燠破は、銀行強盗事件の後に風紀委員や警備員に捕まることを恐れてさっそうとその場から向け出した。結局、燠破は、お金を引き出せずに家に帰宅することになった。今日は、飯抜きだーと、燠破は、思いながら第七学区の自分の家を目指す。さっきまで雨が降っていたのだが銀行強盗事件後、雨が降り止んだ。今の時刻は、午後4時。まだ、太陽は沈まない。燠破は、やはり飯抜きは嫌なのか銀行を探し始めた。
(くそっ、ここら辺に銀行あった覚えねぇんだよなー。また、あの場所へ戻ったら風紀委員だの警備員だのに捕まると嫌だからなー。)
燠破は、コンビニの目の前を通り過ぎた。ん、コンビニ?燠破は、頭を一度かしげ考える。何か重大な事を忘れているような…………。
(ハッ、ATMがあるじゃないか!)
燠破は、バックから財布を取り出して金を取るためコンビニに突撃した。
「ウォォォォォォ!!」
ー風紀委員活動第一七七支部
燠破は、風紀委員活動第一七七支部に連行された。理由は、『すいません!!大声をあげてATMに食らいついている人がいます。もしかしたら、ATM強盗かもしれません!!』だ。燠破は、すぐ近くにいた風紀委員に取り押さえられて結局、お金を得る事はなかった。まぁ、コンビニで大声出してたら捕まるよなと自己反省中の燠破であった。今、燠破の目の前には一人の風紀委員が向かいの椅子に座っていた。名前は、確か華扇 美香と名乗っていた気がする。とても気がするだけである。燠破の目の前に広げられているのは、9枚の書類だった。燠破は、風紀委員に捕まったことが無かったのでこんなのを書くのは初めてである。なんか、契約書っぽいなーとか、燠破は思いながらなんか指摘してもっと面倒なことになるのは御免なので黙って名前を書き続けた。
「君が連続銀行爆破事件を解決したのか?」
風紀委員の質問に燠破は、えっ、何それ?状態であった。
「あれだよあれ、すぐそこの銀行が爆発しただろ?」
あぁ、あれかーと燠破は、思いながらこれで自分ですなんて言ったらまためんどくさいことになるだろうなーとも考えた。
「いえ、俺では………。」
否定しようとた瞬間、電子ロックされているはずのドアがズバコーン!!と、すごい音を立てながら開いた。入ってきたのは、常盤台の制服をきた少女二人と頭にお花飾りを飾っている少女だった。
「華扇先輩お疲れ様………あぁー!!!」
常盤台の制服をきた茶髪ツインテールの少女だった。後ろから入ってきたこちらも常盤台、肩まで届く短めの髪の少女。
「貴方は、あの時の。」
いやー、なんか嫌な予感しかしねぇなーとか思っているが契約書っぽい奴は書かないと目の前の風紀委員に殺されそうなので黙って書く。
「あれ、華扇先輩。これ風紀委員の契約書じゃないんですか?」
頭にお花を飾っている少女がこちらに近づいてきてそう言った。
「えっ?」
今の言葉が脳内でリピートされる。『これ風紀委員の契約書じゃないんですか?』『これ風紀委員の契約書じゃないんですか?』
「あぁ、そうだよ。」
今更気づいても後の祭りである。もう、この契約書にはサインをしてしまった。しかし、まだ間に合う燠破は、契約書を見つめそして、消そうとした。
が、
「じゃぁ、この書類は回しておくわ。」
華扇が、あっさりと紙を取り、
消すタイミングを逃してしまった。燠破は、軽く心の中で舌打ちを打った。
「ちょっと、待ってくださいな華扇先輩。本当にいいのですか?」
常盤台の茶髪ツインテールが、華扇を睨んだ。
「あぁ、良いんだよこんくらいなら。だって、君、面白そうなんだもん。」
華扇は、手をヒラヒラとしながら挑発しながら喋った。燠破は、茶髪ツインテール頑張れ!!と何が何でも風紀委員になる事を避けたい燠破は、心の中で応援していた。
「そうですの。分かりました華扇先輩がそうおっしゃるのなら。」
燠破は、嘘だろオイ。こんな簡単に治安を守る風紀委員を決めても良いのかよと、心の中で絶賛絶叫中なのである。
はぁとため息を履いている途中で不意に近くに少女が近づいてきた。常盤台の茶髪ツインテールではない肩まで届く短めの髪の少女だった。
「アンタは、私の喧嘩を横から奪い取った人よね。」
肩まで届く短めの髪からパチパチと電気が流れる。燠破は、電撃使いかと思いながら、初めて会う人にアンタ呼ばわりされたくありませんと心の中で反抗する。
「何のことでしょうか?」
肩まで届く短めの髪の少女は、自分の着ている制服を指差した。そこには、チョコレートなのだろうかなんか、酷いシミになっていた。だが、これには燠破覚えが無い。なんか、高そうな服だけど金を請求されたらヤダなと燠破は、のんきな事を考える。
「これ、アンタが、倒しちゃった銀行強盗にやられたのよ。」
この少女は、例のあのこの忌々しい展開へと追いやった連続強盗事件の時に逃げる銀行強盗に押されパフェを制服に付けてしまったらしい。
「それは、お気の毒に。」
その瞬間、電撃がこの部屋に走った。
燠破は、うだぁーと唸りながら帰路についた。辺りはすでに暗くなっていた。燠破は結局、風紀委員の腕章を押し付けられ、そしてお金も引き出せずに家に帰宅することになった。
すると、ふと燠破は、歩みを止めた。そして、機械のような目で真っ暗な脇道を凝視した。
食蜂は、真っ暗な道を全力で走っていた。食蜂は、学園都市Level5
の第五位。能力は心理掌握。学園都市最高の精神系能力の使い手であり、記憶の読心・人格の洗脳・念話・想いの消去・意志の増幅・思考の再現・感情の移植など精神に関する事ならなんでもできる十徳ナイフのような能力。
だが、この能力を持っていても食蜂は、逃げなきゃいけなかった。
「オイオイ、そろそろ鬼ごっこも終わらせようぜ。」
食蜂は、後ろから聞こえる声を無視して脇道の角を曲がった。
(ここまでかもねぇ。)
目の前には、運が悪く道ではなく壁が立っていた。
「別に殺そうとしているわけじゃねえょ。手を組もうぜってるだけだぜ。」
食蜂は、恐る恐る後ろを振り向く。そこに立っていたのは、学園都市Level5の第二位。垣根帝督である。
「私、軽そうな男は、趣味じゃないのよねぇ。」
Level5と言っても第一位と第二位には、絶対的な壁が存在しているし第二位と第三位の間にも壁は存在する。それが、第二位と第五位なら確実に巨大な壁は存在する。
「俺は、ただ第一位をぶっ殺すために手え組もうぜって誘ってるだけだぜ。Level5でも、お前は、まだマシなほうな人間だからな。」
垣根は、徐々に食蜂との距離を詰める。
「まぁいい。お前に二つ選択肢を与えてやるよ。このまま拒み続けて俺に殺されるか、何十人の男のオモチャにされるか。さぁ、どうする?」
食蜂は、選ぶとしたら前者よねぇと思いながら近づいてくる垣根とぶつかり合おうと決意する。この行為は、自殺に近いとわかっていても。食蜂は、ポケットからリモコンを取り出し垣根に向けた。垣根は、食蜂のこの動作でYESかNOかを判断しニヤリと笑った。
「おいおい、一人のお嬢さんに対して酷い扱いだな第二位。いや、お嬢さんじゃなくて女王様か。」
すると、不意に真っ暗な世界から一人の男の声が響いた。
「誰だてめぇ。」
垣根は、声の響いたところを睨みつける。
「誰だと言われても答える必要はないが、名前ぐらいは名乗ってやる燠破 彗燐だ。」
燠破は、右腕に風紀委員腕章を付けていた。そして、目を閉じる。
目を開ける頃には、燠破の目が茶色から赤に物理的な意味で変化していた。そして、辺りが一気に静けさを増した。この辺りが殺気で覆われて行った。
「燠破…………。聞いたことねぇ名だな。」
「えっ、ちょっとぉ。」
垣根は、そう呟くと背中から巨大な翼を出現させた。燠破は食蜂が何か言っていたが無視をし、それを見ると食蜂を抱きかかえ壁を消し逃走に入る。
「俺が『死神』ごときの器に収まりきるとでも思っているのか第二位。」
燠破は、食蜂を抱きかかえたまま後ろを振り向き右手を振った。上から下に。
ズカッと、巨大な鉄の塊が出現し垣根を封じ込める。垣根は、その程度の攻撃ならやすやすと回避する事ぐらい可能である。
「その程度の攻撃で俺が倒せるとでも?」
垣根は、自分の背中に出現させた翼を振るった。
「思ってるわけねぇだろ。」
サァっと砂が地面に落ちる様に翼が消えてしまった。
「情報コピー完了。再構築開始。
完了まであと三秒………二………一…………完了。完全コピー完了。モードLevel5 第二位 『未元物質』
燠破は、ふぅと、息を吸った。すると、燠破背中にも垣根と同じような翼が出現した。
「なにぃ!?」
「だから言ったろ『死神』ごときの器じゃねぇって。」
『死神』は、物質分散時の名前。
『神』は、物質創造時の名前。
「さぁ、どうするよ。逆の立場になっちまったぜ第二位。」
「そうだな、今の俺は、お前と戦うのは部がありすぎるここは諦めておくとしよう。」
垣根は、そう言うと平然とした表情で路地裏から去って行った。