小説『死神転生』
作者:nobu()

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織姫の一件から数日が経ち、今度はチャドが巻き込まれる喋るインコの事件が起こっている。
というか、元殺人犯だった虚と一護が今現在目の前で戦っている最中だ。


それを眺めている俺の姿は死神の死覇装の上から浦原さんに借りた黒い布を被っている。
学校に義骸を置いてきたので、死覇装のままでは霊圧が漏れて監視がバレてしまう。

まあ、見つかればとても不審な格好だが、仕方がないだろう。



一護と戦っていた虚が追い詰められ空へと逃げたが、一護は空高く跳び上がり、虚へと最後の一撃を加えた。


そして、地獄の門が開き、中から現れた巨大な刀が虚の身体を貫き、中へと引きずり込んでいった。


(やっぱりあの光景はいつ見ても恐ろしいな…。まともな生き方をしてよかったと思うよ…)


とか考えていると、どうやら一護たちも会話を終えたらしく、解散していく。


誰もその場からいなくなったところで俺もその場を後にした。























…はずだったのだが。


「今までずっと何かの視線を感じていたのだが、貴様だったか。」


後ろを振り返ると、そこにはルキアと一護が立っていた。


「貴様の目的は何だ?何故隠れて私たちを見ている?」

「………。」


まずいなぁ…。どうして後ろからの接近に気が付かなかったんだ…。


「おい、だんまりかよ?なんか言ったらどうだ?」


何も話さない俺に痺れを切らしたのか、一護が少し威圧的な態度で問い詰めてくる。

…だが、俺としてもここで声を出すわけにはいかない。

目の前にいる二人は親友と戦友。

長い間離れていたルキアは分からないが、一護ならきっと少しでも声を聞けば俺が誰だか分かってしまうだろう。



「話す気はない、か…。」


そう呟くと共に、一護は背中から斬魄刀を抜いた。


「なら、ちょっとばかし力ずくで聞かせてもらうぜ!」


…というか、さっきまで虚と戦ってなかったか?どんだけ元気なんだ…


「こら一護!相手の力も分からないのにそう容易く突っ込むんじゃ…!」


ルキアがそう言うにもかかわらず、一護は俺への攻撃を止めない。

仕方がない…。見つかったのもこっちが気を抜いてたからだしなぁ…。

ふぅ。小さく息を吐くと、目の前に迫って来ていた一護の斬魄刀を指一本で止めた。


「「なっ…!?」」


ルキアも一護もやはり驚いていたが、そんなことはお構いなしに俺は一護の体を軽く蹴り、後ろへ飛ばす。

そして、懐から一枚の紙を取り出し、ルキアの足元へと投げる。


「こ、これは…!」


その紙を見て驚愕するルキア。その内容とは…



『表の姿は雑貨屋さん、しかし、裏の姿はなんでも屋さん!困った事があればぜひ浦原商店へ!!』



…浦原商店のチラシだった。

裏の姿についてはただの副業なのだが、一般向けの意味での内容だ。
ネズミ退治や雑草刈りなど、いろんな事も承っているらしい。


…ということではなく、俺がルキアにそれを渡した理由は、浦原商店に行けば全てが分かる。そういう意味を込めて渡したのだ。


「浦原商店…?貴様、この店と何か関係があるのか?…って、いない?」


チラシから顔を上げる前に俺はその場を一瞬で去り、帰路についていた。
目の前には誰もいなくなったが、夢などでは無い。

残された手がかり。手元に残ったチラシ。小さく息を吐き、ルキアはあの胡散臭い店主になんと質問しようか考えていた。



「いってて…。あいつ、一体なんだったんだ?」


飛ばされた一護も戻ってきたが、少し加減が足りなかったようで、所々を怪我している。

が、そんなことは当の本人は知らない。






















「えー!なんでそんな面倒なことしてくれたんッスか神崎さん…」

「いや、見つかっちゃったんだから仕方ないじゃないですか。それともあそこで一護と斬りあえばよかったってんですか?」

「別にそう言うことじゃないッスが…。はぁ。朽木さん、怒ると怖いんスよねぇ…。」



ルキア達から逃げてきた俺は浦原さんのところに戻り、事情を話していた。
まあ、ぶっちゃけ浦原さんに丸投げして対処してもらうために来たのだが。


「あ、そうだ、神崎さん。ちょっとその布一枚じゃ戦闘の時とか動きづらいでしょう?ちょっと新しい霊圧遮断装置を作ってみたんで試してみてほしいんス。」

「新しいものですか?…これも不便ではありませんが、まぁ、戦闘の時にはちょっと、とは思いますね。」

「やっぱりそうッスよね、はい、これをどうぞ!」


そう言って浦原さんが出した物は…


「…お面?」

「はい、お面ッス。」

「…いやいやいや、お面ッス。じゃなくて、逆に視界狭くなって戦いづらいでしょう!」


何故お面なのか。そしてどんな考えがあって、"ひょっとこ"のお面にしたのか?


「その点に関しては大丈夫ッス。着けてみれば分かると思うんスけど、そのお面、実は中から外を見ると何も着けてない時と変わらないんスよ!つまりはマジックミラーみたいなもんッス。」


…ホントだ。着けてみても視界が変わった気はしない…。


「…でも何でひょっとこ…?」

「気分ッス!お面と言えばひょっとこじゃないッスか?あ、それともおかめさんとかの方が良かったッスか?」

「…まぁ、そんなんだろうとは思ってましたけど。もちろんおかめさんは却下です。」



などと、くだらない話をした後、浦原商店を出て家へと帰った。





























その次の日…


「え?もう監視はいいんですか?」

「はい。というか、次見つけたらアタシが朽木さんにこっ酷く叱られちゃいます…。」

「…てことは、ここに来たんですね…。」

「そうッス。…怖かったですよー。あの朽木さん…。」

「…何があったかは聞きませんが、ご愁傷様です。」


俺が見つかって浦原さんに報告した次の日の夜、学校が終わった後に浦原さんから呼び出しがあったので浦原商店まで来ていた。

そして、先程のように、もう監視はいらないと言われ、これでしっかりと睡眠がとれる…と思った。


「でもそうしたら、俺はこれからどうすれば?」

「んー、大したことも無いですし、しばらくは何かあるまで自由にしていてもらっても構わないッスよ。」

「自由に…ですか。分かりました、そうさせてもらいます。」


まぁ、気ままに暮らせるならそれはそれでありがたい。
…そう長くは続かないだろうけど。


「では、これで失礼します。たまに夜一さん拝みに来ますねー。」

「えぇ。最近暇してるみたいなんで遊んであげて下さい。」


夜も遅いから、その後はすぐに家へと帰った。これからは夜ごはんもゆっくり食べられるかな?

最近はご飯食べたらすぐ仕事だったから彩萌と一緒にいることも出来なかったしな…。


てか最近こんなふうに終わってばっかじゃないか?
そんな事を考えながら眠りについた。


























と、思ったかい?


浦原商店を出た後、家に帰って眠るのではなく、俺がやって来たのは人気のない倉庫が並ぶ場所。
その中の一つにゆっくりと入って行く。


「おぉ、神崎やんけ。こんな夜遅くにどないしたんや?」

「…時間あるか?」

「あるっちゃある。なんやまさか今から…」

「頼めるか?」

「…えぇけど、あんま焦りすぎんなや。今までは月に2回やったのに、今月に入ってもう4回目やで?」

「分かってる。でも、早く完成させないといけないんだ。」

「はぁ…。しゃーなしやな、地下に来ぃや。ちっとだけ相手したるわ。俺も眠いからホンマにちっとやからな。」




ここには毎月2回来ていたが、今月に入ってからはもう4回目だ。といっても、俺は早くこれを完成させなければならない。

もう誰も失わないために、もう誰も傷つけないために。俺は強くなるしかない。

昔、ルキアや勝などの仲間を自分が関わった所為で苦しめてしまったと悩んでいた時、浦原さんに相談した事がある。
自分が関わったせいで不幸な道を進むことになってしまった人がいると。

そうしたら、浦原さんはこう言ったんだ。


『神崎さんに何があったのかは知りませんが、それなら強くなればいい。自分の友を、仲間を何があっても守れるように。自分が関わった所為で不幸な運命を背負わせてしまったなら、その運命ごと捻じ曲げられるほど強くなればいいんスよ。』
と。


だからこそ強くなる。もう誰にも悲しい思いなんてさせないように。


「だからこそ…」


そう呟いて、俺は自分の顔に手をかざす。自分の気持ちを確かめながら、ゆっくりと。



「ここで立ち止まってられない…!」



そしてその手を下へ振り払うと、













その顔には純白の仮面があった。









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