小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 リインフォース行方不明。
 此れを聞いて、遊星は驚いたが、しかし冷静だった。

 「落ち着けはやて。居なくなったって、リインフォースが消えたのか?」

 『消えた…事はないと思う。シャマルは『魔力は感知できる』言うてるし。』

 「魔力は感知できるのか。」
 ――そうなると、何か結界の中に居る可能性が高いな。


 与えら得た情報から、即座に最も可能性の高い事柄に行き着くのは素晴らしいといえる。
 しかも遊星の場合、大抵予想は大当たりだから凄い。

 「だとすると、リインフォースは闇の欠片の結界内部に居る可能性が高い。俺も探してみよう。」

 『うん!私も探してみるから!…たのむで、遊星。』

 「あぁ、任せろ。」

 通信を追え、遊星は未だ召喚された状態の蒼銀の戦士を見やる。
 見られた蒼銀の戦士は額に指を当て周囲の気配を探っている様子。
 今の通信から、遊星が何を言ってくるか予想してたのだろう。

 『確かにリインフォースの気配はあるが…酷く不明瞭だな。』

 で、気配は感知したものの其れは不明瞭で特定困難。
 如何やら遊星の予想は大当たりのようだ。












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス38
 『祝福と、暗き闇と…』











 その、件のリインフォースは、遊星の予想通り、ある結界の内部に居た。
 だが、此れもまた闇の欠片による脆弱な結界とは異なる強力なもの。

 性質的には、遊星、なのは、フェイトが交戦した『マテリアル』が発生させた其れに近い。


 その結果内部で、リインフォースもある存在と対峙していた。


 「矢張り、お前が現れるか…」


 目の前の存在。
 長い銀髪に紅い目。
 黒い戦闘装備服に、これまた黒い6枚の鴉の羽根。

 顔と左腕に浮き上がった紅い紋様。
 右腕と両足に巻きついた紅いベルト。


 其れは、闇の書の完成と同時に現れ、遊星達と交戦した存在。

 主を取り込み暴走した完成人格の姿。



 『闇の書の意志』が暗い紅い瞳でリインフォースを睨みつけていた。



 そして、其れはリインフォースの姿を暫く睨みつけた跡で、唐突に口を開いた。

 「…ナハトを砕こうとも書の呪いは消えない。幾ら逃げようとも逃れられない。呪いを超えることは…不可能だ。」

 リインフォースの此れからを完全に否定する一言だ。
 だが、其れを聞いてもリインフォースに動揺は無い。

 寧ろこれくらいの事を言ってくる事は予想済みと言った具合だ。

 「あぁ、分っている。……と、以前の私なら、そう答えただろうな。」

 「なに…?」

 リインフォースの答えに訝しげに顔を歪め、その目つきは更に暗く冷たく鋭くなる。
 尤も、其れは嘗ての自分自身の姿ゆえ、恐怖を覚えるものでもないのだが。

 「私が書の呪いに侵されていた事実は消えない。多くの咎がこの身にあることも事実だ、其れは認めよう。
  だが、呪いを超えられるか否かは其れとはまったくの別問題だ。
  ……事実、我が主と遊星、騎士達、そして小さな勇者達によってナハトは其れを取り込んだ地縛神もろとも消え去った。」

 「……………」

 「そもそもの根本が間違っていたんだ、如何に管制人格とは言えナハトの強大な力を私1人で押さえるなど無理だった。
  ……或いはそれにもっと早く気付く事ができていれば、数多の犠牲を出さずに済んだかもしれない。結果論だがな。」

 「…それで、お前は如何するつもりだ?」

 「分りきった事を聞くな。」



 ――轟!



 リインフォースの騎士服が弾け、変わりに闇の書の意志と同様の黒い戦闘装備をその身に纏う。
 正に鏡映し。

 違いは紋様とベルトの有無のみだ。

 「お前こそが闇の中枢……ならば私はお前を止める。其れが夜天の書の管制人格たる私の務めだ。」

 リインフォースは自身が感じた濃密な闇の気配を感じて此処に来ていたのだ。
 はやてや遊星に任せるのではなく、己自身の手で書の後始末をする為に。

 「未だ力が戻らない状態でか?今のお前では私を止めることなどできん…」

 戦闘体勢を取るリインフォースに対し、闇の書の意志は左手を向ける。
 そして、



 ――ズズ…ズルリ…



 その腕に黒い無数の蛇が纏わり付き始める。
 ……ナハトヴァールだ。

 無論本物ではなく、単純に再生されているコピーだが、それでも禍々しさは本物の其れと遜色ない。

 「意外だな、驚かないのか?」

 「ソレが出て来るであろう事も予想はしていたさ。予感的中なら別分驚くほどの事でもない。」
 ――本物のナハトとは比べ物にならないほどに力は弱いしな。


 だが、それもリインフォースにとっては牽制にすらならない。


 やがてその蛇は姿を変え、杭を内蔵した巨大な腕部武装――言うなれば『パイルバンカー』となり闇の書の意志の左腕に。

 「コピーゆえにその力は本物には遠く及ばなくとも、此れの力はお前も良く知っているだろう?」

 「あぁ、勿論だ。だが…」

 今度はリインフォースが自身の右腕を水平に持ち上げ、



 ――ギュル…



 その腕に1体の白蛇が巻きつく。

 「なっ!ソレは…!」

 驚いたのは闇の書の意志だ。
 ソレは色と数こそ違えど、ナハトヴァールのソレとあまりにも酷似している。

 「勘違いするな。此れはあの壊れた防衛プログラムとは違う…」

 だが、ソレからはナハトの様な禍々しさは感じず、寧ろ薄く輝く白い身体はいっそ神々しさすら感じるほどだ。

 「融合機能の回復をも後回しにして、私がゼロから作り出した夜天の書の本物の防衛プログラム。
  死と破壊を撒き散らす異常な物ではない……これは、そう『護る為』の力だ。」

 白蛇が光を放ち、その姿が変化する。


 ソレは純白の手甲、或いは篭手と言うべきもの。
 白蛇同様の薄い輝きを放ち、肘から下を完全に覆っている。

 ナハトヴァールのような重厚な感じは無く、美しく滑らかなフォルムが目を引く。

 そしてその美しさの中に秘められた強さ…


 ――バチィ!


 リインフォースが拳を握った瞬間に発生した火花放電がソレを示している。

 「夜天本来の防衛プログラム…『シューティングハート』。」

 「馬鹿な…こんな事がありえるのか…?」

 幾ら疑おうが、此れは現実。
 護る為に…自身の本来の尤も重要な機能の回復をも後回しにして構築した真防衛プログラム。

 ソレはリインフォースの覚悟の現われだ。
 呪いの傷跡も、過去の咎も全て背負うと言う覚悟の。


 「だが、もう遅い。闇の書は復活する…誰にも止められはしない!…穿て、ブラッディダガー!」

 「止めるさ、私とシューティングハートが!貫け雷光、フォトンランサー・ジェノサイドシフト!」

 戦いのゴングは、同時にはなった無数の誘導弾。


 紅い刃と、金の槍がぶつかりスパーク。
 此れだけでも凄まじいが、此れでもこの2人とっては序盤の牽制技に過ぎない。


 「打ち抜けナハト!」

 闇の書の意志が、ナハトから黒い魔力弾を数発打ち出し、

 「放て、ナイトメアハウル!」

 リインフォースも即座に数個の魔力球を作り出し、其処から放った直射砲撃で迎撃。

 略互角とも思えるが、リインフォースが瞬間加速で闇の書の意志に接近した事で簡単にソレは崩れた。


 「!!このスピードは!!」

 「蒐集したテスタロッサの得意技だ。私とお前の最大の違いが此れだ!」

 肉薄した瞬間に凄まじい力で殴りつける。
 障壁ごと、闇の書の意志を吹っ飛ばした事から、相当な威力だろう。

 「主達が私を覚醒させるために蒐集させた魔力が私に力を与えてくれる。
  只の力の蒐集ではない……皆が集めてくれた、絆の力だ!」

 吹き飛んだ闇の書の意志を追いかけるように、光速移動で接近。
 不完全な回復状態とは思えないほどの動きだ。

 「覇ぁ!!」

 「くっ…!」

 更にもう1発。

 今度は闇の書の意志も、ナハトを盾にソレを防ぐが…



 ――ピキ…



 「!!!」

 そのナハトに罅が!
 ソレほどまでにこの右の拳打は重く強いようだ。

 「おぉぉぉぉぉ…!!」

 「そんな、馬鹿な…!」



 ――ピキピキピキ…



 罅はどんどん深く大きくなる。
 そして…

 「砕けろ闇よ!」



 ――バリィィィィン!!



 遂にナハトが砕け散る。

 「そんなっ!何故そんな力が…!」

 「言っただろう。此れは私1人の力ではないからだ!我が主が、遊星が、騎士達が、小さな勇者達が!
  そして私の覚醒の為に魔力を蒐集させてくれた全ての命が、私に力を与えてくれる!闇に抗う力を!」

 攻撃の手を休めずに、闇の書の意志を蹴り飛ばす。
 此れもまた凄まじく重く鋭い。


 「く…咎人達に滅びの光を…!」

 「遅い、封縛!」

 逆転を狙い、集束砲を放とうとするも、その隙をバインドで拘束される。

 「吠えよ!」


 ――バガァァン!


 「うわぁぁぁぁ!!」

 更にそのバインドが炸裂し、再度吹き飛ばされる。

 「終わりだ…来よ、夜の帳…!」

 其れを好機と判断し、リインフォースは右手に黒い魔力球を作り出す。

 最も得意とする、『超広域空間攻撃魔法』のじゅんびだが、其れを放たずに、


 「おぉぉぉぉ!」

 「!!!」

 其れを闇の書の意志に接近して叩きつけ、魔力球で自分ごと包み込む。

 その空間内はリインフォースの領域。
 他の誰であろうとも、この空間内では一切の自由が封じられる。

 闇の書の意志もまた指1本動かす事もできない。

 「そんな…」

 「撃ち抜け…夜天の雷!」

 放たれたのはいっそ無慈悲とも思える闇色の雷撃。
 全く身動きの出来ない闇の書の意志に避ける術は無い。



 ――ドォォォォォォン!!



 その一撃は、寸分違わず闇の書の胸…核を撃ち貫いた。



 完全勝利。



 そうとしか言いようの無いくらいのパーフェクト勝利だ。
 核を撃ち抜かれた闇の書の意志は消えるしかないだろう。


 「此処まで一方的に…本来なら技も力も同じはずなのにな…」

 「そうだな。だが、何度も言うが私はもう1人じゃない。…その差がこの結果だ。」


 矢張りクリティカルだったのか、闇の書の意志は既に消えかけている。


 「実に見事だ…だが、此れで終わりじゃない。」

 「なに…?」

 だが、消えながらも『此れで終わりではない』と告げる。
 一体どういうことであろうか…?


 「闇の中核は私ではない。もっと別の…防衛プログラムの構成素体――マテリアルの最後の一基が存在している。」

 「マテリアル…!」

 「気をつけろ…アレは、凄まじくお前の今の主と同じ匂いがする…」

 「我が主と…!」

 「その治りきっていない身体で何処まで抗えるか……精々見させてもらうぞ?」


 ――シュゥゥン


 此処で闇の書の意志が消滅。

 だが結界は消えない。



 否、消えるどころかその力は逆に強くなっているようだ。


 「く…真打のお出ましか…!」


 リインフォースの視線の遥か先では、禍々しい闇が集い、人の姿を形作っていく。



 あまり大きくは無い。
 精々子供が良い所だろう。


 「アレが真の闇の中枢…!」


 だが、発せられる闇の力は、今戦っていた闇の書の意志よりも更に強い。



 やがて闇は安定し、その姿を現す。


 「…よりにもよって何と言う姿を…!」


 其れにリインフォースは心底驚く。

 なぜならば、顕になったその姿は…



 「くくく…漲る、漲るぞ!素晴らしいまでの闇の力だ!」



 帽子は無く、色彩も違うが――自身の愛すべき主『八神はやて』そのものだったのだから…















   To Be Continued… 





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