小説『国境の橋 』
作者:ドリーム(ドリーム王国)

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 裕輔は親からも友達からも橋博士とからかわれた。中学を卒業する頃には、これ等の橋の構造や種類を熟知していた。
 橋の魅力に惹かれる祐輔の将来を既に決まっていた。
 高校生になった裕輔は高知県だけでなく四国、九州と春休み夏休みなどを利用して橋の写真を撮り続けた。その枚数は五千枚を超えた。
 やがて裕輔は高知市の高校二年生になった夏休みのこと、将来について両親と相談した。

「裕輔……どうしても東京の大学に行きたいのか」
「分かってくれ、父ちゃん母ちゃん。長男の俺が親の跡を継がなくてはならないのは承知している。でも俺は橋を造りたいんだよ。だから東京の大学で学び、橋の設計施工する会社に入りたい」
 父は落胆していた。てっきり屋形船の跡を継いでくれるものと思っていたからだ。だが母は言った。
「父ちゃんいいんじゃない。裕輔を田舎に縛りつれて置くのは親のエゴってもんだ。息子が立派になってくれれば、それも親孝行というもんじないか」

 なんとか両親が納得してくれた。でもいつかは帰って来て親の跡を継ごう。そう心に決めて。
 やがて橋の設計施工の科目がある大学に入り、卒業と同時に設計施行をする東京の会社に就職した。
 そして会社に入って早十年が経った。裕輔は国内では此れまで数々の橋を手掛けて来た。
 ある日、社が初めて政府から橋の設計施工の工事を受注した。しかも初の海外での仕事である。
 日本の技術を世界に広げ、社名を一気に高めるチャンスと社を挙げて早速チームを選りすぐりのメンバー集めた。
「では最後の一人、一番若いがこれまで実績を評価し谷津祐輔をこのチームに加える。以上だ」

 裕輔の実力は認められた。このチームの一人として選ばれたのだ。大変名誉な事である。
 会社に入って十年だが、この世界ではまだまだひよっ子の存在だ。それでも選ばれた事が何よりも嬉しい。
 社には二十?四十年と経験豊富な先輩が大勢いる。そんな中から選ばれたのだから凄い事である。
 裕輔は超の付くほどの橋好き、専門が施工設計だが現場に行くと黙ってはいられない性格のようだ
 そのせいだろうか本当に日本人かと思われるほど浅黒い顔をしている技術者の裕輔だが、橋となると黙って見ていられない程の性分で率先して現場に入る。
 だから体格も良く技術者には見えない。思い通りに橋が出来上がった時は子供が、はしゃぐように喜ぶ。
 

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