小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 「頼むぞジャンク・ウォリアー!ドリル・ウォリアー!」
 「ムァァァァァァ!」
 「フゥゥゥン!!」

 ジャンク・ウォリアーの『スクラップ・フィスト』と、ドリル・ウォリアーの『ドリル・ランサー』が地面を穿ち大きな穴を開ける。

 「此れくらいで良いか。ニトロ・ウォリアー、ジャンク・デストロイヤー。」

 穴の大きさを確認した遊星は、続いてデッキの中でも屈指のパワーファイターである2体のモンスターを呼ぶ。
 其の2体が担ぎ上げてきたのは、ディマクに弄ばれた竜の屍…


 ディマクが去り、遊星達もこの場にもう用は無くアースラに帰還するだけだったのだが、はやてとなのはが

 『竜のお墓を作ってあげよう?』

 と提案し、現在其の作業中なのだ。

 如何に理性無き凶暴な存在とて、死すれば物言わぬ骸に他ならない。
 其の死後をせめて安らかに……そう願った2人の少女の心の優しさは押して知るべきだろう。

 竜の骸を丁寧に穴に納めて上から土をかけての埋葬。
 全て埋まったところで木を組み合わせた簡単な十字架を立て、花を添えてお墓完成、皆で手を合わせる。

 「お前から魔力を蒐集しようとしていた俺達が言うのもおかしいが安らかに眠ってくれ。
  お前の体と魂を弄んだアイツは必ず俺達が倒す。だから安心して逝ってくれ…」









  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス20
 『敵の正体解析中』









 一行は竜の墓に手をあわせ其の冥福を祈る。

 時間にして約1分、其れを終え今度こそアースラに帰還なのだが…

 「…時にどちら様?」

 この場の『有る人物』にはやてが問う。
 視線の先にはちょいと布面積が少なめの服を纏った女性の姿が。

 墓を作り始めた頃から現われたこの女性、突然現われ墓作りを手伝ってくれたのだ。
 しかし、一体誰かが分からない。

 警戒は当然と言えるだろう。


 「あぁ…流石に分からないか。私だ、麒麟だ。」

 「「「「「えっ!?」」」」」

 遊星までもこの答えには驚いた。
 目の前のこの美女が幻獣の麒麟とは一体如何言う事だろうか?

 「そう言えば言っていなかったな。私達幻獣、神獣と呼ばれる種は『人型』を取ることも出来るんだ。
  まぁ、幻獣の姿の時は声も低く話し方も今とは違うから女性体とは思わなくても無理は無いな。」

 「何故其の姿に?」

 「単純にさっきの姿じゃ墓を作るのを手伝うのは無理だからな。人型なら其れも可能だろ?」

 「せやな。」

 麒麟もまた竜の死後の安息を祈っていたのだ。

 「さて、お前達はもう帰るんだろう?」

 「そうね。こう言っちゃアレだけど目的は無いもの。」

 確かに。
 そもそもこの世界に来た目的は今しがた埋葬した竜から魔力を蒐集する事なのだ。

 しかしディマクによって竜が倒され蒐集は不可能。
 其の竜の屍を埋葬した今、この世界に留まる理由は無いのだ。

 「そうか…可能ならば私も付いて行きたいが、此処を離れる訳にはいかない。機会があれば又会おう。」

 そう言うと麒麟は元の幻獣の姿へと戻る。

 『主等の様な人間と出会えた事を我が誇りとしよう。主等の進む道に我が雷の加護があらんことを…』

 瞬間、閃光が走り辺りを照らす。

 「「「「「!!!」」」」」

 閃光が晴れると麒麟の姿は無く、代わりに1枚のシンクロモンスターのカードが。

 「『雷幻獣−麒麟』……成程な、『雷の加護』ありがたく受け取るぞ。」

 どんなカラクリでこのカードが生まれたのかは分からないが、この場の全員がこのカードが『雷の加護』なのだと理解していた。


 「さてと…戻ろうか?魔力は蒐集できなかったけど戦力の強化は出来たしね。」

 「せやな。」

 戻る前にもう1度墓に手を合わせ、一行はアースラに帰還した。








 ――――――








 ――時空航行艦アースラ・訓練施設



 次元世界でディマクと戦ってから数日後、この訓練施設では、


 「飛竜双閃!」
 「烈鋼襲牙!!」


 シグナムとザフィーラが模擬戦の真っ最中。
 遊星によって強化されたシグナムの『レヴァンティン』と、これまた遊星作のザフィーラ専用デバイス『アイゼンプラウド』の性能テストが目的だ。


 新たに追加された双剣形態『シュナイダーフォルム』で攻めるシグナムと、其れを強固なガントレットで防ぐザフィーラ。
 正に『最強の矛と最強の盾の戦い』を体現したような攻防だ。


 「遊星のデバイスで更に防御に磨きが掛かったな。」
 「ふ、お前も其の双剣で戦いの幅が広がったようだが?」
 「当然だ!」

 再び激突。
 刃とガントレットがぶつかって火花を散らす。
 大凡模擬戦とは思えない激しさだ。


 尤も本人達がそれで満足しているのだから外野が何か言うのは野暮と言うものだろう。




 其の激しい模擬戦を施設の外で見てるのははやてとなのは、フェイトとアリシアとヴィータ、シャマル、アルフ…とまぁ略アースラのメンバー全員。


 「シグナムさんもザフィーラさんも凄い!」
 「シグナムの攻撃力もそうだけど、ザフィーラの防御力が前の…私となのはのデバイスの性能テストの時よりも上がってる。」


 「でも、一番凄いのはデバイスを此処まで強化&開発した遊星?」
 「せやな。いっそアリシアちゃんも遊星に何か作ってもろたらどうや?」
 「あっ、其れもいいね♪」


 「で、其の遊星は何処行ったんだよ?」
 「ん?あぁ、アタシとフェイトの家『時の箱庭』にクロノと行ったみたいだよ?沙羅とプレシアに用があるんだと。」
 「う〜ん…何か有ったのかしらね?」
 「詳細はアタシも知んないけどね。」
 「ふ〜ん。」


 どうも、遊星とクロノは時の箱庭にお出かけ中らしい。
 だからと言って何が如何と言うことは無いのだが…



 「紫電双刃閃!」
 「牙獣ぅぅ…走破ぁぁぁ!」


 そんな事は遥か彼方に蹴り飛ばし、模擬戦はさらに加熱しているようだった。







 因みに、艦長室ではリンディが沙羅もプレシアも居ないのを良い事に砂糖た〜〜〜〜っぷりのお茶を堪能していた…








 ――――――








 ――時の箱庭



 「お待たせ遊ちゃん、クロノ君。此れが解析結果。」

 「すまない母さん。」

 遊星とクロノが此処を訪れたのは、数日前に沙羅とプレシアに『ある物』の解析を頼んでおり、その結果が出たと言う連絡を受けたからだ。

 『解析なら遊星が自分でやればいい』と思うだろうが、今回はモノがモノだけに遊星ではどうしようもない部分が有ったのだ。
 何故なら解析対象はこの前の次元世界で見つけた巨大な蜘蛛の死骸なのだ。


 科学・工学系には滅法強い遊星と、理数系に強いクロノだが其処に『生物学』が絡んでくると事情は違ってくる。
 無論出来ないことは無いが、効率と正確さを求めるならば難病を治した沙羅と、クローン人間1人を作り上げたプレシアの方が専門といえる。

 特に遺伝子の解析ならばプレシアに勝てるものは早々居ないだろう。




 其れはさておき、早速其の解析結果を起動したモニターに映し出す。

 素人にはチンプンカンプンな数字やら記号やらがドンドン出てくる。
 生物学は余り得意でない遊星とクロノもこの数字と記号くらいは理解できるが…

 「此れは一体…?」
 「この図は、DNAの構造かな?」


 「其れを今から説明するわね。」

 プレシアは手元の端末を操作しながら結果を述べて行く。

 「結果だけを言うなら、アレは自然界には存在しない種だったわ。遊星君の予想は大当たりと言うことね。
  そうなると、つまりアレは遺伝子操作なんかで作られたと言う事になるんだけど問題はこの蜘蛛の遺伝子。
  地球のみならず様々な次元世界の蜘蛛の遺伝子が混ざってるの……其れも特別凶暴な種の遺伝子だけがね。」

 「つまり、遊星が見つけた蜘蛛は人為的に作られた『ミュータント・スパイダー』とも言うべき存在…」

 クロノの呟きはあながち間違いでもないだろう。
 其れを肯定するように今度は沙羅が説明を始める。

 「それだけなら只の人工生命体で片付けることも出来るんだけど、此処を見てくれる?」

 モニター映像には蜘蛛のDNA塩基配列と思われる式が映されている。
 沙羅は其の一部分を拡大し、2人に見せる。

 「此れは?」

 「この部分…この塩基配列パターンは『人間』のモノなの。」


 「「!!!?」」


 まさかの結果だ。
 複数の蜘蛛の合成体ではなく、さらに人の遺伝子まで僅かながら含まれていると言うのだ。

 「遊ちゃんが言う『ルドガーが使ってた蜘蛛』と此れはきっと別物。見た目が同じだけじゃないのかな?」

 「恐らくな。だが…」
 ――此れはほぼ間違いないな…ディマク本人である可能性は0じゃないが残る2つの可能性の方が遥かに高いな…


 この蜘蛛を見つけたときから、否ディマクとの戦いのときから感じていた違和感の正体がどうやら分かってきたらしい。


 「ありがとう母さん、プレシア。」
 「この結果は有効に使わせてもらう。」


 「えぇ、そうして頂戴。」
 「大変だろうけど頑張ってね。私達に出来ることがあったら何時でも協力するから。」


 「あぁ、其の時は又頼む。」

 解析結果のデータを受け取ると遊星とクロノはアースラに転移した。



 「ふぅ…其れにしても貴女の息子は律儀ね。」

 「ホント、何時の間に作ってたんだろこんなもの。」

 プレシアの視線の先には何かのパーツ。
 今回の『お礼』として遊星が持ってきたものだが…

 「私のデバイス専用の『カートリッジシステム』と其れの搭載ユニットなんて…」


 何ともすごい物を持ってきてるらしかった…








 ――――――








 ――何処かの次元世界



 薄暗い洞窟の中…其の奥から聞こえてくる不気味な音…


 ガリッ、ベチャ……バリバリ……


 湿った音と何かを租借するような音…


 其の発生源には蜘蛛のような何かの姿が。
 だが大きい…余りにも大きすぎる其の姿は蜘蛛ではなく『怪物』…


 「フフフフフ…矢張り魔力の満ちた肉は美味い…蒐集するよりも此方の方が効率が良いな。」


 食していたのは現地の高い魔力を秘めた動物か何かだろう。
 血の一滴も残さないと言うように其れを貪る。

 其れはホラー映画の1シーンと言われたら信じてしまいそうなおぞましい光景。


 「ふぅ…ふむ良い感じだ。これ程の上玉は早々居ないだろうが、この方法ならば本来の姿で魔力を集めることが出来るな。」

 満足そうに呟くと、怪物の足元から禍々しい闇が噴出し其の姿を包む。


 「全ては冬…精々首を洗って待っていろ不動遊星、そして闇の主たる小娘よ。」


 闇が晴れると其処にはディマクの姿が!
 ローブで顔を隠すと、そのまま何処かへと転移し其の姿を消した…

















  To Be Continued… 

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