五章
トントンとノックの音が鳴り響いた。
ノックの音は初めてで、緊張なんてものじゃ足りないくらいだった。
確かにこんなことを望んだのは自分だけれど、本当になると怖くてたまらな
い。さらには、自分は世界に嫌われ者の化物だ。どんな事になるのか想像も
つかなかった。
「あわわ………」
言うまでもなく、少女は慌てていた。
まずどうするべきなのか、開けるべきなのか、少女は迷っていた。
目を合わせると石になってしまう___
それが怖かった。
人間も怖かった。
そして躓いた。あっけなく床に転げ落ちた。
その音が聞こえたからだろう。
突飛な世界は 想像してるよりも簡単に外の少年は、
ドアを開けたのだった。
少女は目を瞑った。うずくまり目を瞑っていた。
少年はそんな少女を見て、すごく驚いた様子だった。
「目を見ると石になってしまう」
震えながら、少女はそう呟いた。
そんな言葉をどう受け取ったのか、少年の驚きの表情がだんだん笑いに変わ
った。
「僕だって石になってしまうと怯えて暮らしてたよ」
少年の声が聞こえた。とても優しい、大人のような声だった。
少女の頭の上に手を優しくおき、少年は言葉を続けた。
「でもさ、世界は案外怯えなくても良いんだよ」
少女の顔から不安が消えた。
驚きと困惑だけが少女の顔に現れていた。
多分、少年の言葉には何処か勘違いがある。けれど、ちゃんと自分を理解し
てくれた、そんな気がした。
「だから、一緒に行かない?世界に」
笑顔で少年はそういい、来ていた白い服を被せてくれた。