小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

 「フフフフフ…7体の地縛神を全て倒したか不動遊星。全ては予定通りだ。」

 はやて達が戦っている世界で、ディマクは自身に『光学迷彩アーマー』を使用し、その姿を隠していた。
 遊星の読み通り、『攻撃の無力化』を発動させたディマクは矢張り近くに居たのだ。

 姿を消し、気配まで消して居たので誰も気付く事ができなかったのだ。

 「あとは闇の書を取り込むだけ…そうすれば…」

 一瞬、人とは思えない程に顔を歪め、背筋が冷たくなる様な笑みを浮かべる。


 ――されど、厄災は終わらず、究極の邪神が目覚め闇も祝福もその身に取り込み破壊を撒き散らす。


 予言の不吉な一文が、現実の物になろうとしていた…













  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス26
 『ハメツノマエブレ』











 「波状攻撃で闇の書の闇の多重障壁を破壊し、コアを露出させ、そのコアを宇宙軌道に転送した上でアルカンシェルで破壊する。何か質問は?」

 「いや、無いで。ほな全力で行こか!」

 はやてが『真』に夜天の主として覚醒した直後に出現した闇の球体――闇の書の闇『ナハトヴァール』。

 『夜天の魔導書』を『闇の書』へと変質させた原因プログラム。

 エイミィとアリシアの解析では、数分で暴走を開始し周囲を破壊し始めるとの事。
 既に球体周囲からは、無脊椎動物の足を思わせる触手と、蛇の頭が付いた触手が現れ蠢いている。

 一刻の猶予も許さないが故に、殲滅作戦は一気に決まった。
 このメンバーならば不足は無い。

 それどころか直前でリニスも駆けつけ戦力は充分。
 転送された遊星もきっと戻ってくるだろう。


 「コアの露出まではアタシ等で抑える。」

 「油断は出来ない。さ、やるぞ!」

 「うむ…始まるぞ。」

 先ずは、アルフ、ユーノ、ザフィーラが球体周囲を囲む。
 陣形は整った。



 ――ピシッ……ググググ…ドドドドドドドドドド…



 「WryyyyyyyyyyyRyyyyyyyyyyyy!!!」

 球体が割れ、暴走が始まる。
 現れたのは何とも表現しがたい存在。




 『混沌』




 一言で此れをあらわすならばそうなるだろう。

 生物でありながら、無機質な機械的な部分を持ち、左右非対称の翼を広げ、その足は6本。
 魚とも蜥蜴とも言えない頭部、背には巨大な金属質のリング。
 そして、そのリングの略正面に人の女性の上半身が融合している。

 あまりにも醜悪。
 この世の悪意や欲望と言った負の面を具現化したような存在…絶対に消さなくてはならない。

 「始まった。…よし!広がれ戒めの鎖。捕えて固めろ、封鎖の檻!アレスター…チェーン!」

 「大人しくしてろ…チェーンバインド!!」

 「ぬぉぉぉぉぉ…!抑えろ、鋼の軛!」

 先ずは陣取った3人が、拘束系の魔法でナハトの動きを封じる。
 流石にこの質量が相手では完璧に…とは行かないが、それでもこの先制攻撃は確実にその動きを制限する。

 「先陣突破!なのはちゃん、ヴィータちゃん!」

 「遅れんじゃねーぞ、なのは!」

 「ヴィータちゃんこそ!」

 バックスとして、状況を見極めながらシャマルが指示を飛ばし、なのはとヴィータが第1陣のアタッカーとして突撃。

 「アクセルシューター・ドライブショット!」
 「Accel Shooter.」

 「シューーーーート!!」


 数え切れないほどの無数の誘導弾が回避不能の360度全方面から撃ち込まれ爆発が起こる。

 「テメェは今此処でぶっ潰す!!やるぞアイゼン!」
 「Jawohl.」

 「轟天爆砕!!」
 「Gigant.」

 「ギガントシュラーーーーク!!」


 ナハトをも凌駕するほどの大きさまで巨大化したアイゼンのハンマーヘッドが叩き付けられ多重障壁の一部が破壊される。
 それだけではなく、今の連続攻撃で本体にも少なからずダメージが与えられただろう。

 攻撃の手を休める暇は無い。

 「第2陣、シグナム、フェイトちゃん!」

 「あぁ、行くぞフェイト!」

 「はい、シグナム!」

 次に飛び出すは炎と雷光。

 「てやぁぁぁ!」

 先ずはフェイトがザンバーフォームから斬撃を飛ばし触手を切り払う。
 シグナムはフェイトよりも少し高めの位置で魔法陣を展開し攻撃体勢に。

 「行くぞ、レヴァンティン。」
 「Bogenform.」

 レヴァンティンの本体と鞘が変形合体し『弓』の形を取る。

 「行くよ、バルディッシュ。」
 「Yes sir.」

 フェイトも攻撃体勢に。


 「翔けよ、隼!!」
 「Sturmfalken.」


 「撃ち抜け、雷神!」
 「Jet Zamber.」


 撃ち出された矢は炎の隼となり、3つ目の障壁を破壊。
 追撃の雷は障壁の最後の1層を切り裂き、更に本体をも切り付けダメージを与える。


 「Gaaaaaaaaaaa!!」

 が、ダメージを受けた場所は其処から再生し、更に醜悪さを増して行く。
 まるで悪意と欲望は尽きないかのように…


 「まだよ!プレシアさん、リニスさんお願いします。」

 「お任せを。ふふ、こうして共に戦える日が来るとは思っても居ませんでしたよプレシア。」

 「其れは私もだわ。さぁ、行きましょう。」

 「はい、マスター!」

 第3陣は稀代の大魔導師とその使い魔だ。
 魔導の運用技術と経験ならばこの場の誰よりも熟練しているプレシアと、その全てを受け継いだリニス。


 「行きます!」

 その類稀な強さを遺憾なく発揮するように、リニスの錫杖から放たれた魔力が刃となりナハトを斬り付ける。
 無論、ナハトも黙っては居ない。
 再生した触手を使って排除を試みるが、

 「邪魔よ…消えなさい!」

 一瞬で全ての触手をプレシアによって拘束され身動きを封じられる。

 「闇を断ち切る閃光の刃。プラズマ…セイバー!!」

 「終わりよ。サンダーレイジ……レクイエムシフト!!」

 突き刺さった魔力の刃を伝導体にして放たれたリニスの一撃と、一切の情けを感じさせないプレシアの強烈無比な雷。


 「Gugaaaaaaaaaaaaa!!」


 生体組織を破壊され、しかしそれでも未だ朽ちない。
 恐るべき速さで再生が成されて行く。


 「リインフォース、もう終わらせよ。」

 『はい、我が主!』

 だがそれでも諦めない。
 夜天の主として覚醒したはやてと、その融合騎として本来の力を取り戻したリインフォースが事態を終わらせんと動く。

 「彼方より来たれ、宿木の枝。」

 『銀月の槍となりて、撃ち貫け!』

 共に心を一つにし、必殺の一撃を放つ。

 「『石化の槍、ミストルティン!』」

 書の呪いを越えたはやてと、真の主を見つけたリインフォース。
 その2人の一撃は凄まじく、上空から降り注いだ7本の槍がナハトの巨体を撃ち貫く。
 それだけでなく、槍が刺さった部分から石化し、巨体は大地に倒れ伏す。

 決定的な一撃を与えるチャンスだ。

 「クロノ君!」
 「クロノ!」
 「クロノ君!」

 なのは、フェイト、はやてが呼びかけるは執務官のクロノ。
 そのクロノも既に準備は完了している。

 「準備は出来てる。デュランダル!」
 「OK Boss.」


 デュランダルを起動し、そのビット兵装を展開。


 「悠久なる凍土、凍てつく棺のうちにて、永遠の眠りを与えよ。」

 絶対零度の魔力が放たれ、それが射出されたビットに反射しナハトを閉じ込める。

 「これで終わりだ…凍て付け!」
 「Eternal Coffin.」

 裂帛の気合と共に最大まで高められた凍気が、ナハトのみならず、海も、周囲の景色も氷で覆いつくして行く。

 デュランダルの性能だけではない。
 努力で才能を超えようと、他の誰よりも鍛錬を続けてきたクロノの力がこれほどの現象を引き起こしたのだ。

 石化され、更に氷付けにされたナハトは動く事ができない。
 止めを刺すならば今だ!

 「なのは、フェイト、はやて!!」

 クロノが止めの一撃を指示するが…

 『クロノ君、待って!!』

 「エイミィ?如何した?」

 エイミィから通信が入る。
 その声の感じから嫌な予感がしてならない。

 『ナハトの直ぐ近くに巨大な魔力反応!…此れは!!』

 「エイミィ?おい、如何した!エイミィ、応答しろ!!」

 突然通信が遮断され、詳細は分からず仕舞い。
 だが、聞かなくてもクロノも嫌な予感はしていた。
 恐らくはこの場の全員がそうだろう…


 「な、なんやアレは…!」

 「石で出来た…心臓?」

 「物凄く、嫌な感じがするの。」

 しかしてその嫌な予感は現実になる。
 身動きできないナハトの後ろに現れたのは、石造りの心臓。
 途轍もなく巨大な其れは、無機質な見た目でありながら、確実に脈動している。


 ――ドクン、ドクン!


 見る者を不快にさせる鼓動音。
 其れを響かせている物体…

 「此れはもしかして…」

 『間違いないでしょう。』

 真っ先にはやてが其れの正体に気付き、リインもそれを肯定。
 其れを受けて、はやては巨大な心臓に向けて一声。

 「隠れとらんと出てこんかいディマク!この期に及んで高みの見物とは感心せぇへんで!」

 最早其れは確信。
 感じ取った濃厚な闇の気配。
 其処から的確に敵の居場所を感じ取ったのだ。

 「成程、驚くべき感覚だ八神はやて。流石は闇の書の主。」

 「訂正しとき。この子はもう闇の書や無い。夜天の書…祝福の風『リインフォース』や!」

 現れたディマク。
 だが、その身から溢れ出る闇の気配は前とは比べ物にならないほど強い。

 「貴様…!一体…」

 シグナムでさえも此れには驚く。
 ありえない位に強い闇の力なのだ。

 「くっくっく…いや、実に見事だったぞ今の攻撃は。貴様等の攻撃で闇の書の闇は崩壊寸前だ。」

 「ったりめーだ!アタシ等はコイツをぶっ潰すために此処にいるんだからな!」

 ヴィータの強気な発言。
 だが其れにもディマクはまるで怯まない。

 「私としても貴様等には礼を言わなくてはなるまい。……貴様等と不動遊星のおかげで最強の地縛神が目を覚ますのだからな!」

 「「「「「「「「「『最強の地縛神!?』」」」」」」」」」

 「その通りだ。不動遊星は確かに転送先で7体の地縛神を葬り去った。だがこの世界には更なる力が眠っていた!
  しかし、その強大な力の解放には7体の地縛神の魂も必要だった。故に遊星には地縛神と戦ってもらった。
  そして、復活に必要なエネルギーは…この闇の書の闇から蒐集ができる!此処まで弱らせた事で、逆に貴様等は絶望と破滅を導いたのだ!!」

 瞬間、石の心臓から光の縄が飛び出し、ナハトに巻きつく。
 そして間髪入れずに、その巨体を吸収してしまった。

 「馬鹿な!こんな事が!!」

 「現実だ。ククク、感じるか闇の鼓動を?生まれるぞ最強の地縛神が…!」


 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


 高まる闇の鼓動。
 心臓が開き、光が天を穿つ。

 「見るがいい!此れこそが最強の地縛神だ!」

 光が晴れ、現れたのはナハトに負けず劣らずの醜悪な物体。
 巨大な肉界に7体の地縛神の頭と夫々の体のパーツが張り付いたモノ。
 もはや生き物とすら言えないが…


 「Goooooooooooooo!!」


 覚醒の咆哮一発。
 それだけ。
 只それだけのはずなのに…


 「きゃぁぁぁぁ!!」
 「く…うわぁぁぁぁ!!」
 「あ、アカン!!」
 『なんと言う力だ…!』

 今まで戦っていたはやて達が簡単に吹き飛ばされる。
 しかも吹き飛ばされただけではなく、其処に生じたソニックブームで可也のダメージを受けてしまった様だ。
 只の咆哮でこれならば、本気の攻撃の威力などは考えたくも無い。

 「く…な、なんんつー力や…!」
 「油断できない相手なの…!」

 凄まじいまで力に息を呑む。
 が、其れすらもディマクは許さない。

 「此れでもまだ完全ではないな…やれ!!」

 究極地縛神に命じ、其れがはやてに向かって一直線に無数の石の槍を放つ。

 「く…!」

 回避しようとするが、3桁を超える攻撃は捌き切れるものでは無い。

 なのはとフェイト、騎士達が其れを払うが、遂に一本がはやてに…

 「!!!」

 思わず目を瞑る。
 が、何時までたっても衝撃は訪れない。

 不審に思い目を開けると…

 「ご無事ですか…我が主。」

 何時の間にかユニゾンを解いたリインフォースが、はやての前に立ち、その身に槍を受けていた。

 「リインフォース!!」

 「それだけの声が出せるのならばご無事のようですね…」

 胸を貫かれ、それでも笑ってはやてに答える。
 如何にプログラム生命体と言えど、その中核をなしているコアが存在している胸を貫かれては無事では済まない。
 だが、それでも彼女は主を護るためにその身を差し出したのだ。

 「諦めないで下さい…必ずや赤き竜の戦士も戻ってきます。ですから…」

 「喋ったらアカン!シャマル、急いで治癒魔法!この子を死なせたらアカン!!」

 崩れ落ちるリインフォースを抱きとめはやては叫ぶ。




 だが、攻撃した側のディマクは更に残酷な仕打ちを行う。
 本当に嘗ては人であったのかと疑いたくなるような所業を…


 「ククク…巧くいった。実に巧くいった!!究極の地縛神完成の最後の1ピース!其れが貴様だ管制融合騎!」

 究極の地縛神から触手が伸び、瀕死のリインフォースを絡め取る。
 勿論はやて達は黙っては居ない。

 「何すんのや!リインを放せ…放せぇ!!!」

 「リインフォースさんを放して!!」

 「ふざけんなこの野郎!!」

 「我が同胞を放してもらおうか!」

 助け出さんと攻撃しようとするが、相手は何処までも無慈悲。

 「温い…やれ!」

 「WRyyyyyyyyyyyyyyyyyy!!」

 再びの咆哮衝撃波に吹き飛ばされ地面や岩場に身体を打ち付けられてしまう。

 「あ…ぐ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 捕らわれたリインフォースも、その身がドンドン光の粒になって消えて行き、その粒は地縛神が吸収しているように見える。


 「リインフォース…リインフォースーーーーー!!」

 「主…は…やて…」


 ――シュゥゥゥ…



 最後に僅かな呟きを残しリインフォースは全てが光の粒になって消えてしまった。


 「そ、そんな…嘘や…こんなん嘘や…!リインフォースーーーーーー!!!」

 悲痛なはやての叫びが響く。

 そして其れを無視するかのように、全ての光の粒――リインフォースを吸収した地縛神はその身が繭に包まれて居た。
 そう、まるで新たな存在として羽化しようとしているかのごとく…


 「精々光栄に思うがいい。スクラップ同然の融合騎が、至高の邪神の一部と成れたのだからな!」

 「この…腐れハゲ…!」

 「だが悲しむ事は無い。直ぐに貴様等も同じ運命だ。さぁ…目覚めろ!」



 ――ピキピキピキ…!



 繭に皹が入り、其処から光が漏れ出す。
 同時に圧倒的な力も。


 ――パリィィィン!!


 「…素晴らしい。」

 繭は割れ、中からその存在が姿を現す。

 高層ビルをも凌駕する大きは変らないが、先程までの醜悪な肉塊とはまるで違う。

 背に生えた6枚の巨大な翼。
 黒曜石の彫刻を思わせる精巧で滑らかなその表面。
 均整の取れた女性を思わせる体躯。
 表情こそ無いが整った顔立ち。

 一見神々しいが、その本質は邪悪。
 全ての命を刈り取る破壊の象徴。


 「見るが良い…此れこそが究極の邪神。『地縛神 Algoshx(アルゴサクス)』だ!」

 「GoGyaharyyyyyyyyyyyyyyy!!!」

 生誕の咆哮が世界を震わせる。



 予言の最も不吉な一行。



 其れが最悪の形で現実になった。




 現実になってしまったのだった…

















  To Be Continued… 

-26-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




キャラクタースリーブコレクション 魔法少女リリカルなのはViVid 「八神 はやて」
新品 \2850
中古 \
(参考価格:\699)