「どうして、こんなことをするんだ?お前らはルリの護衛役なんだろ?
だったらこいつの意思も考えずに、何でそんな無理矢理連れて帰ろうとするんだ!!」
「大魔王様の命令だ…。あの方の命令は、私達護衛役にとっては、絶対の命令だ。
その命令を無視する事は出来ない。例え、今の私が取っている行動が本心に反する行動だったとしてもな!」
その彼女の言葉に俺は一瞬胸が痛くなった。
―どうしてこいつ、こんなに苦しそうな顔をしてるんだ?とにかく、何とかしねぇと…!
心の中で考えている俺に対して、一向に力を緩めることなく、逆に力を強くしていっている護衛役の少女。
―仕方がない…。
俺は心の中で決心した。
「だったら、お前に出された大魔王とやらの命令を、実行することが出来ないようにしてやる!」
「な、何…!?」
さっきまで目の色一つ変えることの無かった彼女が急に表情を変えた。
何かを考えているような顔つきだったが、そんなのお構い無しに、俺は精一杯拳に力を込め、刀を押した。
すると、さっきまで同等の力を持っていた二つの力のバランスが崩れ、彼女の剣にヒビが入った。
「くっ!そ、そんな馬鹿な!この私の妖刀『斬空刀』にヒビが入るだと!?人間にこんな力はないはず!」
「こう見えても俺、結構力は強いほうなんでな!相手が例え悪魔の女で、
魔界の姫君の護衛をしてるって言われても、俺は負けはしない!!」
俺は、そう相手に向かって叫び、それと同時に大きく背中を反らすと、
思いっきり相手の額めがけて、頭突きを繰り出した。
「うぐぅあ!……っく、き…貴様!」
「へへっ、なかなか頑丈な女だな…。大抵の人間はこの頭突きくらったら、しばらくは立てなくなるか、
目を回すほどの威力を誇っていて、少しばかり自慢だったんだが…」
俺の自慢話に笑ったのかどうかは分からないが、彼女は急にふっと笑った。
「残念だが、私は魔界で最強と謳われた剣士だ!そんな頭突き何とも……うっ、し…視界が!?」
―い、意識が遠のく…。
護衛役の少女は急に剣を手から離し、その場に崩れ落ちるように倒れた。
「やべっ…。少しやりすぎたか?いくら魔界の人間つっても女の子なんだから、
少しばかり手加減しておくべきだったか?」
俺は気絶している彼女に近づき、抱きかかえると、天井が崩れ、それによる瓦礫などの小さい破片が乗って、
汚れているベッドに寝かせた。
―一応、俺のベッドだ。ふかふかでとても寝心地がいい…。(体験談)
こうして、俺は何とか魔界で最強と謳われているという、剣士の少女を倒したのだった……。