小説『Zwischen??Detectiv?』
作者:銀虎()

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(罰解色)
大野巡査は、後輩・在賀の伝達を受けて鼻息荒く天の家へ向かっていた。
そして、パトロールと評して何度訪れたその場所の玄関に立つ。
「国家を護るべき人間が、女子高生暴行とは嘆かわしい。自分が、国家に代わり静粛を与えよう。」
そこには、自衛官の服を着て、トートバックを持った利家が立っていた。
「誰だ、貴様。」
大野は、目の前に立つ人間の危険性を理解していなかった。

服を脱いでいる天を睨みつけながら、在賀は下種な笑みを浮かべていた。
「綺麗な体だね。汚される前でよかったよ。」
片手でスタンガンをお手玉しながら、在賀は嬉しそうな言葉を放つ。
後ろで動かなくなっている楓には微塵の警戒もない。
高電圧の電撃を受け続けた楓、情人なら指一つ動かせないダメージを受けているはずだが、

スッッ

何の苦痛や不自然な所なく楓は立ち上がる。そして、太腿に忍ばせた刀の様に滑り止めを巻いた鉄パイプを取り出すと、片手で持ち音もなく在賀の肩を強襲する。

ガッツ

在賀の肩から不気味な粉砕音が鳴る。

「なんだ、貴様。自衛隊みたいな服きやがって。」
大野は、構えながら吠える。
「中いる奴お仲間の自衛官OBだな。」
利家はそのまま脱力に立っている。
「自衛官だからっていい気になんじゃねぇぞ。」
殴りかかってくる大野。対して利家は余裕も持って見下すように立っている。

シュ

塀の陰から出来たのは、薄雲 壱。
素早く大野の襟と袖口を掴むと、アスファルトの地面に投げつける。そして、流れる様に体を動かすと、大野の首を締めあげる。
技は、地獄締め。
大野は、キリストの様に両手を広げられ頸動脈を絞め上げられる。
「柔道家として、貴様を許すわけにはいかんのじゃよ。」
壱はなんの、躊躇も手加減も遠慮も加減もなしに大野の首を絞める。
「俺は、ただの案山子だったわきぇ、残念でした。」
利家は、しゃがみ込み。大野の鼻先で、嗤いながら言った。

グッグギェ

声にならない断末魔を挙げて、大野は失神した。
「わっちらの出番は今回、これだけかや。」
壱はそういうと
「俺なんて、何もしてないぞ。」
利家は、肩を落とす。
「まぁ、の」
壱は、大野の靴を脱がして、靴から靴ひもを取ると手足を縛った。
「前回、わっちらが出張り過ぎたんじゃよ。」
壱が言うと
「にしたって、ひどいわな。」
大野を担ぎあげて、利家は天の家に入る。
「わっち、仕事なんでもう帰るぞ。」
といって、壱はとっとと帰ってしまった

「な、何で動ける。あんなにスタンガンに打たれて、動けるはずがねぇ。」
肩を押さえながら、在賀が喚く。
首を、肩をまわしてクキクキと鳴らして楓は、
「慣れているからですね。」
楓は鉄パイプをベルトに刀の様に差して天を抱き寄せる。
「昔、昔ですが。僕と天は母親からひどいしつけを受けまして、姉妹揃ってヒステリーが強かったんですね。」
まるで、一般市民が昔よく海に出かけた思い出を語る様に楓は喋る。
「僕の母親は、電撃狂でして。僕が、何か粗相をするとよく、スタンガンでしつけられましてね。」
楓が、引き裂くように服を脱ぐと、脇腹や腹に永劫消える事のない。電気の火傷跡が有った。
「こんなに、なるまでやられたんです。電気に対する耐性はものすごく有るんですよ。」
楓が、高校に入って友人がいないのは水泳の時間。無頓着な体育教師によって、これが明るみに出てしまったからである。その教師は、今も天達の高校で教鞭を振るう。
その姿に、在賀は絶句する。
「そして、天の方は親が離婚したため助かったんですが、僕はそうはいかなかったんです。父親が、仕事人で私に気付いてくれませんでして。」
何かが欠落した笑みを浮かべる楓。
「私と天の母親は、姉妹でしてね。天の分をもって時もありましたが、小3の秋にやっと保護されまして。」
楓は火傷だらけの体を天から離すと流動する。
「施設に張って間もなく引き取ってくれた家が、居合道道場主に家でして。わつぃはそれはきっかけで、居合5段の称号も得る事が出来ました。」
鉄パイプを素早く抜刀すると、在賀の右脇腹・鳩尾・眼に素早い打撃を与える。そして、叫び声が上がるより早くに喉に一閃を与える。すべてが終わると、天をもう一度抱く。
在賀はその場に倒れる。叫び声を挙げる自由さえを奪われて、

「天、楓・大丈夫か。」
利家が、大野を担いでやってきた。
頼みの綱の先輩が大男に担がれてやってきた事に、在賀は絶望の色を浮かべた。
「はい。服。」
トートバックからTシャツを出すと楓に渡す。
そして、迷彩柄の自衛官制服を着替える。
「もう、俺はいらないな。」
利家は帰えろうとした。
「僕は二人ともやっつけられるわけないだろ。警察の事情聴取にも付き合ってもらうよ。」
楓は、そう利家に宣告した。
「はぁ。」
利家は観念したように、返事する。

「大丈夫。」
自分の腕の中にいる天に向かって、楓は聞く。
「大丈夫だけど。」
在賀に服を脱げと言われていた最中だったので、天は今上半身が下着のみだ。
「この格好は、」
流石に赤面する。その事実に楓も赤面。
「今更かよ。」
利家は大きなため息をつく
「なぁ、あの言葉って。在賀をおびき寄せるためだけだったのか。」
これ以上ない位に赤面して天は、楓に問いかける。
「俺は邪魔だな。」
そういって、大野と有賀を引きずって部屋の外。

それを確認した二人。
「なぁ、どうなんだ。」
天は、楓をみる。
「硝子の死んだ時のキスは、ただ俺を落ち着ける為だけだったのか。」
「お前にとって、俺は友人として大事だからこんな危険を冒してくれたのか。」
「俺は、欲しいというのはウソだったのか。」
天は、謎を追及する。

「僕は、天を・・・・」
その先に、楓は言葉が詰まる。自白に追い詰められた容疑者の様に、
「欲しい。これから先も守ってやる。友人よりももっと大事な存在だから。」
2人はきつく強く硬く優しく抱き合った。


                〜続く〜

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