「じゃあ、髪洗うから眼つぶってろよ?」
「うん…」
見えないから、彼女がちゃんと眼をつぶっているのかは分からないが、
俺はルリのことを信じて、彼女の頭に、風呂のお湯を優しくかけてあげた。
「うわ〜、この水ちょうどいい温度だね?」
「あ、ああ…。じゃあ、これからシャンプーで地肌洗うからな…」
俺は、手探りでシャンプーを探し、何とか位置を確認すると、手にシャンプー液をかけ、
それを擦り合わせて泡立てた。
―ちなみにシャンプーとリンス共にメ○ットを使っている。理由は泡立ちがいいから…。
そして、それをルリの蜜柑色の髪の毛に乗せると、指を猫の様にして、爪は立てずに、
指先の腹で地肌を擦ってあげるようにして、髪を洗ってあげた。
ルリはくすぐったいのか、肩をすくめ少しクスクスと笑っていた。
俺は今まで、姉に髪の毛を洗ってもらったことはあるが、
逆の立場はなかったため、最初女の子の髪の毛を、どうやって洗えばいいのか分からなかった。
しかし、実際にやってみると男とあまり変わらず、ただ髪の毛が長いか短いかの違いだけだった。
普段はツインテールにしているルリの髪の毛は、結ばないと背中を通り越して、腰の辺りまで長い。
そして、髪の毛全体を洗い終わると、一旦シャンプーの泡を全て落とし、次にリンスを手に取った。
リンスを手にひろげ、先程同様…手の平全体にひろげると、それを髪の毛に浸透させるようにして洗い、
さ〜っと髪の毛についた泡を洗い流した…。
そして、ようやく俺は彼女の髪の毛を洗い終えた……。
「よ〜し、終わったぞ!」
俺は目隠しをしたまま、腕で額の汗を拭う。
「ありがとう響史!すっごく、スッキリしたよ。髪の毛も、前よりも艶めいてるし、御礼にこれあげる♪」
そう言って、俺はルリに謎の物体を貰った。
「何だ、コレ?」
「それは、私の腕輪。記念にあげる…。絶対に失くさないでね?」
「あ、ああ…。ありがとう」
「うん、じゃあ私、体洗い終わったら上がるから、さっきの響史の部屋で待ってて!」
ルリに言われ、俺は軽く
「ああ…」
と返事をし、腕輪を手に握り締め、二階へ上がっていった…。