小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 ――2021年・ネオドミノシティ


 WRGP終了直後に出現したアーククレイドル。
 其の内部にて行われていた、人類の未来を左右するデュエルは終焉を迎えていた。


 「馬鹿な、此の私が負けるというのか!」

 「俺はどんな時だろうと仲間との絆を信じて戦う!此れで終わりだ!スターダスト・ドラゴンで究極時戒神セフィロンを攻撃、シューティング・ソニィィィィィック!」

 遊星のエースモンスターであり星屑の輝きを纏うドラゴンの攻撃が時戒神を襲う。

 「馬鹿な…私は…未来は…」
 ゾーン:LP0


 「俺は何が有ろうと此の街を守る!仲間達と共に!」

 世界の命運を賭けたデュエルは、ドラゴンヘッドの痣を持つシグナー、不動遊星の勝利で幕を閉じた。









  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス1
 『英雄と主の出会い』









 「やったな、遊星!」

 デュエルを終え、仲間達の元へと戻った遊星にジャックが声をかける。
 其の顔に浮かぶは笑顔。

 己のライバルが勝利した事、そして此の街を守った事に対する満足が伺える。

 「あぁ、皆のおかげで勝つ事が出来た。ありがとう。」

 そう言ってデュエル前に借りたカードを夫々の持ち主の返す。

 「良いって事よ!ダチの役にも立てないなんて鉄砲玉のクロウ様の名が廃るぜ!」

 仲間の中でも特に威勢の良いクロウが言う。
 その気持ちは此の場に居る全員の思いだろう。

 「クロウ…皆…」

 遊星もまた其の思いを受け止める。
 チーム5D'sの強さは此の絆といっても過言ではないだろう。


 だが、ゆっくりもしては居られない。
 遊星が勝利した事でアーククレイドルは消滅を始めている。
 急いで脱出しなければ其の消滅に巻き込まれ命は無い。


 「急いで脱出するわよ!」

 シェリーの号令で全員がD・ホイールを起動し脱出にかかる。

 だが其の直後、



 『クァァァァァァァァ!!』



 「アレは!」
 「赤き龍!」


 赤き竜が現れる。
 そして遊星と遊星のD・ホイールを其の巨躯が包み込む。

 「「「「「「「遊星!!」」」」」」」

 「此れは…!うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 『ショァァァァァァァァ!!』


 咆哮を残し赤き竜は消える。
 そして遊星も。


 「遊星…?遊星ーーーーーー!!」


 アキの声がアーククレイドル内部に虚しく響く。
 其れに応える声は無い。


 世界を救った英雄・不動遊星は、此の日ネオドミノシティから其の姿を消した。
 決して消える事の無い仲間との絆だけを残して…








 ――――――








 ――海鳴市・とある公園




 「?此処は…?」

 シティから姿を消した遊星は此の場に居た。


 ――シティとは違う。此処は一体何処なんだ?


 ともあれ大事なのは現状確認。
 D・ホイールは…動く。
 デッキもある。

 次に…


 ジャックやアキが居ない。
 赤き竜の痣は有る。
 アーククレイドル…無い。多分消滅した。
 自分が居る場所…不明。だがネオドミノシティではない。



 「…異世界に飛ばされたのか?」


 今ある情報から遊星が導き出した答え…其れは自分が異世界に飛ばされたのだという事。

 「此処で俺の成す事が有るというのか…?」

 そう考えなければ辻褄が合わない。
 赤き竜が自分を此の世界に導いたのならば、其れ相応の理由が有る筈。
 ならば…と考えたところで、


 「あの〜何してはるんですか?」

 声をかけられた。
 振り向くと其処には車椅子に乗った少女が。

 年の頃は龍可や龍亞と同じくらいだろうか?

 不思議そうな顔で遊星を見ている。


 「いや、少し考え事をしてた。」

 「こんな時間にたった1人公園で?」

 少女の言うとおり、辺りはすっかり夜の闇が落ちている。
 水銀灯の明かりのみの公園で物思いに耽っている遊星は、成程傍から見れば不審者に見えなくも無い。

 「それは君もじゃないのか?暗い夜に子供の1人歩きは危険だ。まして車椅子ではなおさらだ。」

 「分ってるんやけど、こんな月の綺麗な夜はしかたないやん。」

 「あぁ…確かにそうだな。」

 空を見上げれば、其処には綺麗な満月。
 少女の言う事も理解できる気がした。

 「…綺麗だな。」

 「やろ?こんな日はつい出歩きたくなってしまうもんやで。」

 「それはそうかも知れないな。…ところで此処は一体何処なんだ?」

 「は?」

 「いや、気が付いたらこの公園に居たんだ。」

 「気が付いたらて…其のバイクで来たんと違うん?」

 少女の言う事は尤も。
 普通に考えれば、何らかの目的を持って此の場に来たのだと思う。
 だが、目の前の青年は『気が付いたら此処に居た』と言う。
 それではまるで己の意志とは無関係に此の場所に連れられてきたようではないか?


 だから少女は問う。
 青年が一体何者なのかを…


 「お兄さん、何者なん?」

 真っ直ぐで純粋な瞳が遊星を見つめる。


 其の視線のせいだろうか?遊星は此の少女にならば話してしまっても良いと思った。


 「俺の名は不動遊星。ネオドミノシティからこの場所に来た。」

 「ネオドミノシティ?…聞いた事無いで、そんな場所。」

 「あぁ…恐らくは此処とは異なる世界だろうからな。」

 「…異世界って事なん?」

 「多分な。」

 あっさりと肯定する遊星に少女は…意外なほど納得しても居た。
 よくよく見てみれば遊星の着ている服は見た事がない。
 同様に其のバイクも現存するメーカーの如何なる機体にも該当するものが無い。

 「何で、此処に…」

 「其れは俺にも分らない。だが、シティを、未来を賭けたデュエルの直後、俺は此処に飛ばされた。赤き竜によって。」

 そう言って右腕の痣、ドラゴンヘッドを少女に見せる。

 「未来…其れでえっと遊星さんは勝ったん?」
 「『遊星』で良い。あぁ、勝った。仲間との絆で俺はもう1人の俺とも言うべき相手に勝った。」

 「もう1人の俺て?」

 「俺が戦ったのは破滅から世界を救うために未来からやってきた最後の人類『ゾーン』。其の正体は、俺の姿と人格をコピーした科学者だった。」

 「なんやもう、私の脳味噌じゃ理解が追いつかんわ。」

 さもありなん。
 余りにも内容がぶっ飛びすぎている。
 もし此れを語ったのが遊星以外であったなら、少女も一笑に服していただろう。


 だが、目の前の青年は嘘を付いては居ない事が理解できた。
 其れと同時に有ることに気付く。


 「でもそうなると遊星は家も何も無いん?」

 「…そうなるな。」

 「あっちゃ〜…やっぱりかい!今夜どうすんねん、如何なんでも公園で寝とったら風邪引いてまうで!」


 少女の言い分に遊星も考える。

 悪い事にアーククレイドル突入時に持ち物はD・ホイールとデッキのみ。
 早い話が一文無しなのだ、此れでは何処かホテルに泊まる事も出来ない。


 「…確かに。」

 「そこでや、家に来たら如何や?」

 「え?」

 「此処で会ったのも何かの縁や。其れに困ってる人を見捨てるほど、私は薄情や無いで?」

 少女の申し出は遊星にとって非常にありがたいもの。
 しかし、良いのだろうか?


 「良いのか?」

 「ええて。人の好意は素直に受け取るもんやで?」

 笑顔で言う少女に遊星も笑みがこぼれる。
 折角の好意を無碍にするのは失礼以外での何物でもない。
 それに、現状如何することが出来ないのも事実…成らば此の少女の好意は受け取るべきだ。


 「あぁ…そうだな。それじゃあ其の好意に甘えさせてもらう。えっと…」

 「あ〜うっかりや。はやてや。『八神はやて』私の名前や。『はやて』って呼んでや。」

 「分った。悪いが世話になるな、はやて。」

 「困った時はお互い様やで遊星。」

 互いに笑い合う。




 絆を紡ぎ世界の未来を守った青年――不動遊星。

 後に『夜天の主』と呼ばれることに成る少女――八神はやて。



 こうして出会った、本来ならば出会う筈が無かった2人。


 だがしかし出会った事で運命が急速に動いた事を、遊星もはやても未だ知る由はなかった…





















 To Be Continued…

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