小説『東方薬師見聞録』
作者:五月雨亭草餅()

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薬師見聞録、強力な力を持つ神々の争いの章    著者 薬師出雲

  〜現代語訳より一部抜粋〜

世界を創造した神々や、初期の神々などの一部の存在を除いて、神というものは人々が信仰することによって生まれる。
元はといえば、妖怪だったものがその強さゆえに神としてあがめられ、何百年という時間の中で妖怪としての存在を忘れられ、神としての力のみを残すことで完全な神になったものが土着神のなかにはたくさんいる。
そのほかにも、人々をまとめるために統率者が神という存在を作り、人々がその存在に従うという形式を利用して集落を統治しているものもいる。そんな人に作られた信仰であっても、そこに神は誕生する。

妖怪は、人から恐れられることによって誕生する。

神々は、人からあがめられる事によって誕生する。

どちらも同じく人の感情から生まれた存在なのだ。
そのため、妖怪も神も人間も皆似ている。
姿かたちの話ではなく、存在としての話だが・・・・・・・・・・・・・。
だがしかし、人にとっては神を認めることはできても妖怪を認めることはできない。
あたりまえだ。

あなたは自分たちに恐怖を与える存在を認められるか?

あなたは自分の仲間を殺す存在を認めることができるか?

残念ながらそれは無理な相談というものだろう。それが可能というものは少なからず、心が冷えあがってしまっている。
しかし、神々が全く人に害を成さないわけではない。
祟り神という存在を知っているだろうか?
祟り神は神の中でも特殊な部類。種類として、相手をたたる能力をもっている。その力は祟り神のそれぞれの力によって変わるが、人間を殺すようなことができるものもある。
想い神、もしくは思い神と表記するが、こちらの存在は妖怪と神のほぼ境界線上の真上である。
これは名前のとおり、完全に思いによって生まれた存在である。例えば、とある集落が妖怪に襲われたとしよう。そして、その集落は妖怪によって全滅した。人は、妖怪に殺される直前に妖怪を怨み、憎み、殺意を抱く。その感情が思い神となるのだ。
思いが強ければ強いほど思い神の力は強くなる。
そして、この神は最悪なことに理性というものが無い。存在を形作っている思いのみを考えて動くために、その思いを叶えるためにその邪魔となる存在を全て消す。それに人間も神も妖怪も動物も植物も関係ない。ただ殺す。力が強力だった場合、一番注意をしなければならない種類である。
付喪神。
これは道具が長い年月をかけて妖怪へとなるものだが、これによって生まれた妖怪は思い神と同じく、神と妖怪の境界線上にいるような存在である。
大事に使われてきた道具は、理性を持ち人を助ける行動もとる。
しかし、乱暴な使い方や、主人の悲劇に巻き込まれた道具は理性も持たず、悪霊と何ら変わらない。

結局のところ、妖怪も神も大差ないのだ。





新緑が芽吹く木々の下

彼らと一緒に歩いた道を思い出す

守れなかった

助けられなかった

忘れてはいけない

だが、それに縛られてばかりでもいけない。

罪は忘れてはいけないが、それに縛られつづけられてしまってもいけない。

自分の歩く道を見誤るな

自分の歩く道を踏み外すな

自分の歩く道をしっかり見つめろ。

ゆっくり歩いていこう

焦るな、焦れば見逃す

大事なことは落ち着いていなければ分からない。

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