小説『ソードアート・オンライン 未来から転生した魔王少年のお話し』
作者:沙希()

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第5話 お前のゲームのお陰で、俺に友人が出来たよ






キリトとユウキと俺の3人で僅か数分で1層目のボスは潰した
前よりも体力と攻撃力が上がっていたようだが、俺には関係の無い話である
立ち向かってくる敵は、容赦無用慈悲無用で潰す
泣こうが喚こうが敵と見なせば殺すの一言
取り敢えずこんなのは後にして、ボス攻略後俺達は直ぐに2層目に登り、今度はクエストを攻略している
1層目のクエストはあのクソ爺のモンスター100体殺しで大抵の奴等は一度諦めるかゲームオーバーするかであったが、俺とユウキは一応クリアしているのだがキリトの為にも仕方なくやっておいた
3人だったので僅か1分前に終わり、キリトと俺とユウキのレベルは23になる。




「い、1層目からしては早いレベルの上がりだな」



「茅場が敵の強化と1層1層の難易度を上げてるからな、俺等が始めた頃よりはレベルの上がりが速すぎる。これなら4層で50行きそうだな」



「マジで!?ていうか、前にも言っていたけど、エミルとユウキは茅場の知り合いなのか?」



「俺とアイツは友人だ。俺が路上でくたばりそうになってる所をアイツが拾って最初はアイツの家に住んでいたんだ。そんで数日後、暇を持て余して街にでも見学に行ってみれば何故か病院にいたんだ。で、ユウキと出会った」



「あの時のエミル、まだこんな風に偉そうじゃなかったんだけどね。私ね、実は元HIV感染者なんだ。お姉ちゃんも同じ感染者で、寿命がもう後半年もなかった頃にエミルが来て、エミルが去った数日後にHIVの対抗薬が出来たんだよ。それで私もお姉ちゃんも他の感染者も無事治療完了ってわけ」



「ニュースで見たよ。確か茅場が何故かある理由でHIVの対抗薬を見つけたって。量子物理学者なのに、薬学まで出来るから更に尊敬するよ」




「因みにHIVの対抗薬を見つけたのはエミルで、茅場さんに頼んで病院に提出した貰ったの」




「はぁ!?ちょ、エミル、お前凄いんじゃないか!?未だ改名されていないHIVの対抗薬を見つけるなんて、天才だろ!?」




実際、未来の日本ではHIVどころか、疫病、伝染病なんかの治療が出来るくらい進んでいるんだがな
知識だけなら頭にぶち込んでいたが、まさかこんな所で役に立つとは思わなかったからな




「取り敢えず、ささっと終わらせるぞ。迷宮区の宝を取って来いって、有り過ぎてどれがどれだかわかんねぇよ」




「そうだな。思ったんだけどさ、開かない宝箱を剣で殴って開けるのは止めないか?用意された鍵の意味がないだろ」



「そんな常識、私とエミルには通用しないよ♪ねぇ、エミル♪」




「くっつくな、ウザったい。だがよ、鍵を探してる時間があるなら探すさ。キリト、お前気が付いてねぇのか?」




「何が?」




「フィールド透視スキルで見ても鍵が別の場所に移動してんだ。だから探すのが面倒なんだ。それに鍵に近づく度に中級モンスターが置かれてる。明らかに俺等に鍵を近づけさせない為だろうな」




「やっぱりスゲェな、エミル。マニュアルになかったスキルを持ってるし、戦闘だってユウキ同様強いし」




「慣れろ。お前だって慣れれば強くなる。憧れで強くなれる強さなんて飾りだ。経験が全てだ」




「そう、だな。俺も頑張って、エミルみたいに強くなるよ。そん時は、いつかデュエルしようぜ!」




「誰に喧嘩売ってんんだ、馬鹿が。テメェなんて10秒で潰してやんよ」




「返り討ちにしてやるさ」




ふ、減らず口だけは一人前だな
だが、そいうのも悪くなぇな
こうやって軽口叩ける奴等は学校ではユウキや藍子以外に居なかった
男子からは恐怖の意味で遠ざかれ、女子からは軽蔑の様な目で見られている
別段気にもしなかったが、内心は寂しかった
だが、今は、茅場が用意してくれたソードアート・オンラインには感謝している。
このゲームのお陰で、キリトみたいな奴と友人になれたのだから




「じゃあ、速く行こうぜ。クエスト終了後の次は2層目のボスだ」



「仕切るなよ。だが、それは同感だな。さ、行こうぜ」



「そうだね。そう言えばさ、エミル」



「なんだ?」



「よかったね。友達が出来て」



ユウキの本来の顔ではないが、絶対にニヤニヤした様に笑っているだろう
たく、余計な所だけ鋭いんだよな、コイツは
この後、俺達は全フィールドを散策し、全ての宝をこじ開けた
隠し通路や部屋を探すが、一つも見当たらない


そしてキリトの常識が一つ増えた
エミルには開けられない宝箱は無いのだと
















ゲーム内では日が暮れた状態
2層目のボスを倒し、俺とエミル、ユウキはゲートの前に居る



「今回の層でレベルが24しか上がっていない。あんだけ敵を倒したのに1しか上がってないって・・・・」



「経験値バーを見たけど、結構高かったね。次のレベルまであと・・・150000だって」



多すぎる!
ていうか、23上がるまではまだ8万すら行ってなかったんだぞ!?
だけど嘆いても仕方がない。今のレベルでも十分2層目のボスは余裕で倒せた、というか、リンチの様なものであった
1層目同様、エミルがボスを追いかけまわし、俺とユウキで隙が出ている隙に攻撃しまくる
ソードスキルを覚えていたので前より早く倒す事が出来た



「これ、たぶん20までは大丈夫だと思うね。取り敢えず今日はお疲れ様」



「さっきまでの性格が嘘の様に優しくんなったな、エミル。確か、魔王モードだって?」



「う、うん。何故か戦闘、怒った時以外は発動しないんだけどね。それよりも、今日のMVPはキリトだね。僕が油断してた所をカバーして止めを刺したし、おめでとう」



「おめでとう、キリト」



「あ、いや、その、ありがとう」



リアル以外ではあまりそう言うのは慣れていなかったから、何を言ったらわからない
でも、こいうのもいいな・・・・・楽しくて、なんか暖かい
茅場に憧れてテスターとして受けたけど、こう言った出会いがあるんだな
等と思っていると、エミルが俺前に立つ



「はい、キリト。MVP賞品。受け取って」



そう言ってウィンドを開き、俺宛にプレゼントを贈る
送られてきたモノを俺はウィンドを開き確かめると、送られてきたのはなんと防具と武器であった
それも、取得が難しい物ばかり



「い、いいのか、これ?エミルやユウキが装備すればいいのものの、俺なんかに」



「いいよ、別に。ユウキはともかく、僕は装備を変えられないからね。唯一変えられるとすれば腕や足、アクセサリーだけだから。アイテム覧がパンパンだし、基地には一杯余りがあるから1つや2つくらいは惜しまないよ」



「それに、キリトはずっとその装備のままでしょ?1層目からずっと変えてないし、私達が武器やとか行かなかったのだが悪いから、それを兼ねてね」



「だから受け取ってくれるかな?仲間として、そして、友人としてさ」



・・・・・・・・・・・・・っ!!
ゲーム内では泣けないが、俺はたぶん寝ている状態でも涙を流しているのであるに違いない
この2人の優しさが、とても温かくて、手放したくなかった
俺は差し出された手を取り、ギュッと握手する



「あぁ、有難く受け取っておくよ。ありがとう、2人とも。それと、これからもよろしくな!!」



「「よろしくね、キリト!!」」



両親が死んで以来、妹や他の人達から距離を作っていた
ゲーム世界で一人で居る方が良いのだと思っていたが、俺は目の前の2人の背中を眺めている
2人のお陰で、なんか勇気貰った様な気がした



ありがとう
こんな俺を、友人と呼んでくれて
何時か、何時の日か2人、いや、スグも入れよう
ユウキと仲良くなれそうだし、気が合うだろう
リアルで2人と出会える日を・・・・・・・・・・・・・
























目を覚ませば俺は、自分の家の天井を見上げている
頬から伝わる涙をぬぐい、俺はナヴ―ギアを取り外す
さっきまでゲーム世界で出会ったエミルとユウキを思い出すと心が躍り、温かくなる
初めての友人だからなのだろうか?



「お兄ちゃん、終わった、て、どうしたの?泣いてたの?」



「あぁ、スグか。なんでもないよ。ただ、嬉しい事があったから、嬉し泣きしてな。今日は剣道の練習は良いのか?」



「ちょっと休憩かな。お兄ちゃんもどう?スッパリやめたけど、偶には」



スグがそう言って竹刀を差し出す
前はやっていたのだが、今はスッパリやめている
だけどエミルの言葉を思い出した



『憧れで強くなる強さなんて飾りだ。経験が全てだ』



ゲーム内での実力は間違いなくトップクラスの物言いだった
エミルと共闘している時だって分かる
アイツの戦闘する時は弱い敵でも必ずしも油断すらしない
現実じみた動きだったが、たぶん現実でも出来るのであろう
ならせめて俺も・・・・・・



「じゃあ、少しするとしようかな」



「え?ホントに!?」



「え?なにか不都合だったか?」



「う、ううん、そんな事無いよ。ただ、以外だなぁって思っただけ。コンピューターを始めてから、剣道をずっとやらなかったし、コンピューターばかりやってたから」



「憧れだけじゃ、強くなれないってゲームの友達に言われたからな。少しでも強ければ、憧れじゃない強さに辿り着けると思って。スグ、相手をしてくれないか?」



「っ!?(お、お兄ちゃんのさっきの表情に、少しドキッとしちゃった)う、うん!!じゃあ、外で待ってるから、私、先に行くね!!」



スグはそう言って顔を赤くさせたまま部屋を出ていた
なんで顔が赤かったんだ?まさか、風邪か!?



「スグ!!風邪なら無理するな!!」



俺はそのまま妹を安静させる為にスグの部屋に突撃し、扉を開ける



「へ?」



「へ?」



目の前には、下着姿で、剣道着に着替えているスグが居たのだ
白い肌に、小柄であるが不釣り合いに大きな胸が見える
スグの顔は段々とトマトの様に赤く染まり、ベッドの枕を掴む



「お兄ちゃんの、変態!!!」



「ぐほっ!?」



枕が俺の顔面に直撃
その追撃にぬいぐるみ、時計が体に直撃する



「馬鹿、馬鹿!お兄ちゃんの変態!!」



「ち、違うんだ、スグ!!誤解だ!!」



「いきなり部屋に入ってきて着替えを覗いて、何が誤解よ!!」



「ガハッ!」


枕を退かして弁解しようとすれば今度はペンケースが飛んできてモロに食らった。
お、俺のせいですか、スグさん?



この後スグは、プクッと可愛く頬を膨らませ剣道の相手をすることとなり、終始口を聞いてくれなかったが、どこかに連れて行くと言えば機嫌が良くなり、一番高い店のパフェを奢ることとなった
この事を後日出会ったエミルとユウキに話したら、大笑いされたのは言うまでもない

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