六章
長く世話になった家にさよならを告げた。
特に誰かいるわけでもないけれど、それでもさよならが言いたかったのだっ
た。
今までいた、小さな世界に。
「どうしたの?」
少年が心配そうに、けれど優しく呟いた。
少女は振り返り、そんな少年についていった。
「ううん、なんでもない」
そして、少女は少年と、そしてその仲間と一緒に世界に出て行ったのだ。
夏風が今日もまた、あなたがくれた服のフードを少しだけ揺らしてみせてい
た。