小説『ONE PIECE【大海に映る月】』
作者:masayuki()

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(side ハルキ)


「……で、説明してもらえるかな?」

「……」

「……」

「ハルキ〜?」

「だから、さっきから言ってるだろ?こいつはハンコックって言って……」

「その辺はもう聞いたからいいの。一緒にオークションで落札されて、4人で力を合わせてこの島まで逃げてきたと…ここまではわかったわ……」

そう言って、腕を組みながらこちらを見る幼馴染。

「でも、それなら、なんで連絡してくれなかったのよ?心配してたんだからね……それなのに…ハルキはそこのハンコックさんと仲良くしてるし……」

「ごめん……連絡しようにも手段がなくてさ…まぁ、この島にいればいつかは会えると思ってたからここに来たんだけどさ……」

本当は連絡する手段はないことはなかったけど、現在自分達はお尋ね者予備軍なわけで……事態が落ち着くまでは会うつもりはなかったんだよな……

「ん…わかった。とりあえず、そこら辺の話はひとまず置いといて………」

完全には納得したわけじゃないけど…と前置きをつけながらも一応は理解してくれたことにホッと胸を撫で下ろすハルキ。
しかし……

「あんた、ハンコックさんとどんな関係なわけ?」

その一言で部屋の温度が2度程下がった…気がした。










(side マモリ)


「あんた、ハンコックさんとどんな関係なわけ?」

言ってしまった……
私が今、一番気にしている疑問が口から流れ出す。

先程から聞いてたことだって大切なことだったし、ハルキが意図的にボヤかしてる所だって絶対的に言えば、大事なことだと思う。
私が最近この付近で話題になっている天竜人の事件の話とか知らないとでも思ってるんだろうか……
まったく、幼馴染なんだから困ってるんなら全部教えてくれれば…助けを求めてくれればいいのに……
普段ぶっきらぼうで口悪くて…そのくせ情の厚くて自分よりも他人の痛みに弱くて…
こっちが心配してもいつも大丈夫としか言わない……つまり…意地っ張りな天邪鬼なのだ……
そんなメンドくさい男の面倒なんて私にしか出来ない…と思ってたんだけど……

「どんな関係ってもなぁ?」

ハルキは困った顔をしてハンコックさんの方を向く。
ハンコックさんも少し困ったような、不安そうな顔をしてハルキを見る。
二人の首には同じ色にペンダントがかけられており、二人の親密さが感じられる。

「う〜ん……友達?……いや、仲間…かな?」

「「仲間…」」

ハルキの言葉に反応するマモリとハンコック。
前者は続きを促し、後者はその言葉を噛みしめるような呟きであった。

「そう…同じ目的を持って力合わせたんだしな。正直、ハンコックがいなきゃ逃げられなかったと思うし、生きていられたかも怪しい……ありがとな…ハンコック…」

「えっと…うん……こっちも…ありがと…」

そう言ってハルキを見つめるハンコックさん。
まぁ…ハルキはいつも通りなんだけどハンコックさんがねぇ…
最悪の予想は外れたけどそれほど楽観できる状態じゃないってことね……

「はぁ…とりあえず、分かったわ。ハルキ、他の船員にも会っときなさいよ。皆、心配してたんだから…ハンコックさん達は私が案内しとくから」

「おう、わかった。じゃあ、行ってくるわ。……あ、そうだ。」

「なによ?」

椅子から立ち上がり、私の目の前にやってくるハルキ。
何をするのかと思ったら私の手を取り、立ち上がらせ……

「マモリ……ありがと。お前がオークションで俺達を助けてくれたのも、またお前と会えたのもは嬉しかったよ。まぁ…なんだ……ただいま…これからはずっと一緒だ。また、よろしくな。」

手を握ったままニッコリと笑いかけてくるハルキ。

「…………」

久しぶりに呼んでもらえた自分の名前とずっと一緒だという言葉。

「あれ?もしかして…俺、首になった…?」

そして、その感動をすぐぶち壊す空気の読めない発言に私の日常が帰ってきたんだと実感する。

「…そうよ。あんたはクビよ…でも仕方ないからまた拾ってあげる…だから…これからも私を……」

「あぁ、分かってる。お前の面倒見てやるよ。じゃあ、そろそろ俺、行くわ。ハンコックもまた、後でな」

「うん…」

そう言ってハルキは出ていき、部屋には私とハンコックさんが残った。










(side ハンコック)


「行っちゃいましたね……」

「はい。えっと……」

「マモリでいいよ。よろしくね。ハンコックさん」

暫くハルキの出て行ったドアを見ていた二人であったがお互いに向き合う。

「うん。マモリよろしくね。私もハンコックでいいよ。さんなんてつけなくてもいいから」

「うん……やっぱり、可愛いなぁ…」

「え?」

マモリは私の隣の椅子に腰掛け、私の顔をまじまじと見る。

「えっと……マモリ?」

「あ、ごめん。私、仕事以外で同性の人と話すこと無くて……つい…ね」

そう言って、サッと離れるマモリ。

「同性と話すことがない?」

「そうなのよ。仕事柄、私以外男の人しかいなくてね……ま、ハルキって中世的な顔してるからあんまり男っていう感じはしないんだけどね…」

「そうなんだ。私とは逆なんだね……私は今まで男の人に会ったことなかったから……」

初めてあった男が自分を攫った人達でその次がハルキだった…
男は皆怖いものだと思い込んだ私は彼に冷たく接してしまって……結局、彼がボロボロになるまで心を開くことができなかった…

なぜか、初めて会ったばかりの少女にハルキへの負い目を話してしまう。
私がもっとこうしてればとかこうするべきだったとかそういったネガティブなことばかりが口から流れ出していく。

しかし、それをマモリは…

「まぁ、あいつはそのくらいでめげるような奴でもないだろうし、気にすることはないと思うわよ。寧ろ、困難なことがある方が燃える奴だしね。」

優しく受け止め、流してくれる。

「えっと……すいません。こんなこと話してしまって…」

「いいよいいよ。あいつがなにしていたのかも知ることができたし、ハンコックの性格もわかってきたしね…」

「え…?」

「ハンコックって、ハルキのこと好き?」

「ええぇえええ!」

「ふふふ、予想通りのリアクションね。 」

そう言ってニヤニヤと笑って私を見るその表情はなんだか大人っぽくて見惚れてしまう。

「ん?どしたの?」

「ううん…何でもない。ハルキのことだけど、私は…その…まだ分からない…もちろん人としては好きだけど…」

初めて話した男性ということもあるし、私達を守ってくれた優しくて素敵な人だと思う…だからこそ、ちゃんと考えていきたい。
吊り橋効果とかそんなものなんかじゃなく純粋に好きになれたと思えるまで真剣に考えたい。

自分の今の気持ちをそのままマモリに伝える。

「そっか…あいつも幸せ者だねぇ…ハンコックみたいな美女にそんなに思ってもらえるなんてね……」

マモリはそれに対して慌てることも焦ることもなく自分のことのように親身に聞いてくれた。
本当に優しい人でハルキが大切な人だというのも頷ける。
だから……

「えっと…その……マモリはどうなの?」

余計にこの人がハルキをどう思ってるのかが知りたくなって聞いてみたのだが……

「好きだよ…」

すぐさま返される答え、それは私とは違って正真正銘の彼女の気持ちであり、ハルキへの愛が感じられるものだった。
しかし……

「でも……このままじゃ……ハルキと私は……駄目なの…」

そう続けるマモリの表情は悲しげで儚げで……美しく思えた。


















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