小説『ONEPIECE 〜猫又海賊奮闘記〜』
作者:ノア()

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第一話

初恋ってのは誰にでも訪れて、そんでもって淡く消えちまうもんだろう。
誰でも自分の恋には鈍感で、本人も曖昧な言葉を相手に伝えるってのは簡単なことじゃない。
でも俺は言えるね、そりゃもう声を大にして、その子の目を真っ直ぐ見つめて。

「俺は、お前のことが好きだッ!」

・・・言った。
ついに言ったね。
6歳の小学校入学からの付き合いで早10年。
温め続けたこの想いを、ついに幼馴染に伝えてやった。
学校を出て少し行った所の交差点の近くで、俺の想いは彼女へと届いた。
俺はフラれることなんて微塵も考えないで、彼女とのめくるめく甘い恋人生活をシュミレーションしていた。

「ごめん、ムリ」

(わりぃ、待った?/ううん、全然/・・・んじゃ「ねぇってば」行こっか/ウン・・・手、つなぐ?「おーい」/え?/ほら/・・・そういって彼女は俺の手を握って・・・「オイ」彼女は頬を軽く染め「聞きなってばッ!」)

ゴパッ!!!

「・・・人を殴って出る音じゃねぇ」

ガチで痛い。

「ごめん」
「いや、いいけどさ」

俺は心が広いからな。

「そっちじゃなくて、返事」
「は?」
「だから、アンタと付き合う気はサラサラ無いわけ。わかる?」

え、どういうこと?

「・・・?」
「意味わかんねぇって顔すんな。もう、私帰るから」

そう言って、彼女は俺に背を向け歩き出した。
・・・・・・。
あれ?
俺、フラれた?
頭が回転を放棄し、俺はぼおーっと彼女を見つめる。
交差点に差し掛かり、青信号を確認して渡り始める彼女。
その視線はケータイの画面へと注がれ、ヘッドフォンを装着。
そして横から猛スピードで来るトラック、全く気づかない彼女。
・・・・・・猛スピードのトラック?
やっぱり気づかない彼女。

「っ!?オイ、危ねぇ!!」

考えるより先に走り出した俺は道へと飛び出し、勢い良く彼女を突き飛ばす。
向かい側の歩道へ彼女が倒れ込み、真横のトラックの運転手のおっさんは寝てて。
驚くほど全部がスローモーションに見えるのに、俺の体は言うことを利かない。
そのままトラックは俺の体を撥ね飛ばし、ちょっとした浮遊感が俺を襲う。
いや、痛みとは半端ねぇはずなのに、不思議と何も感じない。
俺の体はアスファルトへ激突し、・・・あ、今のはちょっと痛かった。
生暖かい何かに包まれた。
あ、これ血だわ。
視界が赤く染まってく。
そして周りのざわめきと、幼馴染の彼女の悲鳴をBGMに。
俺の意識は途絶えた。




気がつくと、近くの大学病院の病室・・・ではなく、どこかの安アパートの一部屋みたいな所にいた。
引き詰められた畳。
何となくカビ臭い室内。
一昔前のつまみでチャンネルを変えるテレビ。
ちゃぶ台。
テレビの前を陣取り、だらしなく寝転んで頬杖をつく女性。

・ ・・What?

一体どんな状況だ?これ。

『いやぁ、やっぱいいなぁ、冬ソナ。超泣けるよねっ』

古ッ!?
「冬ソナ」ってアレだろう?
韓流系のラブストーリーでさ。
正式には「冬のソラのナミダ」って言うんだよな。
確か6年前に流行って・・・母さんがすげぇハマって、俺も一緒に見させられたっけ。
・・・でも俺主人公の恋人の俳優嫌いなんだよな。
なんかいけ好かなくって。

『あぁー、わかるわかる!主人公の幼馴染の男の子のが爽やかで素敵だよね』


・・・Why?

なに、今俺声に出てた?

『いやいや、超モノローグだったよ?』
「うっそ、マジで?」
『マジマジ』

俺の思考なんでわかんだよ・・・。
つかここどこだよ。
しかも俺無傷だし。

『えっとねぇ、キミ、死んじゃったんだよねー』
「は?」
『だからさ、ここは所謂天国?みたいな所で、キミはもう肉体を持たない魂みたいな存在だから傷がないの。んでもってキミの考えが筒抜けなのは、私が神様だからだよ☆』
「あー、そっか。やっぱ死んだのか、俺」
『ウン。でもキミあんまり驚かないんだね』
「いや、あんだけ派手に跳ね飛ばされたら普通死ぬし。むしろ生きてたら逆に怖ぇーよ」
『だよねぇ』
「・・・なぁ、俺はこれからどうなんだ?」
『あ、生まれ変わるよー』
「あぁ、所謂”転生”ってヤツ?」
『そうそう。世界の希望とかある?例えば魔法のある世界とか、科学の発達した未来とか。あとは・・・アニメや漫画の世界にも送れるわよ』

アニメや漫画かぁ・・・ONE PIECEとか結構好きだなぁ。

『オッケー、ONE PIECEねっ』
「あぁああっ!待ってくれッ、間違いなく速攻で死んじまう!」
『大丈夫よ、ちゃんと要望は叶えてあげるわ』
「・・・チートとか?」
『そうそう、頭とかとか運動神経とか自然治癒力はデフォで良くしてあげるからそれ以外にしなさい?あぁ、そうそう、”頭が良い”って言っても、勉強面くらいよ?実際の行動は君の性格次第☆』

うーん・・・チートかぁ。

「とりあえず原作の開始で18歳になるように生まれさせてくれ。んでもって動物系の能力者になりたいからそういう風に取りはからってよ」

ふむふむ、と神様はメモを取ってる。

「あとはなぁ、戦闘センスも高めが良い。記憶力とかも良くして。あと六式とか覇気とかも使いたい」
『おーけーおーけー悪魔の実は適当に決めとくけどいいかな?あ、ついでに名前は?今決めちゃった方が良いでしょ』
「うーん・・・」

名前か・・・・・・。

「リオン・ノマッド・・・なんでどうよ?」
『リオンは、獅子?んでノマッドは放浪者ってこと?』

どちらもフランス語だ。

「そう、安直だけどさ、”世界の放浪者”ってことで」
『うわー、中二病だねっ』
「うっせ」
『んじゃあ”リオン”のほうは何で?』
「なんか、語感が好きなんだよね」
『あ、そう』

そんなやり取りをして、神様は書いてたメモを見返すと俺に確認してきた。

『んじゃ確認するよ。キミはリオン・ノマッド、動物系の悪魔の実能力者。原作開始では18歳。戦闘センスと記憶力を高めに設定。あと六式とか覇気とかもありね。他のデフォももちろん付けて・・・んでオッケー?』
「おーけー」
『んじゃ、飛ばすけど、いいかな?』

もう覚悟は決まった。
俺はもうリオンだ。
日本の男子高校生じゃない。

「・・・最後に聞いていいか?」
『ん、なぁに?』
「あの子は・・・俺が死んで泣いていたか?」
『・・・えぇ』
「そうか・・・すまない、最後にもう1つだけお願いがある」
『なにかしら?』
「俺の・・・日本での存在を無かったことにしてくれ」
『・・・・・・いいのね?』
「あぁ、俺は大切な人に悲しんで欲しくない。俺だけが覚えていればそれで良いさ」

神様は俺の真意でも探るかのように真剣な顔で俺の目を真っ直ぐ見る。考えは筒抜けなはずなのに。

『わかったわ・・・。でもいくら私でも人の存在を完全に消し去ることはできない』
「どういうことだ?」
『例えば、キミとその子がどこかへ行ったとして、キミのことを消すわ。でもキミが消えても「その場所へ行った」という記憶までは消し去ることができない。いつか、何かの拍子で記憶が蘇ってしまうかもしれないわ』
「それでいい」
『オッケー・・・それじゃこんどこそ送るわよ?』
「おう」

そしたら急に俺を襲う浮遊感。撥ねられた時とデジャヴです・・・。

「ってオイィイイイイッ!」
『達者でね☆』

俺の足下の畳は消え、俺の体は真っ暗な穴へと落ちていく。

「覚えてやがれ、馬鹿女神ぃいいいいっ!!!」
『バイバーイ☆』


こうして、俺の平凡な男子高校生としての人生は完全な終わりを迎えた。

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