小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

 「シューティング・スター・ドラゴンで、地縛神Wiraqocha Rascaを攻撃!『スターダスト・ミラージュ』!
  更に麒麟で、地縛神Aslla piscuを攻撃!『幻雷裂破』!」

 「クォォォォォォ!」

 『消え去れ…!』


 目の前に現われた7体の地縛神。
 圧倒的な存在感を前に、しかし其れに怯む事無く、遊星は2体の地縛神を攻撃する。

 その攻撃はWiraqocha RascaとAslla piscuを貫くが、攻撃された地縛神は一瞬揺らいだものの再度身体を持ち上げる。


 不死身……と言うわけではないだろうが、デュエルモンスターズのルールに則った存在と言うわけでもないようだ。

 「簡単には倒せないか…だが、無敵と言うわけでもないようだな。」

 「その様ですマスター。今の攻撃で2体の地縛神の魔力は減少したようです。
  地道にでは有りますが、攻撃を重ねていけば倒しきる事ができる筈です。」

 「あぁ、如何やら其れしかないみたいだな。カードを2枚伏せてターンエンド。」












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス24
 『夜天覚醒の刻』











 「サンダースフィア…逝きなさい!」

 一方のなのは達。
 大量のダークシンクロモンスターは…

 「サンダー……レェェジ!」

 無双状態のプレシアにより、現われた傍から霧散していた。

 遊星と騎士達が戦線離脱した直後に現われた大魔導師は正に『強靭・無敵・最強』であった。

 尤も、病気の時ですら『次元跳躍魔法』が使えたのだから、健康体ならばこの強さも頷ける。


 「いい加減しつこいわ……そうね、娘への授業も兼て良い物を見せてあげるわ…」

 そう良い、杖を掲げる。
 溢れんばかりの魔力は魔女そのものだ。

 「見ていなさいフェイト。これがフォトンランサーの究極型!」

 現われたのは無数のフォトンスフィア。
 その数は50個以上にものぼり、フェイトの『ファランクスシフト』を遥かに凌駕している。

 「闇は闇に…塵は塵に帰りなさい!フォトンランサー…デストロイシフト!」

 秒間10発と言う凄まじい量のフォトンランサーがダークシンクロモンスターを焼き尽す。
 1秒間でも500発超のランサーが放たれる計算だが、更に其れを10秒間も行ったのだ。

 都合放たれた5000発以上のフォトンランサーは、次々と現われてきたダークシンクロモンスターを全て葬った。
 そして今の攻撃を受けて数の限界が来たのだろう、最後の1体が消滅したあとに新たに現われる気配は無かった。


 「ぷ、プレシアさん凄い!」
 「さ、流石は母さん…」
 「健康だとこうまで凄いのかあの人は…」
 「味方で良かったねぇ…割とマジで。」


 闇の書の意志と交戦中の4人も…


 「…何者だ、あの魔導師?」


 いや、闇の書の意志さえもプレシアの凄まじい実力には驚いていた。


 「だが、誰が来ようと変わらない。我が主が目覚めない事には…な。」

 「はやてちゃんはきっと目覚める!ううん、絶対に目を覚ますよ!」

 「何故…だ?何故諦めない?」

 「はやては頑張ってるから。私達が諦める事は出来ない!」

 決して相容れない不屈の心と、諦めを促す言葉。
 故に其れは平行線…交わる事などないものだ。


 この平行線を終わらせる事ができるのは…はやてのみだった…








 ――――――








 「ねぇ、如何したのはやて?此処に来てからなんかおかしいよ?」
 「具合でも悪いのかい?」

 「いや、そうやないんけど…」



 ――ザッ…ジジ…るじ…れら…ッター…ザザ…の…ジジジ…



 「!!」
 ――く…またや!一体何やねんこのノイズは!……いや、此れはホンマに只のノイズなんか?何か…何か大切な事が…


 この小高い丘に来てから起こったノイズは、起きる感覚がドンドン短くなっていた。
 しかも、


 ――…やてちゃん……わ…達…ちだよ?

 ――…はや…は…が……ってやるぜ!


 其れはドンドン鮮明になって行く。


 「はやて?」

 「ゴメンお母さん、ちょぉ黙ってて!何や…大事な事を…」


 ――…れ達で…の呪いを…える!ジジジ…ならずだ!!


 「え?」

 今までよりもより強く鮮明なノイズ。
 いや、其れはノイズなどではない。


 ――書の呪いも超え、地縛神も倒す。俺達なら出来る。


 「!!……遊星?…そうや遊星や!!遊星だけや無い、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ!
  なのはちゃんとフェイトちゃんとアリシアちゃん……そや、こんな場所には皆も一緒に来たかったんや…!」

 「はやて…?」
 「何を言っているんだ?」

 今まで居た優しい両親が話しかけてくるが、はやては首を振って2人を止める。
 其れと同時に、今まで立っていた筈のはやては車椅子に座った状態になっていた。

 「此れは夢なんやな…私が心の奥底で望んでた願望をかなえたとても優しくて…何よりも残酷な夢。
  私のお父さんとお母さんは、私がもっと小さい頃に死んでしもたし、私の足も闇の書の侵食で動かす事は出来ない。
  何より此処には遊星とシグナム達が居ない……あのノイズを聞き逃してたら危なかったやろな…」

 「はやて…?」

 「大丈夫や。私はもう大丈夫……未練はあるけど私が居るべき場所は此処やない…
  お父さん、お母さん……夢でも幻想でも一目会う事が出来て嬉しかった。私は…皆の所に戻る!!」



 ――パリィィィン!!



 その瞬間、世界が砕けた。

 新たに現われたのは前に夢で見た『混沌』を体現したかのような空間。

 そして銀髪に紅い目のあの女性だ。


 「…お見事です。呪いを、超えましたね?」

 「ちょっと取り込まれそうになってしもたけどな…せやけど『心を強く持て』『絶望するな』その意味が漸く分かったわ。
  心が弱ければ夢に取り込まれてまう。
  其れに夢だと分かって、その幸福が幻想であったことに絶望したら矢張り最終的には夢に喰われるからな。」

 「はい、その通りです。ですが貴女はそのどちらもせず呪いを超えました。」

 「私だけや無いよ。皆が居たからや。さて此れからどないすれば良いんや?」

 この空間では必要ない車椅子が消え、はやては女性同様宙に浮く形に。
 そして向き直り問う。

 呪いを超えたのならば次の段階…機能の上書きをしなくてはならないのだ。

 「今は防衛プログラムが起動しており機能の上書きは不可能です。なので一時的に防衛プログラムの停止が必要です。」

 「方法は?」

 「プログラムの防御力を上回る攻撃ならば一時的には。
  主が目覚めた事で、私もある程度プログラムに干渉する事が可能になったので、行ける筈です。」

 「うん、分かった。」

 方法を聞いたはやてはニッコリ笑うと、大きく息を吸い込み…


 「なのはちゃん、フェイトちゃん聞こえるかぁぁぁぁ!?」


 力の限り叫んだ。








 ――――――








 「うわっ、はやてちゃん!?」
 「はやて!?」


 そしてその叫びは、しっかりと外で交戦中のなのは達に届いていた。

 「聞こえとるんやったら早いわ!
  今からこの子の機能を上書きすんのやけど、外で暴れとる子が大人しくならへんと其れができへんのよ?
  せやからなその子をちょいと抑えてほしいんや。
  まぁ単純に言うなら暴れん坊のその子に『全力全壊』で一発かましたって!」

 聞こえてきた其れは何とも単純かつ分かりやすいものだった。


 はやては目覚めた。
 そしてそのはやてが『全力で』と言っている以上やるしかない。

 書の呪いを完全に断ち切るために!


 「フェイトちゃん!」
 「うん。やろう、なのは!」

 瞬間発動するバレルフィールド。
 間違いなく全力の一撃の下準備だ。

 「全力全壊!」
 「All right.」


 「疾風迅雷!」
 「Yes sir.」


 「「ブラスト…シュゥゥゥゥト!!!」」


 放たれた必殺の合体攻撃。
 此れだけでも充分に強力だが…


 「フォトンランサー!」

 「ブレイズ…カノン!!」

 「サンダー…レイジ!」


 アルフのフォトンランサー、クロノのブレイズカノン、プレシアのサンダーレイジの追撃!


 凄まじい波状飽和攻撃。
 管制人格に少しばかりプログラムを抑えられた防衛プログラムの防御では其れを完全に防ぐ事は出来ずそれらを略完全に喰らってしまう。


 そして其れははやてにとって絶好のチャンスになった。








 ――――――








 「防衛プログラム停止。管理者権限発動可能。」

 其れを聞いたはやては女性に近寄り、その頬に触れる。

 「主…?」

 「永い事頑張ってきたな?もう大丈夫、もうアンタを『闇の書』なんて呼ばせへんよ。この本の本当の名前は『夜天の書』…
  何時の間にか、永い時の中で悪意を受けて改変され、バグを内包し、闇の書なんて呼ばれてもうたけど其れはお終いや!」

 そしてその手をとり…

 「夜天の主の名の下に、汝に新たな名を与える。」

 「新たな名…」

 「強く支える者、幸運の追い風、祝福のエール……リインフォース!」



 ――パシィィィン!!



 闇が砕けた。








 同時に外でも変化が起こった。


 波状攻撃を受けた闇の書が黒い球体に包まれ、其れとは別の場所にベルカ式の魔法陣が出現。



 そしてその中心から現われたのは十字剣を水平に持ったはやて。
 堂々と魔法陣の中心に立っているその姿はある種の『王』を連想させる。


 「おいで、私の騎士達…」

 静かに、しかし威厳を感じさせるその一言に今度は少しばかり小さめの魔法陣が4つ出現。
 其処からは…

 「烈火の将・シグナム。」

 「紅の鉄騎・ヴィータ!」

 「風の癒し手・シャマル。」

 「盾の守護獣・ザフィーラ。」


 「「「「我等ヴォルケンリッター、今主の下に!」」」」


 蒐集された騎士達が。

 そして…


 「私の騎士甲冑を…」

 『はい、我が主。』

 「祝福の風・リインフォース……セットアップ!」


 光がはやてを包み込む。
 そう、その光は再誕の光。

 呪われた存在とされてきた魔導書が、『真の主』の下でその主と共に覚醒した証。


 「『融合完了。『夜天の祝福』…今此処に!!』」


 光が収まりはやての姿が明らかになる。


 空を思わせる蒼い瞳に、金と銀を合わせたような色の髪。
 黒いインナーに白を基調とした上着、腰には黒いマントが金色の甲冑で止められ、頭にはリボンの付いたベレー帽。
 そして背には夜空を思わせる漆黒の鴉の羽が6枚…



 永きに渡って現れる事の無かった『真の夜天の主』。

 最初で最後のその存在が…覚醒したのだった…
















  To Be Continued… 

-24-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




魔法少女リリカルなのはViVid (6) (カドカワコミックスAエース)
新品 \588
中古 \1
(参考価格:\588)