小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

 ――海鳴市・月村邸


 ――Rererererererere…


 「はい、月村です…あ、アリサちゃん。」

 『すずか、アンタ今テレビ見てる?』

 「え?見てないけど。」

 親友からの突然の電話で、行き成りな内容にすずかはちょいと驚く。
 が、アリサの声は如何にも尋常ではない『何か』を見たと思えるものだ。

 『今すぐテレビ付けなさい!何か変な事になってるわよ?』

 「あ、うん。」

 言われるがまま居間のテレビをつける。


 其処に流れていたのは確かに俄かには信じられない『変な事』に間違いは無かった。


 『世界的に有名なナスカの地上絵が突然その姿を消すという怪現象が起こっています!あ、今又目の前で地上絵が消えました!!』

 驚き興奮するリポーターと、光を放ちながら消える地上絵。
 トリックとも思える映像だが、局を変えても何処もこの事を報じている以上『やらせ』の類では無さそうだ。

 「此れって…?」
 『わかんない。けど若しかしたらなのは達に関係してる事なのかも…』

 あくまで予感に過ぎないが、アリサの其れは実は正解だった。












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス23
 『再誕の地縛神』











 遊星達と闇の書の意志、そして現われた大量のダークシンクロモンスターの戦いは熾烈を極めていた。

 闇の書の意志は遊星達もダークシンクロモンスターも関係なく、無差別に攻撃を仕掛けてくる。
 おまけにダークシンクロモンスターの内何体かを吸収し力を増している。

 ダークシンクロは端っから遊星達をターゲットにしているらしく執拗な攻撃を仕掛けてくる。
 更に幾ら倒そうが次から次へと現われてくるので正直手に負えない状態。

 この2勢力を同時に相手にするのは流石に辛く、遊星達は3勢力の中では尤も厳しい戦いを強いられていた。



 だが、だからと言ってその胸の闘志が消える面子ではない。
 厳しいからどうしたというのか?そんな考えが基本な連中なのだ。
 だからこそ押し切られず3勢力の戦いは均衡を保っている。


 ――幾ら拮抗しているとは言っても埒が明かないな……よし、お前の力を貸してくれ!
 「レベル4のジャンク・サーバントとレベル2のボルト・ヘッジホッグに、レベル4のハイパー・シンクロンをチューニング!
  古の思いが集うとき、その思いは雷光の槍となる。光射す道となれ!シンクロ召喚、導け『雷幻獣−麒麟』!」
 『うむ、力を貸すぞ人間よ!』
 雷幻獣−麒麟:ATK3200


 現状を打開するために呼び出したのは次元世界で出会った幻獣――麒麟。
 雷を纏ったのその姿は矢張り神々しく、並ぶシューティング・スター・ドラゴンの姿も有ってまるで幻想世界のようだ。

 「麒麟の効果発動。手札の魔法カード1枚を墓地に送り相手フィールドのモンスター全てを破壊する!『落雷の裁き』!」
 『消えろ!邪悪なる者よ!』


 放たれた雷がダークシンクロモンスターを打ち据え霧散させる。
 だが、それでも再び現われるダークシンクロモンスター。

 恐らくディマクが直に呼び出したモンスターと言うわけでもないようだ。
 其れ以前に、もしディマクが操っているのだとしたら今までの攻防でとっくにライフは尽きているはずだ。
 だが、次々と現われるダークシンクロの群れは止まる所を知らない。

 其れはつまりディマクがデュエルディスクを使って召喚しているのでは無いと言うことに他ならない。
 早い話がこのダークシンクロモンスター達は闇に魅かれて現れた存在だという事だ。

 だが、其れが分かったからといって状況が変る訳ではない。


 「ざけんなよこの野郎…」


 そして次々と現われるダークシンクロに、遂にヴィータの(有るのかどうかも疑わしい)堪忍袋の緒が切れた。

 「うざってぇんだよテメェ等!アタシ等の邪魔すんじゃねぇ!!ぶっ潰してやる!ラビット・オブ・カース!」

 「う〜〜〜っさ〜〜!!」

 で、超巨大『のろいうさぎ』召喚!

 「「「でた〜〜〜〜〜〜!!」」」

 其れは誰の叫びだっただろうか?
 兎に角、矢張り衝撃的かつインパクト抜群である事は間違いない。

 「手加減無用だ!思いっきりやっちまえ!!」

 殲滅命令発令!
 目からビームか?誰もがそう思ったが…

 「う〜さ〜…うさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさ!」

 予想に反して繰り出されたのは超高速のパンチの連打。
 のろいうさぎがその拳(?)を振るうたびにダークシンクロが1体、又1体と消えて行く。

 「うさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさ
  うさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさ
  うさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさ
  うさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさ
  うさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさ
  うさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうさうっさ〜〜〜〜!!」

 正に圧巻!
 新たに現われたダークシンクロも滅殺!

 無論、新たに顕現しようとしてくるが、のろいうさぎの攻撃の間に遊星が体勢を整えていた。

 「永続トラップ『シンクロレベルイレイズ』!俺の場のシンクロモンスター1体を選択して発動。
  このカードが存在する限り、選択したモンスターよりも低いレベルのシンクロモンスターはフィールドに存在できない。
  俺が選択するのはレベル10のシューティング・スター・ドラゴン。此れによりレベルがマイナスのダークシンクロモンスターは存在できない!」

 先程麒麟をシンクロ召喚した後で伏せたカードだが、ヴィータがのろいうさぎを召喚した事で遊星のターンが終了したとみなされ発動が可能になったのだ。
 そしてこの効果は実に強力だった。
 ダークシンクロは如何に強力とは言えレベルは全てマイナスだ、対して遊星が選択したシューティング・スターは最高クラスのレベル10。
 つまり、もはやダークシンクロは存在が許されないのだ。

 常に幾多の状況を予測し、そして対策をしていた遊星だからこそ出来た事。
 ダークシンクロと戦った事があるということも関係しているだろう。

 「此れでダークシンクロは封じた!行くぞ皆!」

 邪魔者が居なくなり、再び対決すべきは闇の書の意志のみだ。

 「…お前たちに諦めるという考えはないのか?」

 「無いよ。諦めたらそこで全てが終わりだから!」
 「はやてはきっと目覚める。遊星がそう信じてるように、私達も其れを信じる!」

 自らの意思を、叫ぶ、ぶつける。
 闇の書の意志に対してだけではない、その中に居るはやてに届くように!

 「お前も我等と同じ騎士だろう?ならば主たる八神はやてを信じずして如何する?」
 「何時までもくだらねぇ意地張ってんじゃねぇ!」
 「もう良いでしょう?はやてちゃんを解放して?呪いは超えられるのよ。」
 「もう、終わりにしないか…?お前とて真にこんな事は望んではいないだろう?」

 騎士達も思いをぶつける。
 其れは最早『プログラム生命体に擬似的に搭載された感情』等ではない。
 はやてと、遊星と、他にも多くの人と触れ合ったことで確立された『個人』の感情だ。

 だが、其れを受けて尚、闇の書の意志は頑なだ。

 「無理だ。主は優しく、しかし残酷な夢に捕らわれてしまった。目覚める事は…無い。」

 深い闇を湛えた紅い瞳に光は無い………様に感じられた。








 ――――――








 はやては両親と共に少し小高い丘の上に遊びに来ていた。
 天気は上々、出掛けるにはこの上ない空模様だ。

 「ん〜〜〜えぇ気持ちや〜〜〜♪」

 そんな最高の場所で思わず伸びをする。
 実に幸せそうな『家族』の様子だ。

 はやてを見る両親の眼差しも暖かく優しい。

 「ん〜〜〜ホンマに最高やな♪どうせなら…」


 ――ジジッ…


 「!!?」

 突然、思考にノイズが走った。

 「どうかした、はやて?」

 「えっ?いや、なんでもあらへんよ?ちょっとあまりの気持ち良さに呆けてもうたみたいや。」

 「そやねぇ…そうなるのも分かるかなぁ…」
 「まぁ、珍しいくらいの快晴だ、無理も無いだろう。」

 両親共々笑顔。


 ――ジッ……や…て。…れ…ジジッ…めるな…ジジジッ…


 再び走るノイズ。
 しかも今度はノイズの中に何かが聞こえた。

 「…はやて?」

 「あ、うん。大丈夫や…」
 ――このノイズは一体なんやの…?若しかして私は…『大切な何か』を忘れてる…?


 ノイズの正体は分かりそうに無かった。











 今は未だ。








 ――――――








 「深き闇に沈め…デアボリックエミッション。」

 「シューティング・スター・ドラゴンの効果発動!このカードを除外し攻撃を無効にする!『スターフォース・バリア』!」

 再び始まった闇の書の意志との戦い。

 放たれる広域魔砲を遊星が防ぎ、その隙をなのは達が攻撃する。
 相変わらず恐るべき堅さの防御だが、それでも少しずつだが確実に攻撃は届き始めていた。

 「紫電双刃閃!」
 「ブゥゥチ抜けぇぇぇぇぇぇ!」

 一瞬のチャンスを逃さず入る波状攻撃。
 状況は有利になってきたかのように思われたが…

 「無駄だと言っている…封縛!」

 「なっ、此れは!」
 「バインドだと!?」
 「い、何時の間に…?」
 「ぐぬぅ…」

 騎士達がバインドに拘束されてしまう。

 「もう良い…お前達も本来の居場所に戻れ。収集開始。」
 「Sammlung.」

 無慈悲にそう宣告する。


 騎士達は魔力プログラムだ、其れを収集と言う事はイコール消滅だ。

 「そうはさせない!」
 「させられない!」

 真っ先に飛び出したのはなのはとフェイトだ。
 特にフェイトは『ソニックフォーム』を展開しての超高速移動。

 「やらせるか!」
 「どぉぉりゃぁぁぁ!」

 其れに続くようにクロノとアルフが飛び出す。

 遊星も其れに続こうとするが…


 『遊星!後方から巨大な魔力反応!』

 突然アリシアから通信が入る。
 其れによると後方から何かが来るようだが…

 「!!此れは…『亜空間物質転送装置』!」

 現われたのは『亜空間物質転送装置』。
 本来ならばフィールドのモンスター1体を除外する効果を持ったトラップカードだ。

 其れが今遊星の背後に現れているのだ。

 「…まさか!うわぁぁぁぁぁ!」

 突然の事で、一瞬反応が遅れたことが命取りだった。
 転送装置から光線が発射され遊星を捉え、どこか別の場所への転送を開始する。

 更にこの事は、より事態を悪くする。

 「遊星!!」
 「遊星さん!!」
 「く…しまった!」
 「やられたか…!」

 騎士達の救出に向かったなのは達が遊星に気をとられた隙に…

 「「「「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!」」」」

 4人が蒐集されてしまったのだ。


 光の粒になって消えた騎士達を、闇の書の意志は涙を流しながら見ている。
 恐らく自覚は無いだろうが、彼女自身が苦しんでいるのだ。

 「闇の書さん、如何して!」

 「闇の書…お前も私をそう呼ぶのか…」

 なのはの問いに、真に苦しそうに呟く。
 本当はこんな事はしたくないのだ。
 だが、壊れたバグだらけのプログラムを内包しているためこうする事しか出来ない…最悪の状態だった。






 最悪と言うならば状況は正に最悪といえるだろう。
 遊星が消えた事で『シンクロレベルイレイズ』の効果が消え、再び大量のダークシンクロが姿を現したのだ。


 おまけに騎士達が蒐集された事で戦力はガタ落ち。
 なのは、フェイト、クロノ、アルフで対処できる状態ではない。


 「「「「「「「「「「「GWyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyy!!!」」」」」」」」」」」」

 一気に襲い来るモンスター達。
 全てを打ち払う事は出来そうにない。
 絶体絶命……正にそう言う状況。




 「サンダー……レーイジッ!」




 だが、なのは達に到達する前に、ダークシンクロモンスター達は強烈な雷によって吹き飛ばされた。
 フェイトではない。

 ならば誰が?


 「…母さん!」
 「プレシアさん!」

 フェイトとなのはの視線の先には、黒いローブを纏い金色の杖を手にしたプレシアの姿が。
 威風堂々、そして発せられる魔力は『大魔導師』と言うに相応しい。

 「ふふ、遊星君の作ったカートリッジシステムは優秀ね。」

 「母さん…大丈夫なの?」

 「えぇ、もう全快よ。私も戦うわ…ダークシンクロは任せなさい?」

 プレシアの登場は正直にありがたい。
 経験面でも戦力面でもプレシアは誰よりも熟練している。
 其れを示すように…

 「邪魔よ。」
 ――パチンッ


 新たに現われたダークシンクロモンスター達も指を鳴らすだけで全てバインドで拘束。

 「消えなさい!」



 ――ドッガァァァン!!



 更に追撃の『サンダーレイジ』。
 プレシアの最強魔法『磔刑』だ。

 此れだけの広域超威力魔法を行使しておきながら、ダークシンクロだけを攻撃しているのは流石だろう。



 ガタ落ちになったと思われた戦力は、プレシアの参戦で完全に元に戻っていた。








 ――――――








 「く…此処は?」

 亜空間物質転送装置で何処かへと飛ばされた遊星は、一応は無事だった。
 ディスクのカードもリセットされてはいない。

 取り合えずステラ・エクィテスの体勢を立て直し飛翔する。

 「マスター、巨大な魔力反応が7つ近付いています。」
 「魔力反応?其れも7つか。」

 ステラに言われる前に、遊星自身少しだけ感じ取っていた。
 とても強く邪悪な力を…



 ――キュゥゥゥゥン…



 ――痣が反応している…来るか!


 痣が輝き、同時に魔力反応も強くなってくる。



 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



 大地から響いてくる轟音。
 高まる闇の気配…



 「「「「「「「Whooooooooooooooo!!」」」」」」」



 大地を割り、現われた巨大で邪悪な7体の邪神。
 巨人、ハチドリ、オオトカゲ、猿、シャチ、蜘蛛…そしてコンドルを模したその姿。

 其れは紛れも無く地に縛られた邪神…『地縛神』。
 この世界で遊星を待っていたのだ。

 「現われたか地縛神!お前達は、今此処で…今度こそ完全に倒す!ステラ!」
 「了解です。スピードカウンターフルモードに設定。機体リミッターを解放します。」

 機体から現われた真紅の光の羽が大きくなり、機体そのものが大きな光の鳥のようになる。
 そのまま上昇し、地縛神の頭よりも高い位置まで飛翔。

 「行くぞ地縛神!」

 因縁の戦いが幕を上げた。
















  To Be Continued… 










 *補足



 雷幻獣−麒麟
 レベル10    光属性
 幻神獣・シンクロ/効果
 チューナー+チューナー以外のモンスター2体以上
 1ターンに1度、手札の魔法カード1枚を捨てる事で相手フィールド上のモンスターを全て破壊する。
 この効果は自分のターンのメインフェイズでのみ発動できる。
 又、手札の罠カード1枚を捨てる事でエンドフェイズまで自分フィールド上のモンスターは効果では破壊されない。
 この効果は相手ターンでも発動できる。
 ATK3200    DEF3000



 シンクロレベルイレイズ
 永続罠
 自分フィールド上のシンクロモンスター1体を選択して発動する。
 互いのプレイヤーは選択したモンスターよりも低いレベルのシンクロモンスターをシンクロ召喚できない。
 選択したモンスターがフィールドを離れた時、このカードをゲームから除外する。
 このカードが破壊された時、選択したモンスターを破壊する。

-23-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




魔法少女リリカルなのは 全5巻セット [マーケットプレイス DVDセット]
新品 \84600
中古 \16979
(参考価格:\)