小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 ――なんや美味しそうな蟹やな〜

 はやての目の前には良い感じに茹で上がった『タラバガニ』が。

 ――誰もおらへんな…私1人で食べていいやろね。ほな…頂きます

 そして、


 ――ガブリ


 思いっきり噛み付き…


 「うわぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 本日早朝、八神宅を発生源とした凄まじい悲鳴が響き渡ったそうな…









  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス2
 『平穏な日々、そして…』









 「えっと…その、堪忍してや遊星。」

 はやての目の前には頭を抑えて苦しむ遊星。
 何の事は無い、早い話はやては寝ぼけて噛み付いたのだ…遊星に。

 「い、一体どんな夢を見ていたんだ?」
 「いや〜目の前に美味しそうなタラバガニがあったからつい♪」
 「お前は蟹を殻ごと食べるのか!?」

 遊星が此の世界に来てから早1週間。
 初日のみならず今もこうしてはやての家で世話になっている。

 1日のつもりでいた遊星だが、はやての家庭事情を聞いた時に其の考えは吹き飛んだ。
 はやての家は豪邸…とは行かないもののそれなりに大きい。

 其処にたった1人で住んでいたのだはやては。
 聞けば両親は既に他界…今は後見人の世話になっているのだとか。
 だが後見人は此の家に来ることは無く、今まで1人で暮らしていたのだ。

 遊星も両親はいない。
 だが、仲間が居た。
 はやてには其れすら居ない。
 そして気が付けば口にしていた『帰れるまで世話になっても良いか?』と…

 此れにはやては驚き、そして了承した『えぇよ…寧ろ私の方からお願いや。』と。

 確りしているように見えるはやてだが、まだ9歳。
 1人暮らしが寂しく無い筈が無い。

 同居人が居る事はとても嬉しかった。


 そうして始まった同居生活。


 さて、冒頭から分ると思うが、遊星とはやて…一緒のベッドで寝ている。
 先に断っておくが遊星は決してロリコンなどでは無い!断じて無い!!

 世話になった初日、遊星は空き部屋を使わせてもらうつもりで居たのだ。
 だがしかし言われてしまったのだはやてから


 『そ、その嫌じゃなければ一緒に寝てもらえへん?』


 と。


 車椅子から上目遣いに言われて、しかもはやての現状を知った状態で断れるか?…否である!
 基より遊星は子供には優しく甘い。
 なので断ることなどありえない。
 そう言った訳で一緒のベッドで寝ているのだ…妙な想像をした奴は自害をするように!


 「まぁ寝惚けていたのなら仕方ない…」

 「ホンマに御免な〜。」

 「いや、良い。其れより今日は病院の日だっただろ?食事をして準備をしないとな。」

 「そやね。」

 そう、本日ははやての足の検診の日。
 予約時間は午前中なので早めに準備をした方が良いだろう。

 「それにしても…」

 「?」

 「何故『蟹』なんだ?」

 其の疑問は生涯解決されることは無いと思う。








 ――――――








 さて、朝食を済ませた2人は時間に遅れないように病院へ。
 最近は遊星が車椅子を押しての通院となっている。

 「ん〜やっぱり押してもらうと楽ちんやね。何か有っても直ぐに対処できるし。」

 「此の距離を1人で車椅子で行くのは辛すぎる。車椅子にエンジンでも付けるか?」

 「否…病院からの借りモン改造したらアカンて…」
 ――私物やったら間違いなくあのバイク…D・ホイール並みの魔改造がされてたんやろな…


 はやてがそう思うのも無理は無い。
 なんせこの1週間ではやての家の電化製品は数世代先の性能を持った物へと変貌しているのだ。

 事の起こりはTVの映りが悪かったことに起因する。
 修理に出そうかと悩んでいた所で遊星が『此れくらいなら直せる』と言ったので直してもらう事に。
 結果…其れはもう一般家庭に有るTVではなかった。

 遊星が己の世界にあった技術をふんだんに使って修理した結果…ソリッドヴィジョンのTVになった。
 此れを皮切りに、掃除機、冷蔵庫、洗濯機etc…etc…


 「異世界人ゆえに就職できんのがもったいないわ!!いっそ自分で修理屋でも始めたらどうや?」

 「其れも良いな。」

 と、まぁ道中こんな会話がなされている。
 一見すると其れは仲の良い兄妹にしか見えない。

 「…唯の居候と言うのも悪い、本気で考えてみるか。」

 てな事を言った所で病院に到着したのである。








 ――――――








 「如何解釈したものかしらね…」

 はやてが病院で定期健診を受けているのと略同刻、此処『時の箱庭』にて黒いローブを纏った女性が1枚の紙切れを手に呟く。
 『魔女』と呼ぶに相応しい姿をした女性の名はプレシア・テスタロッサ。
 此の時の箱庭の主にして数ヶ月前に起こった『ジュエルシード事件』の重要人物。
 余談だが、この場所は以前は『時の庭園』と言われてたのが現在は『時の箱庭』と名を改めている。
 プレシア的に再スタートの意味を込めて名前を変えたのだろう。

 「如何したのプレシア?」

 そんなプレシアに語りかける女性。
 温和な雰囲気だが其の瞳には強い意志を感じさせる。

 此の女性…何を隠そうジュエルシード事件に於けるプレシアの協力者で遊星同様『ネオ・ドミノシティ』からやってきた異世界人。
 とは言っても協力したのはプレシアの目的…アリシア・テスタロッサの蘇生に関してのみ。

 科学者であった彼女は瀕死の状態で此処に現れた所をプレシアに発見された。
 で、そのままなし崩し的に計画に協力。
 但しアリシア蘇生の条件として『ジュエルシードを集めているフェイトに此れまでのことを謝罪し娘として扱うこと』を厳命。

 まぁプレシアとしては其の程度は実に安いことであり承諾。
 結果アリシアは復活し、フェイトのことも『娘』として見れるようになっていた。
 更にはこの事件に関わった少女――『高町なのは』がフェイトの友人になったと言うのも嬉しい誤算だった。
 プレシアが今此処に居られるのも自身を連行しようとした管理局になのはが猛抗議したおかげなのだから…




 …閑話休題




 「さっき聖王協会の人がね…予言が出たって此れをね。」

 そう言って手にしていた紙切れを渡す。

 「…此れ如何言う事かしら?」

 其処に書かれていた内容…其れは…



 ――異世界より現れし、地に縛られた邪神が世界を破滅へと導く。
    法の魔導師は邪神の生贄となり、多くが其の姿を消すだろう。
    金の雷光と桜色の閃光が立ち向かうも邪神を止めるには至らず…
    されど夜天の主と赤き竜の使いが祝福の風と星屑の龍の力を持って邪神を地に還す



 「此れ予言?」
 「でしょうね。不明な点もあるけれど此の詩の中の『法の魔導師』は時空管理局と其処に居る魔法使い。
  金の雷光はフェイト。桜色の閃光は「なのはちゃんね?」…そうなるわ。そして夜天の主…これは近い内に『闇の書』が目覚めるのだと思う。
  でも分らないのは『異世界より現れし、地に縛られた邪神』と『赤き竜の使い』『祝福の風』『星屑の龍』…此れは何なのかしらね?」

 『貴女には分るかしら?』といった表情で女性を見やるが…


 ――星屑の龍…『スターダスト・ドラゴン』?まさかね…
 「分らないわ…唯近い内に何かが起こるということ以外は…」

 「…フェイトに一応の警戒をしておくように言った方が良さそうね…」

 女性は『星屑の龍』に何か思い当たったが其れは無いだろうと振り払い『分らない』とだけ言うに止める。
 プレシアはプレシアで此れから起きるであろう事に備え娘のフェイトに注意を喚起しておくことにした。








 ――――――








 場所は移って海鳴市のある図書館。

 「如何したのフェイトちゃん?」
 「お母さんからメール。『近い内に何かが起こる。警戒を怠らないように。なのはちゃんにも伝えておいて』…だって。」
 「『何か』ってお母さんアバウトすぎ…」

 母からのメールを読み上げる金髪ツインテールの少女はフェイト。
 車椅子に乗っているフェイトと瓜二つの少女はアリシア、2人ともプレシアの娘である。
 蘇生はしたものの長い間『死んだ』状態だったせいで筋肉その他が衰えているためアリシアはリハビリ中で移動は車椅子。
 そして此の2人と一緒に居る茶髪のツインテール少女は高町なのは…ジュエルシード事件に於ける最大の功労者である。

 「でもプレシアさんが態々こう言ったって事は何かが起きるのは間違い無いと思うの。」

 此れにはフェイトとアリシアも同意。
 プレシアが注意を喚起してきたということは間違いなく何かが起きると見て良いだろう。
 そうなった場合戦えるのはこの場でなのはとフェイトのみ。

 はっきり言って管理局は当てにならない。(強引にプレシアを連行しようとしたことでなのは達は(一部の人間を除いて)管理局に対して悪印象しかない)

 有事に備え気を引き締めるものの…


 「所で…どうやって取ろう?」

 フェイトの視線の先にある本。
 其れは棚の上段にあり、アリシアは勿論なのはとフェイトも背伸びしても届かない。
 司書さんに…とも思ったがカウンターで貸し出し手続きの最中で声を掛けられない。

 「困ったの…これじゃあ、「この本か?」…ふぇ!?」

 突然伸びてきた手が、自分達が取ろうとしていた本を棚から取り出し差し出してくる。
 驚いて其の手の主を見やると、特徴的な髪型の青年が…

 「?此れじゃなかったのか?」

 「う、ううん此れでいいの。その、ありがとうございます。」

 「いいさ。困った時はお互い様だ。」

 余り表情は変わらないモノの青年の纏った雰囲気に何処か安心する。

 「遊星〜どうしたん?」
 「はやて…悪いが連れが呼んでるから…」

 「あ、あの!」

 その場を去ろうとする青年――遊星を呼び止める。

 「?」
 「「「ありがとうございました。」」」

 改めて今度は3人でお礼。
 それに遊星は僅かに笑い、軽く手を上げてその場を去る。


 そして残された3人は…

 「良い人だね。」
 「格好良い…かな?」
 「何か不思議な感じがする人だったの…」

 異なる印象を抱いていた。

 「でもあの髪型って…」



 「「「蟹?」」」



 …たった1点を除いて…








 ――――――








 夜…只今20:30


 病院の帰りに図書館とスーパーに寄った遊星とはやては夕食を済ませ食後のリラックスタイム…なのだが…



 「遊星!?」
 「此れは…痣が反応している!」


 煌煌と輝く遊星の右腕の痣『ドラゴンヘッド』


 「な、なんや本が…」

 そしてはやてが後見人から貰ったと言う分厚いハードカバーの本も光を放っている。

 「其の本に痣が共鳴しているのか?」

 ドラゴンヘッドの輝きと本からあふれる光はドンドン強くなっていく。



 そして、



 ――カッ!!



 一段と強い閃光が走り、



 「?此れは一体?」

 光が治まると、今まで居なかった4人の人物がその場に佇んでいた…






















  To Be Continued… 

-2-
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