方達負け組が追いつくことは到底不可能!!だって俳優ですもの!!勝ち組ですもの!!」


「ボードの上ではな…幾ら金持ちになろうと、こっちの人生(ボード)の上では、お前がロリコン異端者という事実は何ら変わりねー事を忘れんなよコノヤロー」


『少しは自分の立場知って下さい。このM犯罪者』


「そこまで言わなくても良いじゃないですか!?ゲーム位夢見させてくれても良いじゃなですか!!それと私はMではありません!!」


調子に乗るジル・ド・レイに頭にきたのか。善明とランスロットが真実という名の罵倒を言う


「黙れ変態狂人。フリダシからまんじりと動けねぇ人生送ってるくせに調子に乗るなよ」


「何を!!ゲームでもこっちでも負け組の貴方達よりはマシですよ!!」


「貴様ァァ!!そこまで言うか!!そこに直れ、我が宝物で消し去ってくれるわ!!」


ギルガメッシュが王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)を展開しながら怒り、善明も軽くキレながらも罵倒をしている。そんな事をしていたら


バキッ!!


いつの間にかセイバーが善明達の所にやってきて、テーブルごと人生ゲームを約束された勝利の剣(エクスカリバー)で真っ二つにした


「ギャアアアアアア何するんですかジャンヌゥゥゥ!!せっかく人気俳優なれたのに!!」


「何するんじゃない!!珍しく神妙な顔をしてると思ったら、何を遊んでいるだ!!」


セイバーは剣を突きつけながらツッコミを入れる


「いやぁハサン達が買い出し行ってる間が暇だったからよォ」


「だからって他人の庭園で遊んで良い訳ないだろうが!!」


「落ち着けセイバー。我らはただ遊んでいる訳ではない…ここに居るものは転落する人生を歩む覚悟でここにいるのだ。ましてや結婚マスでたかが3000円を全員から貰おうなどと小さい事を考えていない!!」


「それを言っている時点で貴様も普通に遊んでいるだろ!!」


ギルガメッシュのボケもスパッとツッコムセイバー
そうこうしていると


「待たせたな!!お主らーーーーー!!」


夜空から神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)に乗ったイスカンダル、ディルムッド、ハサン、雁夜、桜がやってきたが


ズドォン!!


止まるどころかスピードも落とさずに城の壁に激突した


「何がしたいんだ貴方達は!?」


「はははははっ!!すまんなセイバー!景気づけに酒を飲ましたら。急に酔い始めてな!」


イスカンダルは神獣を指差していう
神獣は舌を出しながらフラフラして、軽く泥酔状態だった


「だから言ったろ!!酒飲ますなって!!走ってる途中で落ちそうになったわ!!」


「だから行きたくなかったんだ俺は」


「でも私は楽しかったよ」


雁夜、ディルムッド、桜の順で感想を言う
セイバーは頭を抱え、溜め息をする


「はぁ…本当にこの先大丈夫なのだろうか」


「あ、アイリスフィールさん。すみませんが調理手伝ってくれませんか?」


「良いわよアサシン」


「アイリスフィール!!貴方もですか!?」








「さて、準備も出来たことだし、始めましょうか」


ハサンがそう言うとその場にいた全員が頷く
庭園の中央には、大勢で囲める位のテーブルで、上には様々な料理が並べられている
ちなみにテーブルは新しい物を使っている


「それじゃあ、今後の聖杯についてですが。そちら側としてはどのようにしたいんですか」


「う〜ん。今は切嗣が居ないから何とも言えないわね」


「そういえばキリツグの姿が見えませんが」


セイバーが周りを見ながら言う
すると雁夜が


「なぁ桜ちゃんが居ないけど」


「あぁ桜ちゃんならトイレに行くって言ってましたよ」


「さっき私がトイレまで案内したけど、遅いわね」


「俺、少し探してくる」


雁夜が席を立ち、桜を探すべく城の中に入った


(ちょっと善明さん)


(あぁ?)


(良いんですか。オルタさんの事)


ハサンは善明に念話でオルタの事を話す
何故彼女だけがこの場に居ないのか。それは、セイバーと合わせるとややこしくなるという事と作者と物語の事情の為、近くで待機している


(別に良いだろ。あいつは、いざという時の存在だ。バラす訳にはいかねぇだろ)


(でもオルタさん。機嫌悪くして不貞腐れてましたよ)


(あいつが不貞腐れるような奴か)


(…気付かないんですか)


(は?何が)


(はぁ…)


善明の反応に溜息を付くハサン
そんなやり取りをしているとランスロットがプラカードで


『それじゃあ、難しい事は後にして食事にしませんか?』


「それもそうだな。いつまでも味が濃いなコレ待ってる訳にも行かないからなもう少し味付け薄いほうが良いんじゃね?とりあえず先食ってるか」 もっしゃもっしゃ


「いや先食ってるかって、既に食ってるでしょうがァ!!」


善明は喋りながらも目の前の料理を食いながら味の感想を言っている事にハサンはツッコム
しかもほとんど完食している


「落ち着けハサン。騒いだって俺はこれで丁度良いが?しょうがないだろ」 もっしゃもっしゃ


「今は食事を余はもう少し濃い方が良いぞ?楽しもうぞ」 もっしゃもっしゃ


『行儀悪いですよ。静かに私は薄味の方が…して下さい』 もっしゃもっしゃ


「これだから雑種は。この王である我の少し味濃い方が良いぞ態度を見入っていろ」 もっしゃもっしゃ


「私は薄味ですかね」 もっしゃもっしゃ


「アンタらもかァァ!!つーか話の途中で感想が入ってるだろ!ジル・ド・レイさんに関しては隠す気ないし!?」


善明&amp;ボケサーヴァント御一行は、もはや話し合いの「は」の字も無かった
そんな光景に体を震えながら見ていた者が一人いた


「いい加減にして下さい!!」


それはセイバーだった
その場で立ち上がり、善明達を怒鳴り上げる
その眼差しは真剣そのものでボケなどは一切なかった


「…さっきから聞いていれば薄味がどうとかもう少し濃くしろと勝手に話を進めて」


顔を下に向けて語るセイバー。周りにはシリアスムードが漂っていた
善明達も黙って聞く


「良いですか。私は……私は……」


そこで一度言葉を切り、目を閉じて深呼吸する
そして目をカッ!っと見開いたと同時にセイバーは言った














「この料理はそのままが美味しいでしょうが!!」


「そこォォォォォォォォォ!?」


セイバーの予想外の事にハサンはシャウトした


「いやそこですか!?もっと他に言うべきとこ合ったでしょう!!急にストレートかと思ったらとんでもない変化球きましたよォ!!」


「何を言うかアサシン!!貴方は自分の料理にケチを付けられているのですよ。それでも料理人ですか!?」


「いやそんな料理評論家みたいな事言われても困るんですけどォ!!」


セイバーまでボケに回り、ハサンのツッコミの比率はどんどん上がっていく


「そんな怒鳴るなよ。こちとら本当は争い事は無しで来てんだからよ」


そう言いながら善明は目の前のローストビーフをフォークで刺そうとするが


カツン


「「…ん?」」


善明のフォークとセイバーのフォークがぶつかる
お互い引く事はなく、刺そうとするがフォークが邪魔で出来ない


「おい、こいつは俺のだ」


「いいえ違います。これは私が先に目を付けていた」


「いや、こいつはお前より早く目を付けてた」


「いいえ、これは料理が運ばれてきた時から目を付けていた」


「いーや、こいつは料理される前から目を付けてた」


お互い譲る事はせず、口論をする
それはますます激しくなっていた


「いい加減にしろ!!こいつは俺のなんだよ。テメェは他の料理食ってろ!!」


「貴方こそ!いい加減諦めたらどうだ!?」


何故かフォークとフォークによる打ち合いが始まる
そしてお互いのフォークがローストビーフに突き刺さり引っ張り合う


「ふんごォォォォォォォォォォォォォ!!」


「うおおおおォォォォォォォォォォォ!!」


叫びながらもローストビーフを離さない二人
そして肉を引っ張り合っていると


ポンッ


「「あぁ!!」」


フォークからローストビーフが抜け宙を舞い落ちていく
そして落ちた先は


パクッ もっちゃもっちゃ


隅に止まっていた泥酔状態の神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)だった


「オィィィィ何食ってんだこの牛野郎!!」


「返せェェ!!私のローストビーフゥゥ!!」


「オラァァ吐き出せや!!テメェのローストすっぞ!!」


二人は牛の首を絞め、上下に揺らしながら声を荒げる
しかし既にローストビーフは胃の中であった


「「俺(私)のローストビーフゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」」


善明とセイバーの叫びは夜空の彼方まで響いたという








「………なぁ」


「なんですか?」


「なんでお前と戦わないといけないの?」


ローストビーフ事件から数分、セイバーが善明に勝負を挑んできた
理由は食べ物への恨みという単純なもの。善明は助けを呼ぼうとするがサーヴァント達は片手に煎餅、片手にお茶を持ちながら観戦していた。もはや助ける気は無かった


「アイツら、後で覚えてろよ」


善明は呟きながらiPad『エイダ』を取り出す


「エイダ、武器一本くれ」


【了解。武器リリース】


エイダの音声と同時に善明の横から大きな鞘に収まった剣が地面に刺さりながら出現する


「それが貴方の剣か」


「まぁな。ほんじゃ…やりますか」


セイバーは約束された勝利の剣(エクスカリバー)を構え、善明は地面に刺さったままの剣の柄を握る
それを見て、中央にいたハサンが声を掛ける


「それでは良いですか?」


ハサンの返事に首を縦にふる。セイバーと善明
お互い握る力が強くなった時


「では…始め!!」


「はぁぁあああああああああ!!」


「うぉぉおおおおおおおおお!!」


勝負の開始と同時に動く二人
セイバーは雄叫びを上げながら大地を蹴る
善明も雄叫びを上げながら前に出ると同時に剣を引き抜く


…スポン


その時、何かが抜けた音がした
それは善明からであり、鞘から抜かれた剣に似つかわない、なんとも力が抜けるような音
善明は気になり、自分の握っている物を見た

柄は包帯が巻かれており、使い込まれてそうな風の鞘だったが問題は刀身の方にあった
黒光りするほどの黒色。適度なしなやかさがあり、非常に弾力性もありそうな木で出来た刀身
ただの黒い木刀で先には値札が貼られており、「1980」と書かれていた


……………………。


「ふざけんなァァァァァァァ!!」


これには善明もブチ切れながらシャウトするしかなかった


「なんで木刀なんだよ!普通剣とかなんかしろの聖剣とかじゃないのか!!」


怒りが収まらない善明はすぐにiPadを取り出す


「オイコラ腐れiPad。なんで木刀なんか呼び出した!?」


【iPadは腐りません。機械ですから錆びるの方が正しいです】


「んなことはどうでもいい。なんで木刀なのか説明しろ!!つーかなんだこの値札はよ?修学旅行のお土産じゃねーんだよ!!」


【説明も良いですけど…前を見ないと危ないですよ?】


「…は?」


エイダの言葉通り前を見る善明に


「やぁぁあああああああああ!!」


いつの間にか近くまでやってきたセイバーが約束された勝利の剣(エクスカリバー)を上に振りかぶり、斬りかかる所だった


「オイウソだろォォ!?」


善明は突然の事に戸惑いを隠せなかった
すぐそこに聖剣で斬りかかるサーヴァント。今持っているのは木刀(値札付き)が一本だけ
それ以外に武器になる物はない。いや、例え武器になる物があってもサーヴァントの宝具に並みの武器じゃ簡単に壊れてしまう。そんな事を考えている時間は善明には無かった


「もうどうにでもなれェェ!!」


善明はヤケクソ半分で木刀を振りかぶる
木刀と約束された勝利の剣(エクスカリバー)がぶつかり合う。
木で出来た刀と聖剣…それは天と地の差である、誰しも木刀が折れると思った


「どりゃぁあああ!!」


「!?」


「うそ!?」


しかし木刀は折れることもなく、さらに聖剣を持ったサーヴァントを押し払ったのだ
これにはセイバーだけでなく、ハサン達とアイリスフィールも驚愕した
だが一番驚いていたのは木刀を持っていた善明本人だった


「んだぁこの木刀?案外使えるじゃーねーかァ」


【そこらの木刀と一緒にされては困ります。その木刀は聖剣にも耐えられるように作られた物です】


「ようはすげぇ頑丈に作った喧嘩道具って事か」


そう言いながら善明は手首を使って木刀を回す


「面白れェ…とことんやってやんよ!!」


善明が叫びながら木刀を構え、セイバーも約束された勝利の剣(エクスカリバー)を構える
どちらも相手を睨み、一歩も動かない。次の一撃からどう動くのか、誰しもがそう思った





しかしその時、誰も予想しなかった悲劇が起こった






ドォオン!






一発の銃声が響き渡る
そして、腹から迸る程の血が吹き出し膝から崩れ落ちる善明
次第に傷口から大量の出血が地面に広がっていく
この光景に誰も言葉を発せなかった


「……よ、善明さァァァァァァァァァァァァァァァんんんんんん!!」


沈黙が続く夜空の中、その声は天高く響いた




ーーーーあとがきーーーー

やっと書けました!!
戦闘描写は本当に難しいです
また更新が遅れると思います

それではさよなら

-19-
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