「これからどうしよっかな〜」
街をぶらつきながら、これからの計画を立てようとするが情報が少ないのと海軍の動きが活発化しているため、あまり目立った行動が取れないことがネックとなり有効な策を立てることができないでいる。
「まぁ、どっちにしろ…情報を集めないとどうしようもないしな…今日は11番GRに行くか……」
ハルキはそう言って、今日の方針を決め、目的地に向かって一人で歩き出す。
周りには誰もおらず、単独行動のようだ。
…ま、ハンコック達は不服そうだったけどな……
俺が危ない所を調べて、あいつらは安全な所にいた方がいいしな……
それに、もしもの時のためにも……
―ドンッ―
「うわぁあ」
「何してるんだ、お前ら!相手はたった一人だぞ!」
考え事をしていたハルキの耳に聞こえてくる衝撃音と男達の悲鳴や怒号。
流石、無法地帯だなぁと思いながらもハルキは遠くからそれを観察する。
「うわぁ…すげぇな……あれ」
ハルキの視線の先にはアロハシャツを着た青年が厳つい男を蹂躙する状況が展開されていた。
蹂躙……もう、戦いにすらなっていないその様子にハルキは目を奪われる。
「なんや、こんなもんか…7000万も大したことあらへんな」
そして、あっという間に敵を全滅させてしまうアロハ男。
しかし……
「海賊舐めてんじゃねぇぞ、ガキが!」
ーバンッー
倒れている人の中から一人の男が立ち上がり、アロハ男の後ろから銃を撃つ。
その銃弾はまっすぐ胸に吸い込まれ……
ードサッー
「んな死んだ振りしてる奴が言うようなセリフじゃないだろ。」
「てめぇ…」
「うっわ、えげつないな〜、少年」
俺は地面に倒れていた敵の仲間を盾に使い、アロハ男と死んだ振り男の間に立つ。
「じゃ、俺はまた離れて見学しとくから頑張ってな、お兄さん。」
「待てや、ガキ。お前、俺の仲間に手ぇだしといてタダで帰れると思ってるのか?」
「いや、おっさん。もう一人じゃん。そんな…」
「少年、気ぃつけや。囲まれとるで」
「え?」
周りを見てみると何時の間にかたくさんの男達が現れていた。
「お前らには死んでもらうぜ」
「「断る」」
俺は石を、アロハ男は木の枝を男に投げつける。
それはものすごい速さで男に向かっていくのだが男は避けることなくそれを体に受ける。
当たればただでは済まないエネルギーを伴ったその二つの物質を受けたはずの男は微動だにしない。
そして……
「ハッハー、効かんわ。」
そう言って、両手を上げ、高らかに笑う男。
さらに男は服を脱ぎ、先程、自分たちが投げた石と木の枝が半透明な男の体に埋まっている様を俺達に見せつける。
「なんだ、ありゃ……」
「少年、見たことないんか。悪魔の実でな……」
「いや……それは知ってるんだけどさ、どうやって、あれに攻撃を……」
「ワハハハハハ、俺に攻撃なんて…」
「うっさいんや!アホ!わいはこの少年とはなしとるんや!邪魔すんな」
ーシュー
「ワハハハ、だから無駄だと……」
ーゴンッー
「ぐはッ」
「うわ、すげぇ…どうやって…」
さっきと同じ攻撃のはずなのに今度は男に取り込まれることなく、ダメージを与えていることに驚くハルキ。
「まぁ、興味あるんなら、後で教えてやるわ…でも、今は……」
「あぁ、こいつらを片付けてからだな。俺はあいつに攻撃出来ないから、周りの奴らを、お兄さんは……」
「あの髭面や!」
そう言って、俺たちはそれぞれの標的に向かっていった。
ードンッー
「ふぅ……」
俺は最後の敵を倒し、一息つく。
「ようやく片付いたようやな」
「まぁね。こっちは数も多かったし、仕方ないじゃん。それに終わってるんなら、手伝ってくれればいいのに…」
そんな俺を待っていたのかアロハ男が声をかけてくる。
「まぁ、面白いもんも見れたしな…」
「面白いもん?」
「少年の動きというより、戦法?後の先っていうやつやろ?」
「お兄さん、物知りだね。その言葉聞いたのほんとに久しぶりだわ。」
「あぁ、ちょっと昔の知り合いにそういった武術を極めた人がいてな。わいもその人から少しだけ教わったことがあるんや。…それと、少年、わいの名前はアオイや。よろしくな」
「あぁ、俺はハルキ。よろしく。」
そう言って、差し出された手を俺は握り返す。
「で、さっきの話なんやけどハルキはこれから先もその戦い方をするつもりなんか?」
「?」
「ほら、後の先ってのは相手の攻撃を避けたり、受け流したりしてその隙をつくもんやろ?安全性はあるんやろうけど…」
自分から攻撃とかしないのか…そう言ってくるアオイ。
確かにそういった戦い方も出来るし、実際に自分のスタイルも極めれば、相手の攻撃より先に自分の攻撃を相手に当てる「対の先」、相手が動き出そうとする瞬間を察知して、それよりも先に攻撃をする「先先の先」といったようにより敵の隙を突ける戦法にすることができるとされている。
でも……
「まぁ……これが一番自分の性格に合ってると思うしな…」
守りの中の攻撃、攻撃の中の守り…言うなれば積極的な守り、それが自分の生き方に合っているそんな気がして俺は爺ちゃんに拳法を習ってからこの戦法を取り続けている…そう俺は説明するのだが…
「そっか。でもな、そのままじゃ、いつか守りたいもんが守れんなる日がくるかもしれんで。この海には強いやつがごまんとおる。そいつらが全員良い奴とも限らんし、そいつらがハルキの守りたいもんを狙うことだってあるかもしれへん。せやから…」
同じところに立ち止まってないで進化しろ…でないと守ってる方も守られている方も永遠に変わることが出来ないぞ…と俺に言うアオイ。さらに…
「……ま、お節介かもしれへんけど…人生の先輩からのアドバイスや。自分や周りにとって何が一番良いのか考え直してみるのもええんとちゃうか?守られとる奴の気持ちを考えてみたりとかな…それがそいつにとってためになっとるんかとかな……さっきの戦闘でもそんなとこがちょくちょくあったしな…」
「守られてる者の気持ち…」
自分のやり方にこだわるあまりに、本来ならもっと早く倒せたはずの男達に多くの時間をかけてしまった現実、目的と手段の逆転を指摘され、ハルキは項垂れる。
「まぁ、まだガキなんやし、その歳でそんだけ強けりゃ十分やろうけどな。ま、ネガティブな話して悪かったな。お詫びにさっき興味持ってたもん見せたるわ。つっても、実際に体験するのが早いしな…ハルキ…ちょい、わいと組み手せんか」
そう言って、笑って立ち上がるアオイ。
先程、言われた事がまだ胸の中に渦巻いているが今後、あの髭面のような奴が現れるかもしれない。
そんな奴からマモリやハンコックを守る、その使命感からハルキは気持ちを震わせ、立ち上がり構えを取る。
「ああ!実際、俺も体で覚える人間だしな。よろしくお願いします。」
それを見て、アオイは楽しそうに笑い、
「よっしゃ!ほな、行くで!」
ハルキに向かっていった。
こうして、彼らにとって初めての戦いが始まった。