小説『東方薬師見聞録』
作者:五月雨亭草餅()

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「あーうー、負けちゃったよ」
どうも、軽くお隣の土着神の洩矢諏訪子をぶっ飛ばした薬師出雲だ。
で、俺の目の前にはカエルのような座り方をした諏訪子がいるわけなんだが、先ほどの戦いまでのような威厳はない。
それどころか、なんというか。
見た目のそのまんまのような気もしなくはない・・・・・・・・・・・・・・・。神の本性はこれか。
「で、俺が勝ったわけなんだが」
「信仰が欲しいの?」
「いや、いらん」
別にこれ以上信仰が増えてもなぁ。
もともと人間だった分だけあって崇められるとくすぐったいような感じがするし、どこか一線間を空けられているような気もする。
普通に俺と話してくれるのは一部の妖怪のみだ。それ以外は敬語を使ったりなんやらで・・・・・・・。
「特に要望はないが・・・・・・、そうだな。下手に人を祟で殺すようなマネをするな。俺が治療しなければ少年がひとり死んでいた」
「ああ、あの子ね。わかったよ、それだけでいいのかい?」
「まあな。また何かあったらこっちに来る。用があったら使いでも飛ばしてくれ。こっちから用があったら俺も使いを飛ばすだろうしね」
出雲はそれだけ言うと、妖怪とミジャグジの戦場へと飛んで近づいていく。
そして・・・・・・・・・、
「帰るぞ、洩矢の神は倒したからな」
戦っている最中だったものも、問答無用で空中に引き上げて、引きずるようにして帰っていった。




「不思議な奴だったね・・・・」
諏訪子はつぶやく。
これまで、信仰をかけたものにせよ、それ以外にしても戦争で負けたことはなかった。
そして、自分が蹴散らしてきた者たちは皆が皆、自分に信仰が奪われることを泣いてでも止めようとしたが、自分の手でそれを奪っていった。
今回、今度は自分が負けてしまった。だから信仰を奪われて自分は消えるんだと思っていたら、彼は信仰はいらないといった。
かわりに何を望むかと思えば人々を助けるようなこと。
「でも、手加減されてたのかな・・・・・」
彼女にとってはこれが一番心残りだった。
負けなしだった分だけあって、有頂天にでもなっていたのだろうか?と自分のこれまでを思い返すが、そんなことはないと思う。今回の戦争にだって、人も使ってミジャグジも人々から信仰を集める役のもの以外は全てつぎ込んだ。
それなのに負けたのは自分に落ち度があったわけではないと思う。
黒霊峰は武闘派の集まりとしても有名だ。
そんな彼らは100人程度の集まりなどではない。
その点に関しても手加減をされてしまったし、自分への攻撃ももっと強いものもあったのだろう。
それに、彼は自分が祟った少年を治療したとも言った。
本当になに者なのだか・・・・・・・・・。
「さて、帰ろうか。みんな」
諏訪子はミジャグジたちを引き連れて、社へと帰っていった。
これからは人への対応を変えたりしようか?
などと考えたりもしながら・・・・・・・・・・・・・・・。

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